異世界チートで世界を救った後、待っていたのは逆ハーレムでした。

異文

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混血系大公編:第二部

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 右耳のピアスが『ザザっ』と雑音を発して、私はビクリと体を震わせる。通信が入ったんだ。
 それに気づいたようで、ヴァレさんは唇を放し、じっと私の目を見つめた後…するりと手を放し、再び広場に目をやった。
 鼓動がうるさい。口づけられた左手で胸を押さえ、深呼吸をして無理やり呼吸を落ち着かせる。出なきゃ。早く通信に出なきゃ。震える手で右耳のピアスに触れた。
『シャーラ、報告だ』
「うん、なに?」
『…何かあったか?』
 平静を装ったつもりだけど、ビョルンは私の変化に敏い。でも今の私の中のひどい気持ちを、彼に知られたくはない。
「ううん、なにも。それより報告って?」
 ごまかして、話を逸らす。ちょっとあからさま過ぎただろうか。
 ビョルンは少し沈黙を挟んだけれど、とりあえず追及はしないでいてくれた。
『……そうか。シャーラ、イスハークが言ったスライムの魔核の数は覚えているな?』
「うん、8個だよね?」
『やはりそうだよな。うち7つ破壊して、残りは1つのはずなんだが…』
「なんだが?」
『いまコイツの中に、赤い石が2つ見える』
「……?」
 イスに限って、数え間違えることはないと思うんだけど…。赤い石ってことは、私の附術で赤い色がついてるってことよね。
「私の附術では、魔核じゃなくて魔力を持つ鉱物を条件にして、色粉をまとわりつかせているだけだから…魔石か何かを取り込んでるのかな?」
『そうか。スライムを弱らせるために残り1つまで魔核を減らしておきたいんだが、どちらを破壊したもんか判断がつかない』
「そうね。とりあえずそっちに行くわ。イスにも手が空いたら来てもらうよう伝えて」
『Copy』
 ビョルンとの会話を終え、ヴァレさんの様子を伺う。
 ヴァレさんの横顔はなんだか冷ややかで、ものすごく気まずい。
 けど意を決して声を掛ける。
「ヴァレさん、ちょっとビョルンたちのところに行ってきます」
「…何かあったのかい?」
 ヴァレさんの声が少し固い。まだ怒りは治まっていない感じだ。
 ちょっと怖いので目を逸らしつつ、先ほどのビョルンとの会話を伝える。
「魔力を持つ鉱物か…」
 ヴァレさんはそう呟き、何かを思い出しているような仕草をする。
 なにか、心当たりでもあるのかな?しばらく黙った後、ヴァレさんは私を見て口を開いた。
「俺も一緒に行こう。構わないか?」
 声はもう穏やかになっている。怒りは消えたのか、それともとりあえず押し込めてくれたのか。
 きっと押し込めてくれたんだろうな…とは思いつつ、私はホッとして頷いた。
「会場は衛兵さん達がしっかり見てくれてますし、行きましょう」
「ああ」
 そうして私たちは、連れ立ってビョルンたちのもとへ向かった。





「シャーラ」
「お待たせ、ビョルン。どれのこと?」
「こいつなんだが…」
 そういって、ビョルンが指し示したところをじっくり見る。確かに、赤く色づいた石がふたつ見える。近づきすぎるとさすがに危ないから、ちょっと離れたところからだけど…スライムの魔核って一見ふつうの石ころと変わらないから、判別がつかない。魔石は宝石の原石みたいな見た目をしているから、魔石ではなさそうだけど…。
「両方、魔核に見えるけど…ヴァレさん、なにかわかります?」
 ヴァレさんの鷹の目なら、私より詳細が見えているはずだから、期待しつつ聞いてみる。
「うーん…スライムの中から取り出してみないと、判別は難しいね」
「色粉のせいでよく見えねーんだよな」
「お?私のせいって言いたいのかコノヤロー」
 ロルフの文句に言い返してやるけど、まぁでも、事実ではあるか。選択ミスったかな。
「だが色粉のおかげで、他の魔核を容易く破壊できたんだ。そこは気にする必要はない」
 ビョルンがすかさずフォローしてくれる。さすが!ロルフは「ケッ」と吐き捨てているけれども。
「二者択一か…できればスライムは生かしておきたいところだけれども」
 ここに向かう途中で話し合ってたんだけど、スライムがここまで巨大化するって通常じゃあり得ないから、ボナ・ノクテムの時みたいに誰かが手を加えているはずなのよね。あの時は『対するもの(コントラ)』の一人が育てていたけど、きっと誰かが、同じように育てたはずだ。だとしたら、スライムを生かしておいて、できるだけその『誰か』の情報を探りたい。
 両方とも魔核なら、どっちかを潰せばいい話なんだけど…違った場合にスライムが死んじゃうのがなぁ。
 忙しそうなところ申し訳ないけど、イスに調べてもらわないと無理かなぁ。
「とりあえずイスが来るのを待ってみて…」
「いや、真っ二つにすりゃいいんじゃねーの?」
 あっけらかんと言ったロルフに、みんなの視線がパッと集中する。
「な…なんだよ」
 突然注目を浴びて、ロルフが戸惑っている。
 いやでも、ロルフの言ったことは正解だ。難しく考えることはなかった。
 スライムの魔核らしきものが2つあるのなら、1個ずつに分かれるように切ってしまえばいい。両方とも魔核なら分裂して2匹になるし、1つだけなら魔核じゃない方は力を失い崩れ落ちるだろう。
「そうじゃん…ロルフすごい、天才!」
「おぉ…?」
 ロルフは基本的に本能で動く男だから、作戦会議とかではあんまり意見を出さないんだけどね。でも思考が本能的だからこそ、シンプルな答えが出せたんだろう。
 褒められることが少ない(問題児だからね!)ロルフは戸惑っていたけれど、さらに褒めちぎるとちょっと目元を赤くして、照れくさそうに口元を手で隠した。
 ふふ、ニヤついちゃって。かわいい。
「よし、ロルフの意見採用!ありがとね!」
「そーかよ、じゃあ礼は体でかえ」
「はいビョルンさん出番でーす!!」
「Rojer!!」
 ビョルンとふたりで、ロルフのアホな言葉を遮る。ヴァレさんや他の人がいる前だっつーの!
 ロルフが「オイ!」と怒っているけど無視無視。ヴァレさんが苦笑しながら慰めるのにまかせておく。


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