40 / 47
第5話「揺れる気持ちと、信じたい想い」
しおりを挟む
昼休みの教室――
窓際の席に座る律は、弁当をつつきながらため息をついた。
(……まただ)
廊下の方から、女子たちの黄色い声が聞こえてくる。
「ノアくん、今度放課後一緒に課題やろ? 教えてほしくて~!」
「えーずるい! 私もお願いしたい~!」
「ノアくんって本当、顔も声も綺麗だよね……神秘的っていうか!」
(……わかってる。あいつは目立つし、モテるし、そもそも人間離れしてるくらい綺麗だし)
律は箸を止めて、ため息をついたまま窓の外に視線を逸らす。
グラウンドでボールを蹴っている運動部の声も、遠くに感じた。
(オレと付き合ってるって、誰も知らない)
(……いや、別にいいけど。でも、あんな風に囲まれてるの見ると――)
どうしても胸がザワつく。
心臓の奥がきゅっと痛くなるこの感情。
今までは感じたことのなかった「嫉妬」という名の感情に、律は少し戸惑っていた。
「……くそ、ガラでもねぇ」
頬杖をついて目を閉じたそのとき――
「律くん、いるよね?」
ノアの穏やかな声が、教室の入り口から響いた。
「の、ノアっ!? 何でここに……」
「一緒に食べようと思って。今日は購買でパン買ってきた」
「べ、別に……いーけど」
ざわり、と周囲の女子たちの視線が一斉にこちらを向く。
その中には、さっきノアに声をかけていた子たちもいて、明らかに好奇の目を向けていた。
ノアはそれらを気にした様子もなく、律の隣に腰を下ろし、袋からパンを取り出す。
「……律くん」
「……な、なんだよ」
「怒ってる?」
その一言に、律の手が止まった。
誤魔化すように笑って、
「怒ってねぇよ。ただ、ちょっとだけ……」
「嫉妬?」
「……っ、ちげーし……!」
ばっと顔を逸らした律の耳が真っ赤になっていて、ノアは思わず柔らかく笑った。
「……かわいいな」
「か、可愛いとか言うなよ!」
「僕はね、律くんだけを見てるよ」
そのまっすぐな声に、律は言葉を失った。
不安が、すーっと溶けていくようだった。
「……マジで、ずるいんだよお前は。どこまでも」
「ずるくていい。律くんが僕のそばにいてくれるなら、それで」
ノアはそっと、机の下で律の手を握る。
見えない場所で繋がれたその温もりに、律は胸の鼓動が早くなるのを感じた。
(ああ……やっぱオレ、こいつのことが……)
信じたい――いや、信じてる。
たとえ自信がなくなりそうになっても、
隣にいるこの人が、その手を離さない限り。
「……放課後、一緒に帰るか」
「うん、もちろん」
握られた手は、少し強く、けれど優しく律を包んでいた。
窓際の席に座る律は、弁当をつつきながらため息をついた。
(……まただ)
廊下の方から、女子たちの黄色い声が聞こえてくる。
「ノアくん、今度放課後一緒に課題やろ? 教えてほしくて~!」
「えーずるい! 私もお願いしたい~!」
「ノアくんって本当、顔も声も綺麗だよね……神秘的っていうか!」
(……わかってる。あいつは目立つし、モテるし、そもそも人間離れしてるくらい綺麗だし)
律は箸を止めて、ため息をついたまま窓の外に視線を逸らす。
グラウンドでボールを蹴っている運動部の声も、遠くに感じた。
(オレと付き合ってるって、誰も知らない)
(……いや、別にいいけど。でも、あんな風に囲まれてるの見ると――)
どうしても胸がザワつく。
心臓の奥がきゅっと痛くなるこの感情。
今までは感じたことのなかった「嫉妬」という名の感情に、律は少し戸惑っていた。
「……くそ、ガラでもねぇ」
頬杖をついて目を閉じたそのとき――
「律くん、いるよね?」
ノアの穏やかな声が、教室の入り口から響いた。
「の、ノアっ!? 何でここに……」
「一緒に食べようと思って。今日は購買でパン買ってきた」
「べ、別に……いーけど」
ざわり、と周囲の女子たちの視線が一斉にこちらを向く。
その中には、さっきノアに声をかけていた子たちもいて、明らかに好奇の目を向けていた。
ノアはそれらを気にした様子もなく、律の隣に腰を下ろし、袋からパンを取り出す。
「……律くん」
「……な、なんだよ」
「怒ってる?」
その一言に、律の手が止まった。
誤魔化すように笑って、
「怒ってねぇよ。ただ、ちょっとだけ……」
「嫉妬?」
「……っ、ちげーし……!」
ばっと顔を逸らした律の耳が真っ赤になっていて、ノアは思わず柔らかく笑った。
「……かわいいな」
「か、可愛いとか言うなよ!」
「僕はね、律くんだけを見てるよ」
そのまっすぐな声に、律は言葉を失った。
不安が、すーっと溶けていくようだった。
「……マジで、ずるいんだよお前は。どこまでも」
「ずるくていい。律くんが僕のそばにいてくれるなら、それで」
ノアはそっと、机の下で律の手を握る。
見えない場所で繋がれたその温もりに、律は胸の鼓動が早くなるのを感じた。
(ああ……やっぱオレ、こいつのことが……)
信じたい――いや、信じてる。
たとえ自信がなくなりそうになっても、
隣にいるこの人が、その手を離さない限り。
「……放課後、一緒に帰るか」
「うん、もちろん」
握られた手は、少し強く、けれど優しく律を包んでいた。
0
あなたにおすすめの小説
邪神の祭壇へ無垢な筋肉を生贄として捧ぐ
零
BL
鍛えられた肉体、高潔な魂――
それは選ばれし“供物”の条件。
山奥の男子校「平坂学園」で、新任教師・高尾雄一は静かに歪み始める。
見えない視線、執着する生徒、触れられる肉体。
誇り高き男は、何に屈し、何に縋るのか。
心と肉体が削がれていく“儀式”が、いま始まる。
上司、快楽に沈むまで
赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。
冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。
だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。
入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。
真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。
ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、
篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」
疲労で僅かに緩んだ榊の表情。
その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。
「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」
指先が榊のネクタイを掴む。
引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。
拒むことも、許すこともできないまま、
彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。
言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。
だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。
そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。
「俺、前から思ってたんです。
あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」
支配する側だったはずの男が、
支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。
上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。
秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。
快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。
――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。
鎖に繋がれた騎士は、敵国で皇帝の愛に囚われる
結衣可
BL
戦場で捕らえられた若き騎士エリアスは、牢に繋がれながらも誇りを折らず、帝国の皇帝オルフェンの瞳を惹きつける。
冷酷と畏怖で人を遠ざけてきた皇帝は、彼を望み、夜ごと逢瀬を重ねていく。
憎しみと抗いのはずが、いつしか芽生える心の揺らぎ。
誇り高き騎士が囚われたのは、冷徹な皇帝の愛。
鎖に繋がれた誇りと、独占欲に満ちた溺愛の行方は――。
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる