21 / 47
第21章 別離の前に
しおりを挟む
宗一の家・深夜
家の中は静まり返っていた。
律の部屋からは穏やかな寝息が、宗一の部屋からも安らかな呼吸が聞こえる。
その隙間を縫うように、一つの影が忍び込む。
黒衣に身を包んだ青年──アルマ。
その表情には、決意と、どうしようもないほどの痛みが滲んでいた。
静かに、そっと宗一の寝ているベッドの傍に膝をつく。
月明かりが差し込む窓辺、彼の穏やかな寝顔を見つめながら、アルマは震える唇を開いた。
「……お前に、出会えてよかった」
低く掠れた声が、夜気に溶けてゆく。
「冷たくて、何も信じられなかった俺に……お前は、最初から優しかった。
お前の手も、声も、全部、俺の中に残ってる。……ああ、もう二度と会えないのにな」
堪えていた感情が、零れ落ちる。
頬を伝うのは、熱く、静かな涙。
「俺は、行かなきゃいけない。……家族と、決着をつけるために。
でも……本当は、そばにいたかった。お前の隣で、もっと笑っていたかった」
アルマは宗一の手にそっと自分の指を重ねた。
目を閉じて、唇をかみ、どうしようもない想いに耐えながら──
そのときだった。
「……アルマ……?」
寝ぼけた声が、静寂を破るように響いた。
宗一がゆっくりと目を開き、焦点の合わない瞳でアルマを見つめる。
「あ……れ……夢か……?……来てくれたんだな……」
呟きながら、宗一はまるで無意識のように、アルマの手を引き寄せた。
何の迷いもなく、まるで当然のように──彼の腕に抱きしめる。
「……行かないで、なんて……言わないよ……」
そして、もう一度、唇が重なる。
最初のキスとは違って、どこか切なく、悲しみに満ちたキス。
アルマは驚いたように目を開いたまま、次第にそれを受け入れ、
頬を伝う涙は止まらず、大粒のまま宗一の肩に落ちていく。
やがて唇が離れたとき、宗一はもう一度目を閉じていた。
深い眠りに戻ったのか、それとも夢の続きを見ているのか──
アルマは、そっとその額に触れた。
「……ありがとう」
言葉は、かすかな声で。
次の瞬間、彼の姿は、風に溶ける霞のように、静かにその場から消えていった。
宗一の手の中には、温もりの名残だけが残されていた。
家の中は静まり返っていた。
律の部屋からは穏やかな寝息が、宗一の部屋からも安らかな呼吸が聞こえる。
その隙間を縫うように、一つの影が忍び込む。
黒衣に身を包んだ青年──アルマ。
その表情には、決意と、どうしようもないほどの痛みが滲んでいた。
静かに、そっと宗一の寝ているベッドの傍に膝をつく。
月明かりが差し込む窓辺、彼の穏やかな寝顔を見つめながら、アルマは震える唇を開いた。
「……お前に、出会えてよかった」
低く掠れた声が、夜気に溶けてゆく。
「冷たくて、何も信じられなかった俺に……お前は、最初から優しかった。
お前の手も、声も、全部、俺の中に残ってる。……ああ、もう二度と会えないのにな」
堪えていた感情が、零れ落ちる。
頬を伝うのは、熱く、静かな涙。
「俺は、行かなきゃいけない。……家族と、決着をつけるために。
でも……本当は、そばにいたかった。お前の隣で、もっと笑っていたかった」
アルマは宗一の手にそっと自分の指を重ねた。
目を閉じて、唇をかみ、どうしようもない想いに耐えながら──
そのときだった。
「……アルマ……?」
寝ぼけた声が、静寂を破るように響いた。
宗一がゆっくりと目を開き、焦点の合わない瞳でアルマを見つめる。
「あ……れ……夢か……?……来てくれたんだな……」
呟きながら、宗一はまるで無意識のように、アルマの手を引き寄せた。
何の迷いもなく、まるで当然のように──彼の腕に抱きしめる。
「……行かないで、なんて……言わないよ……」
そして、もう一度、唇が重なる。
最初のキスとは違って、どこか切なく、悲しみに満ちたキス。
アルマは驚いたように目を開いたまま、次第にそれを受け入れ、
頬を伝う涙は止まらず、大粒のまま宗一の肩に落ちていく。
やがて唇が離れたとき、宗一はもう一度目を閉じていた。
深い眠りに戻ったのか、それとも夢の続きを見ているのか──
アルマは、そっとその額に触れた。
「……ありがとう」
言葉は、かすかな声で。
次の瞬間、彼の姿は、風に溶ける霞のように、静かにその場から消えていった。
宗一の手の中には、温もりの名残だけが残されていた。
0
あなたにおすすめの小説
邪神の祭壇へ無垢な筋肉を生贄として捧ぐ
零
BL
鍛えられた肉体、高潔な魂――
それは選ばれし“供物”の条件。
山奥の男子校「平坂学園」で、新任教師・高尾雄一は静かに歪み始める。
見えない視線、執着する生徒、触れられる肉体。
誇り高き男は、何に屈し、何に縋るのか。
心と肉体が削がれていく“儀式”が、いま始まる。
上司、快楽に沈むまで
赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。
冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。
だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。
入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。
真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。
ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、
篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」
疲労で僅かに緩んだ榊の表情。
その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。
「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」
指先が榊のネクタイを掴む。
引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。
拒むことも、許すこともできないまま、
彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。
言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。
だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。
そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。
「俺、前から思ってたんです。
あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」
支配する側だったはずの男が、
支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。
上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。
秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。
快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。
――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる