黒羽の約束

猫目オテテ

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第22章 魔界の決意

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魔界・王宮の回廊

 鈍く赤黒い光に照らされた回廊。空気は冷たく、重く、どこか血の匂いすら漂っていた。

 その奥へと、アルマは足を進めていた。
 かつては兄弟たちと走り回ったこの城も、今では剣と裏切りと命令の場。
 誰が味方で誰が敵かすらわからない。

 だが、アルマの瞳には迷いがなかった。
 宗一に触れたあの夜、彼は一度、心を決めた。

 このままではいけないと。
 家族を守るために、ただ言われるまま動く「駒」ではいけないと。

 ──長女の玉座。
 煌びやかで威圧的なその空間に、一人の女が座っていた。

 艶やかな黒髪と紅い瞳。
 まるで人形のように整った顔立ちは、冷徹さに満ちていた。

「……戻ったのね、アルマ。ノアは?」

「……殺していない」

 静かに言い放ったアルマの声に、玉座の長女の目が細められる。

「そう。なら……お前の命は終わりね」

「構わない」

 まっすぐに視線をぶつける。
 だが、次の瞬間──

「でも俺は、もう誰の命令にも従わない。たとえお前でも。……俺は、家族を殺すために生まれてきたわけじゃない」

 その言葉に、長女の唇がわずかに歪む。

「……ふふ、随分と“人間臭く”なったわね。下界で、何を見てきたの?」

 アルマは何も答えない。ただ一歩、彼女に近づく。

「この争いを終わらせる。兄弟が互いを疑い、殺し合う未来なんて、俺はもう見たくない」

「綺麗事を。ならば、力で証明してみせなさい。あなたがまだ“悪魔”であることを──!」

 次の瞬間、玉座の上から黒い槍が放たれる。
 反射的にアルマはその槍を弾き、赤い魔力の刃を展開した。

 ──兄弟同士の決戦。
 それは、今始まろうとしていた。



一方その頃──人間界

宗一の部屋

 静かな夜。
 宗一はベッドに座ったまま、開け放たれた窓の外を見ていた。

 左手には、あの黒い羽根。
 柔らかく、けれどどこか哀しいその手触りを、繰り返し指先でなぞる。

「……やっぱり、お前だったんだな、アルマ……」

 あのカラスと、人の姿で現れた青年。
 そしてあの夜、夢か現かもわからぬ、涙のキス。

 心が疼く。恋だと自覚するには、あまりに強く、深く、そして切なすぎる感情。

「……今、どこにいるんだ」

 返事はない。
 だが風が吹き、羽がひらりと舞い上がる。まるで答えるように。



律の部屋

 律は机に突っ伏していた。
 勉強も手に付かず、ぼんやりと宙を見つめている。

(……あいつのこと、考えてばっかだ)

 ノア。
 不思議で、どこか掴みどころのない青年。
 だけど、一緒にいると胸が高鳴る。会いたくてたまらなくなる。

 兄に言うべきか悩みながらも、ふと窓の外を見る。

 ──知らぬうちに、運命の歯車は動き始めていた。
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