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第五章 ラングウールの貴公子
第七話 手紙の真相
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他でもない、お義父様が開いてくれるといっている私の誕生日のパーティ。そのリストに名前があったことから、私自身が招待状を書いた相手の一人。どういう人なのかとヨゼフの家のメイドに聞いたら、国政の中心に携わる大変偉い人だと教えてくれた。私がそれを伝えると、マルクさんは言った。
「その人物は、リナ様の家から貴族としての立場の剥奪を決めた人物でもあるのです」
「え? けど、いくらアンナでも、その逆恨みだけで……」
「調べたところ、リナ様が長くを過ごした叔父と叔母の家は、リーベグング公爵に定期的に金銭を贈っていることで間違いないありません。これは確認ですが……リナ様は、実のお父様が亡くなられた本当の理由をご存知ですか?」
「え、それは病死としか……そもそも、おじ様たちの家が、リーベグング公爵と関係があるって、本当ですか?」
母親は、父が亡くなって、貴族の称号が剥奪されると同時に、私と妹を残し姿を消した。本当のところ、どうだったかなんて私が知るはずがない。
「病死ということにはなっているものの、解剖などは行われていないようです。そして病死という診断を下したのも、リーベグング公爵の手のかかった医師のようです。リナ様のおじの家が、金銭を送っているのは間違いありません」
そして……私は、マルクさんが言おうとしていることに察しがついてしまった。
「考えられることは一つです。公爵は金銭の見返りに、手頃な貴族家を潰し、あるいは何らかの形で、親なしとなった子供を作り上げ……事実上、その子供たちを下僕として売っている。つまりは……一応は合法的な人身売買を行なっているのです」
「そんな……まさか……その子供たちって」
「リナ様とアンナ様だけではありません。あちらの家で侍女として働いている娘たちは、皆、似たような境遇でして……最近だと、レベッカという娘がそれにあたります。貴族ではありませんが、彼女の実家が行なっていた商取引の権利が突如剥奪されたとのことでして、それでやむなくあの家に奉公しているようです」
「そんな! レベッカもそうだったなんて! それも公爵が?」
「正確には、リーベグング公爵傘下の貴族が行っています。これについては、間違いありません」
「やはり、向こうの国の貴族の腐敗は深刻……。そして、悪の根幹ともいえるリーベグング伯爵の権力や影響力は絶大ということか。こういう話になってくると、向こうの国で、リーベグング公爵に関わりのない貴族なんて……え? まさかっ!」
突如として、大声を上げながら、エルンストさんが椅子から立ち上がった。驚きよりも、ずっと怒鳴り声に近い。
どういうこと?私の問いかけに反応せず、エルンストさんは、独り言のようにマルクさんに問いかけた。それは、私にとって大きなヒントになる。
「僕たちは……そもそも今、何の話をしていたんだ……? リナの妹が大量の毒薬を手配していて……そして、リーベグング公爵を中心とした大勢の貴族。そんな……まさか。そんなことが本当にあるのか? マルク。まさか、そういう話なのかい?」
「……話は大きすぎて、確証はどこにも。ただし、アンナという娘の境遇、毒薬の手配、それから……そこに関わりのある貴族たちを洗う限り、私にもそれ以外の想像はできませんでした」
「いくら何でも……嘘だろう? 信じられない。未だ成人もしていない一人の娘が、そんなこと……けれど、それだけ大量の毒薬を手に入れたところで、一体どうやって、いつ使うつもりなんだ……?」
「……あ」
そんなことが……? 本当に、あるの……?
私が思わず言葉を発すると、二人の視線が私に向いた。
けれど、そんなことを気にする余裕はない。
体が、震える。
道徳とかは全く関係ない。
それとは全く別の恐怖。
「……会」
「なんだい、リナ?」
それは、私にとっての全ての始まり。
思い出したくもない、あの夜のこと。
アンナとヨゼフの会話。
(けど、俺の親父に、誕生日会開くように言ったのって、お前だろ? 偉い伯爵だか公爵だかも呼んで、できるだけ盛大に開いてやってくれって)
(さあ? 俺は、親父とメイドたちが用意したリストをちょっと流し見ただけだから分からないけれど、追加の分も含めて、そろそろ書き終わるんじゃないか?)
(ふーん。もう1,000人くらいいったかな?)
「その人物は、リナ様の家から貴族としての立場の剥奪を決めた人物でもあるのです」
「え? けど、いくらアンナでも、その逆恨みだけで……」
「調べたところ、リナ様が長くを過ごした叔父と叔母の家は、リーベグング公爵に定期的に金銭を贈っていることで間違いないありません。これは確認ですが……リナ様は、実のお父様が亡くなられた本当の理由をご存知ですか?」
「え、それは病死としか……そもそも、おじ様たちの家が、リーベグング公爵と関係があるって、本当ですか?」
母親は、父が亡くなって、貴族の称号が剥奪されると同時に、私と妹を残し姿を消した。本当のところ、どうだったかなんて私が知るはずがない。
「病死ということにはなっているものの、解剖などは行われていないようです。そして病死という診断を下したのも、リーベグング公爵の手のかかった医師のようです。リナ様のおじの家が、金銭を送っているのは間違いありません」
そして……私は、マルクさんが言おうとしていることに察しがついてしまった。
「考えられることは一つです。公爵は金銭の見返りに、手頃な貴族家を潰し、あるいは何らかの形で、親なしとなった子供を作り上げ……事実上、その子供たちを下僕として売っている。つまりは……一応は合法的な人身売買を行なっているのです」
「そんな……まさか……その子供たちって」
「リナ様とアンナ様だけではありません。あちらの家で侍女として働いている娘たちは、皆、似たような境遇でして……最近だと、レベッカという娘がそれにあたります。貴族ではありませんが、彼女の実家が行なっていた商取引の権利が突如剥奪されたとのことでして、それでやむなくあの家に奉公しているようです」
「そんな! レベッカもそうだったなんて! それも公爵が?」
「正確には、リーベグング公爵傘下の貴族が行っています。これについては、間違いありません」
「やはり、向こうの国の貴族の腐敗は深刻……。そして、悪の根幹ともいえるリーベグング伯爵の権力や影響力は絶大ということか。こういう話になってくると、向こうの国で、リーベグング公爵に関わりのない貴族なんて……え? まさかっ!」
突如として、大声を上げながら、エルンストさんが椅子から立ち上がった。驚きよりも、ずっと怒鳴り声に近い。
どういうこと?私の問いかけに反応せず、エルンストさんは、独り言のようにマルクさんに問いかけた。それは、私にとって大きなヒントになる。
「僕たちは……そもそも今、何の話をしていたんだ……? リナの妹が大量の毒薬を手配していて……そして、リーベグング公爵を中心とした大勢の貴族。そんな……まさか。そんなことが本当にあるのか? マルク。まさか、そういう話なのかい?」
「……話は大きすぎて、確証はどこにも。ただし、アンナという娘の境遇、毒薬の手配、それから……そこに関わりのある貴族たちを洗う限り、私にもそれ以外の想像はできませんでした」
「いくら何でも……嘘だろう? 信じられない。未だ成人もしていない一人の娘が、そんなこと……けれど、それだけ大量の毒薬を手に入れたところで、一体どうやって、いつ使うつもりなんだ……?」
「……あ」
そんなことが……? 本当に、あるの……?
私が思わず言葉を発すると、二人の視線が私に向いた。
けれど、そんなことを気にする余裕はない。
体が、震える。
道徳とかは全く関係ない。
それとは全く別の恐怖。
「……会」
「なんだい、リナ?」
それは、私にとっての全ての始まり。
思い出したくもない、あの夜のこと。
アンナとヨゼフの会話。
(けど、俺の親父に、誕生日会開くように言ったのって、お前だろ? 偉い伯爵だか公爵だかも呼んで、できるだけ盛大に開いてやってくれって)
(さあ? 俺は、親父とメイドたちが用意したリストをちょっと流し見ただけだから分からないけれど、追加の分も含めて、そろそろ書き終わるんじゃないか?)
(ふーん。もう1,000人くらいいったかな?)
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どんなに最低な相手でも、妹の恋路を邪魔しちゃったんだから、仕返しされても仕方ないのかなぁと思います。
主人公の今の苦しみを、妹も同じように味わってた訳だし。
家族や周囲からすれば絶対に不幸になるとわかりきってても、本人からすれば余計な御世話。まさに親の心子知らずです。
主人公も妹の愛する人を引き裂いたのだから、妹と婚約者が両思いなら祝福するのが、償いになるんじゃないんでしょうか。
妹からすれば、他人の恋路を邪魔した人間が幸せな結婚をしようとするわけで。恨まれるのは当然だよねと思います。
まぁ、妹嫌いですけど。
あっという間に四話まで、読みました
この先、どういう展開になるのか楽しみにしてます