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第3話「君を選んだ日」
しおりを挟む季節は初夏を迎え、学校帰りの風が少し蒸すようになってきた。
それでも、律の心は不思議とすっきりしていた。
――告白されたあの日から、ずっと考えてた。
ノアのこと。あのときの気持ち。
そして、ノアが何者であろうと変わらなかった、自分の心。
今日こそ、ちゃんと返事をしよう。
放課後、律は学校近くの小さな並木道でノアを待っていた。
やがて、向こうから現れたのは、制服の襟を少し乱しながら歩いてくるノアの姿。
「律くん」
「……ノア」
二人の視線が静かに絡み合う。
少しの沈黙。けれど、その時間は苦しくなかった。
むしろ、今の自分に必要な「余白」だった。
律が一歩前に出る。
「ノア、こないだの……告白、ずっと考えてた」
ノアのまなざしが真剣になる。
律は視線を逸らさずに、真っすぐ彼を見つめた。
「正直、あのときはびっくりした。でもな、ノアが“誰”なのか知っても……オレ、気持ちは変わらなかった」
「律くん……」
「たぶん、いや……間違いなく、オレはお前が好きだ」
その言葉が落ちた瞬間、ノアの瞳が揺れた。
安堵と、驚きと、喜びが入り混じった複雑な輝き。
「……ありがとう。律くんがそう言ってくれるの、何より嬉しい」
「ノア……!」
次の瞬間、律が駆け寄って胸に飛び込んだ。
制服越しに感じる体温と、鼓動と、腕の力。
ノアはそっと律を強く抱き締めた。
その温もりはまるで、魔界の冷たい闇とは真逆の、やわらかくあたたかな光だった。
「律くんが僕を選んでくれて、本当に嬉しい。……君を守りたい。これからもずっと」
「……オレも、ノアの隣にいたい。どんなお前でも、ちゃんと見てたいし……支えたいんだ」
どちらともなく、顔が近づく。
さっきまで少し照れくさかった距離は、今は自然だった。
そっと唇を重ねて――
ふたりの想いが、静かに、確かに結ばれる。
その日から、律の心にあった迷いはひとつ、消えた。
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