愛しているから傍にいて

アキナヌカ

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愛しているから傍にいて(後編)

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「うん、翼」

 そうして俺は直樹と一緒に美樹本家を出て行った、直樹は既に俺と結婚して浅野直樹になっていた。そして本当ならすぐに遠くに行きたかったのだが、直樹の高校の出席日数が足りていなかった、だから俺たちは短期賃貸マンションを遠くに借りた。

「僕は高校辞めても良かったよ、翼」
「高校まで卒業していないと就職で不利だ、直樹」

「でも美樹本家の人たちが高校に行くたびに煩い、翼」
「そんなのは放っておけ、直樹。俺と結婚してる時点で、もう直樹は美樹本家の人間じゃない」

 美樹本家の人間は最初は俺を誘拐犯だと言って警察に行った、でも俺と直樹が結婚していることが分かると、そんな美樹本家の主張は成り立たなかった。それでもしつこく直樹に美樹本家は戻ってきて欲しいと言っている、十八年も俺という乳母だけをつけて放置していたのに図々しい話だ。直樹のことは俺が必ず車で送り迎えして無事だった、俺を一人占めできている直樹はご機嫌で更に俺に愛情を求めた。

「翼、そろそろ僕をさ。恋愛対象に見てくれるようになった?」
「うーん、俺にとって直樹は守るべきもの、幼い保護対象だったから難しいな」

「それじゃ、今夜も僕は翼を誘惑しちゃおう。もう僕は立派な大人で、そして凄くエッチなんだ」
「こらっ、直樹。服を脱ぐな、脱ぐな!! そして俺を押し倒すな!!」

 こうやって俺は直樹から毎日必ず性的に誘惑されていた、そうされる度に俺が守るべき幼い直樹の面影は消えていった。俺はだんだん直樹を一人のΩの男として見るようになった、そして時には直樹の誘惑に負けて、直樹を抱きしめてキスをしてしまったりしていた。

「はぁ、翼からのキス。大好き、翼のことが大好き、愛しているから傍にいて」
「俺も直樹を愛しているが、今更になってこう性的に見るのは、……ちょっと恥ずかしいな」

「ふふっ、翼。そんなに恥ずかしがらなくてもいいんだよ。僕はもっと翼に触れたいし、触れられたい」
「そう言って俺のズボンを下げようとするな!!」

 直樹はちょっと俺が気を抜くとセックスしようとした、裸になって誘惑してきて俺のことを大いに困らせた。確かに十八年も俺は直樹を育てたから、直樹のことを間違いなく愛していた。ただ性的対象として直樹を見るのは何故か恥ずかしかった、でも直樹はもう大人の立派なΩの男性だった、だから俺は直樹を性的にも少しずつ愛するようになった。

「ふふっ、最近は翼からのキスが増えたね」
「直樹を一人の成人したΩの男性、そうだと思い始めてるんだ」

「それじゃ、今度はフェラしてもいい。翼」
「うっ、そうだな。してもいいし、俺も直樹にそうする」

 直樹からの性的な要求に俺は応えるようになった、直樹は喜んで俺のズボンを脱がせてフェラをしてみせた、最初は拙いものだったがだんだんと上手くなっていった。してもらったことはお返しがしたかったので、俺も直樹のものをフェラしてやったりした。

「なっ、直樹。もっ、もう十分だ。もういってしまいそうだから、俺のものを口から出してくれ」
「やぁだ、翼の精液飲みたいもん。このままいっちゃっていいよ」

「こらっ、直樹。うっ、いく」
「……っくん!! ふふっ、翼の精液ごちそうさま。きゃあ!! 翼、僕にもフェラしてくれるの!?」

「やられた分はやり返さないと気分が悪い、直樹の弱いところはこの辺りだな」
「翼、やぁん!! そんなにされたらすぐ出ちゃうよ!! 気持ち良い、気持ち良いよぉ!!」

「直樹は可愛いな、ほらっ、もう出てしまったのか。直樹の精液は甘いな、Ωだからか?」
「つっ、翼の精液だってフェロモンが混じってて、凄く美味しかったもん!!」

 俺がαで直樹がΩだからか、俺たちはお互いにフェロモンを心地よく感じていた。運命の番、まさかそんなものではないと思うが、とにかく俺たちは体の相性は良かった。それはまた直樹にヒートが来た時によく分かることになった、直樹から凄く甘くて良い匂いがして、直樹はヒートの影響で体が上手く動かなくなって俺を求めた。

「翼、僕のことまた犯してぇ!! 体が凄く熱くて、熱くて仕方がないの」
「直樹、ほらっ、まずはキスからだ、……直樹は唾液まで甘いな」

 俺はヒート状態の直樹にまずキスをした、直樹の唾液さえ薄っすらと甘く感じて美味しかった。それから熱いという直樹から服を脱がせていった、直樹も俺に抱きついてキスを繰り返しながら、同じように俺の服を脱がせようとした。

「ひゃん!? 僕の胸も敏感になってるから、翼。やぁん!? そんなに舐めたり吸われちゃうと凄く感じちゃって、ああんっ!!」
「胸だけでもう直樹のお尻はとろとろなんだな、愛液が太ももから流れ落ちてるぞ。直樹」

 俺は直樹のピンク色の可愛い乳首を口で吸ったり舐めたり、指でつまんで撫でたりした。そうしたら敏感な直樹はどんどん感じているみたいで、直樹のお尻の穴からは愛液がとろりと流れ落ちてきていた。

「あっ!! あっああっ!! やぁん!? 翼、そんなにお尻の中をかき回されたら、僕いっちゃう!!」
「ははっ、俺はちょっと指を入れただけだぞ。なのに直樹、すぐに俺の指を三本も咥え込んで、中はもうびしょびしょじゃないか」

 直樹は本当に敏感で俺が直樹のお尻の穴に、右手の指を一本入れただけでは何の抵抗もなかった。それを二本、三本と指を増やしていっても、直樹の中は柔らかくうねって俺の指を飲みこもうと動いた。直樹は真っ赤な顔をしてとろんとした目で、乳首をぴんと立てたまま俺に抱きついていた、そうして俺にお尻の穴をいじられる度に直樹は体をくねらせて喘いだ。

「やぁぁ!? 翼、翼ぁ!! もう入れてぇ!! 早く僕のことを犯してぇ!! ふぇ、もう待ちきれない!?」
「……それじゃ、入れるぞ。直樹、辛かったらすぐに言えよ!!」

 俺は借りた短期賃貸マンションが空いていて良かったと思った、俺たちの部屋は端っこでその隣は空き部屋だった。直樹があんまり可愛い声を大きく上げるものだから、隣が空き部屋でなかったら苦情がきていたところだった。直樹の中はくちゅりと俺のものを簡単に咥え込んでしまった、それでいて俺が中に入ったらぎゅうぎゅうと直樹の中が締めつけてきた、俺は直樹を抱きかかえてキスしながら腰を振った。

「ひゃ!? やああぁぁぁん!! ああんっ!! 気持ち良い、気持ち良いよぉ!! 翼の固いのが中でこすれて、気持ち良いのぉ!!」
「直樹、気持ち良いか? 俺もなかなか気持ちが良い。キスさせてくれ、直樹。んん、ははっ!! 本当に直樹は可愛いな、良い匂いがしてくらくらする」

「ぼっ、僕だって翼の匂いがして駄目ぇ!! やぁん!? 腰から溶けちゃいそう、僕が溶けちゃいそうだよ、翼ぁ!!」
「大丈夫、直樹は溶けたりしないさ。ただ滅茶苦茶に感じてるだけだ、ほらっ俺がしっかり腰を掴んでる」

「ああんっ!! つっ、翼の手以外のところがふわふわするの!? やぁん、もう溶けちゃう!! ああっ!! なっ、なにかこみあげてきて、ひゃっ!? あああああんっ!!」
「ははっ、本当に可愛いな。直樹、俺のことぎゅうぎゅう締め付けてお尻だけでいっちゃったな、俺もいったからコンドームを取り替える」

 俺がそう言ったら直樹は全裸でぐったりとして両足を開いたまま、お尻の穴から愛液を滴らせながら待っていた。その様子はとても煽情的で俺の心を揺さぶった、直樹が魅力的過ぎて俺はコンドームを取り替えると、すぐにまた直樹の中に俺のものを突っ込んだ。もう直樹は幼い守る者じゃなかった、一人の成熟したΩの男性に俺には見えるようになった。

「あああああっ!! 翼!? ひゃあああん!! 気持ち良い!! 気持ち良いの!! 溶けちゃう!! 今度こそ僕が溶けちゃうよぉ!!」
「大丈夫だ、ほらっ俺がしっかりと抱きしめていてやる!! だから、思いっきり感じていい。素直に感じている直樹は本当に可愛い、愛しているよ。愛しているから傍にいて、俺の直樹」

 そうやってヒートの一週間、俺は直樹のことを抱きまくった。直樹は体が溶けちゃうと言うほど感じていた、そうして俺の体にしがみついていた。

「翼、噛んで!! 僕のうなじを噛んでよぉ!!」
「直樹、本当にそうしていいのか?」

「早く、早く、僕を翼のものにしてぇ!! 他のαに発情なんてしたくない!!」
「そうか、分かった。少し痛いぞ、直樹」

「ああっ!! 翼が噛んでくれた!! もう僕は翼にしか発情できないからね」
「それでいいさ、俺も直樹しか抱かない」

 今回の直樹のヒートで俺はよく分かった、俺は直樹を恋愛対象としても愛している、そうもう俺にとって直樹は愛おしい恋人だった。いや俺たちは結婚しているのだから、愛おしくて可愛い伴侶だった。だから直樹のうなじに俺は噛みついた、そうして直樹を俺のものにしてしまった。そんな激しいヒートが終わって、一週間経つと直樹は起きた。

「ふぁ~ぁ、翼。僕って生きてる? 体が溶けちゃってない?」
「ちゃんと生きてるよ、直樹。体も溶けてない、俺の直樹」

「つっ、翼。そんなこと言うと僕は勘違いするよ!?」
「そうか、どんな勘違いをするんだ?」

「翼が僕を恋愛対象として好きだって、奥さんとして愛してくれてるって思うよ!?」
「もううなじを噛んでやったろ、直樹は俺の奥さんさ。本当に可愛いな、直樹」

 俺の腕の中にいる直樹は真っ赤になっていて、でも俺からは離れずにしっかりと抱きついていた、俺はやっと自分の心を理解したから素直に直樹にそう伝えた。

「大好きだよ、直樹。いや、愛してるよ。俺の奥さん、ちゃんと俺は恋愛対象として直樹を愛しているよ」
「ほっ、本当!?」

「ああ、今度のヒートではっきりした。俺は直樹を恋愛対象として愛しているよ、もう逃がしてやれないくらいだ」
「逃げる気なんて無いからいいよ、翼!! 好き、大好き、愛してる!!」

「ああ、俺も直樹を愛してるよ。ずっと俺の傍にいてくれ」
「嬉しい、僕はずっと翼と一緒にいるからね」

 俺たちはお互いに気持ちが通じ合って笑った、二人とも本当に嬉しくて笑顔になった、それからキスをして抱き合ってこの幸せを二人で喜んだ。そして、時が流れて翼が高校を卒業することになった。美樹本家の連中も来ていたようだが、直樹は上手く卒業式から逃げ出してきた。

「ふぅ、やっと卒業だよ。翼」
「ああ、次は大学だな。直樹」

「そうだね、翼。やっと美樹本家と縁が切れる、もう煩く言われることもない」
「全くだ、直樹。あの連中は本当にしつこかったからな」

「毎日学校にやってきて、貴方は騙されてますって。ああ、もう縁が切れてホッとした」
「それじゃ、俺と一緒に行こう。直樹」

 直樹は他の県の大学に通うことになっていた、直樹自身の貯金と俺の今までの給料を合わせたら、直樹が大学に通うくらいは全く平気だった。そして、俺も直樹の大学の近くで新しい仕事を探す気だった。

「翼、ちゃんと毎日帰ってこれる仕事にしてね」
「ああ、そのつもりだ。しかし、俺は前職が乳母だからな」

「普通の仕事は難しそう、いざという時は大学辞めて僕も働くからね!!」
「まぁ、乳母をやっている間にできるだけの資格は取ったからな。直樹がちゃんと大学に通えるように、俺も頑張って新しい仕事を探すさ」

「でも翼、乳母だけは仕事にしないでね」
「どうしてだ? 経験がある分、子どもとの相性もあるがやりやすそうだ」

 俺がそう言ったら直樹は俺の腕に高校生の制服のまま抱きついてきた、周囲も卒業を祝ってあちこちで家族が抱き合っていたから俺たちは目立たなかった。そうして直樹は俺に向かって口を開いて、ちょっと呆れたふうにこう言った。

「また翼を好きになっちゃう、僕のライバルが育っちゃうじゃない!!」
「いや、俺を好きになるのは直樹くらいだと思うけどな」

「そんなの、誰にも分からないよ!!」
「まぁ、確かに人間の感情は複雑で難しいからな」

「そう、だから乳母だけは止めておいてね。翼」
「はいはい、分かったよ。直樹」

 そうして桜が舞い散る春の日のこと、俺は高校卒業した直樹を連れて他県へ引っ越した。家具などは向こうで買いそろえるつもりで俺たちの荷物は少なかった、俺はその少ない荷物を積んで車に直樹と一緒に乗って走り出した。最近は俺に愛されているという自覚が出てきて直樹が笑っていた、俺もそんな笑顔に笑い返してこう言った。

「愛してるよ、直樹。ずっと俺の傍にいて」
「僕も翼を愛してる。だからずっと一緒だよ」
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