黒羽の約束

猫目オテテ

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第26章 魔界の門、揺れる想い

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魔界・東の境界

 ノアと宗一は、かつて兄弟たちが通った「境界の門」へと足を踏み入れた。
 魔界と人間界を繋ぐ歪な次元の裂け目は、血の契約がなければ通ることはできない。

 「宗一さん、目を閉じて……少し痛いかもしれない」

 ノアが差し出した指先が宗一の額に触れると、焼けるような痛みが走った。血と魔力の契約。それは異種族の通行許可の代償だった。

 「くそ……これが、あいつの見てた世界か」

 宗一は苦笑しながらも、決して後退しなかった。
 二人が一歩踏み込んだその先に、色を失った灰の大地と、重苦しい魔力の風が吹きすさんでいた。



魔界・反王派の地下集会所

 彼らがたどり着いたのは、封印されたアルマの場所ではなかった。まずは、集められた兄弟姉妹たちとの合流が必要だった。

 ノアと宗一が現れると、すでに集まっていた兄弟たちはざわついた。

 「……人間を、連れてきたのか?」

 長男ジークが警戒の眼差しを向ける。だがノアは一歩前に出て言った。

 「この人は、兄さん――アルマの“想い人”だ」

 沈黙が場を支配する中、宗一は前に出て、低く言った。

 「アイツを返してもらいに来た。……命に代えてもいい」

 誰よりも先に、末っ子のエミリアが小さく呟いた。

 「兄さまは……誰にも言わずに、ずっと一人で背負っていたんだね」

 兄弟たちは皆、後悔と負い目を抱いていた。
 ノアはそこで、全員の視線を正面から受け止めた。

 「今こそ、王位継承に向き合うべきだ。もう“駒”として兄さんを見てはいけない。……俺たちが彼を救わなければ、兄弟を名乗る資格なんてない」



一方、人間界・宗一の家

 律はソファの上でノアとの会話を思い返していた。

 ノアからの「君に出会えてよかった」という言葉が胸に残っている。
 それがただの別れの挨拶でなければいい。そう願うのに、彼の背中はあまりにも遠かった。

 「なんだよ……あんなの、ズルいじゃん……」

 律は唇を噛みながら、ノアの体温の余韻を指先に残したまま、窓の外の空を見上げた。
 そこには、黒い羽が一枚、静かに舞っていた。



魔界・封印の間

 アルマは今、無数の鎖に縛られ、冷たい結晶の中で眠っていた。
 その胸元には、彼が宗一のもとに残してきたはずの黒羽が一枚、封じ込められていた。

 その羽が、微かに震える。

 ――来てる。

 ――もうすぐ、声が聞こえる。

 それを感じ取ったアルマの頬を、一筋の涙が伝った。
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