黒羽の約束

猫目オテテ

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第4話「恋人になった朝」

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目覚ましが鳴るよりも先に、律は目を覚ました。
胸の奥にほんのり熱を感じるのは、昨日の余韻がまだ身体のどこかに残っているからだ。

(ノアと……付き合うことになったんだよな、オレ)

照れくさくて、でも自然と笑みがこぼれる。
頬に手を当てて、ひとつ深呼吸。
制服に着替えて鏡を見ると、どこか少しだけ大人びた自分が映っていた。

「……よし、行くか」

そう呟いて、玄関を開けたその瞬間。

「おはよう、律くん」

「っ、ノア!?」

家の前で立っていたのは、昨日と同じく制服姿のノアだった。
けれど、少しだけ何かが違う気がした。

「……なんか、顔がやけに優しいな」

「ふふ、律くんが恋人になってくれたからだよ」

「なっ……!」

律は慌てて顔をそらす。
けれどノアは、その横顔を覗き込むようにして、囁いた。

「恥ずかしがる律くん、すごく可愛い」

「うっせえよ……! 朝から甘すぎんだよ、バカ……」

それでも、心の奥では嬉しかった。
こんな風に言ってくれる人がいる。
その人が自分のことを、大事に思ってくれてる――
それが、たまらなく愛しかった。

学校までの道を並んで歩きながら、ふたりは少しずつ会話を交わす。
昨日よりも自然に、昨日よりも近くに。

信号待ちで立ち止まった時、ふとノアが小さな声で言った。

「律くん。手……繋いでもいい?」

「……ん、いいけど」

そう言って差し出した律の手に、ノアがそっと指を絡めて握った。
柔らかくて、でも確かな温もり。

(ああ、オレ……ほんとに、こいつのことが好きなんだな)

心の中で、ぽつりとそんな言葉が零れた。



その日、学校ではやけに周囲がざわついていた。

「なあ、律……お前とアイツ、仲良すぎじゃね?」

「え、え、そ、そうか?」

「何その顔、なんか……なんかあったんか?」

「う、うるせぇよ!」

律は顔を真っ赤にして、わたわたとノアの方を見た。
すると、ノアがにっこりと微笑み、ひとさし指を口元に立てる。

――内緒だよ?

その仕草に、律の胸がきゅうっと締め付けられた。

(……ズルいだろ、そんなの)

甘い、でもまだ誰にも知られていない“ふたりだけの秘密”。
それが、今はとても心地よくて。

放課後、教室の裏手にふたりきりになったとき。
律は思わず、そっとノアの制服の裾を引っ張った。

「……また、放課後も一緒にいんの、アリか?」

「もちろん。むしろ、ずっと一緒がいい」

「……ん」

指先が、またそっと触れ合う。

“恋人”になったふたりの朝は、始まったばかり。
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