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第7話「はじめての文化祭」
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文化祭前日。
高校は準備のために活気づいていた。
「なあ、ノア。こっちの飾り、もうちょっと高いところに付けてくれる?」
「うん、任せて」
背の高いノアは、頼りにされっぱなしだ。
生徒たちの視線も集まり、「かっこいい……」「まるでモデルみたい……」とひそひそ声が漏れる。
律はその様子を遠くから見て、複雑な思いを抱えていた。
(ああもう……分かってたけど、注目されすぎだろ、こいつ……)
けれど、ノアはというと――
「律くん、こっち見て。似合う?」
と、律にだけ向ける柔らかな笑みを見せてきた。
「……バカ。似合ってるけど、それ公衆の面前でやるなっての」
「でも律くんだけに見せてるよ?」
(……それがまたタチ悪いんだよ……!)
律は顔を赤くしながら、装飾の箱に頭を突っ込んでごまかした。
•
文化祭当日。
クラスの出し物は“メイド喫茶”。
ノアもメイド服に身を包み、どこか慣れない様子で律の横に立つ。
「……動きにくい……。けど、律くんが見たいって言ったから」
「そんなこと一言も言ってねぇ!?」
「でも、今すごく顔が嬉しそう」
「~~~っ!! もうやめろ!接客行け!」
ぎこちなくも笑いが絶えない時間が過ぎていく。
しかしその昼過ぎ、事件が起きた。
「ノアくん、ちょっと裏まで来てくれない?」
同じクラスの女子生徒がノアに呼びかける。
裏手に行くと――
「……好きなんです。ノアくんのこと」
「……」
「ずっと、他の女子と違うって思ってた。だから、もし今好きな人がいないなら、考えてほしい……」
律は偶然、そのやり取りを見てしまった。
(……告白、された……?)
胸がきゅう、と痛む。
自分じゃ勝てない相手のような気がして、どうしようもなく不安になる。
ノアの返事が聞こえないまま、律はその場をそっと離れた。
•
夕方、文化祭が終わり、片付けが進む中。
校舎の裏庭に、律の姿があった。
一人ベンチに座り、夕陽を見つめている。
「……ここにいたんだ」
ノアの声がして、律が振り向く。
「……よ。文化祭、おつかれ」
「律くん、さっき……あの告白、見てた?」
律は視線をそらしてうなずいた。
「……返事、してなかったよね。もしかして、考えてんのかと思って」
ノアは無言で律の隣に座り、律の手をそっと握った。
「律くん以外、考えられない。返事もちゃんと断った」
「……でも、周りはお前のこと放っておかないっていうか……」
「それでも、僕が見てるのは律くんだけ。誰よりも優しくて、正直で、僕のすべてを受け止めてくれた律くん」
ぎゅ、と指が絡まる。
「……うっせーな、もう」
律は照れくさそうに目を伏せながら、肩を預けた。
「……好きだよ、ノア」
「僕も、律くんが大好き」
静かな夕暮れ、ふたりの間に流れる空気はやさしく甘く、どこまでも心地よかった。
高校は準備のために活気づいていた。
「なあ、ノア。こっちの飾り、もうちょっと高いところに付けてくれる?」
「うん、任せて」
背の高いノアは、頼りにされっぱなしだ。
生徒たちの視線も集まり、「かっこいい……」「まるでモデルみたい……」とひそひそ声が漏れる。
律はその様子を遠くから見て、複雑な思いを抱えていた。
(ああもう……分かってたけど、注目されすぎだろ、こいつ……)
けれど、ノアはというと――
「律くん、こっち見て。似合う?」
と、律にだけ向ける柔らかな笑みを見せてきた。
「……バカ。似合ってるけど、それ公衆の面前でやるなっての」
「でも律くんだけに見せてるよ?」
(……それがまたタチ悪いんだよ……!)
律は顔を赤くしながら、装飾の箱に頭を突っ込んでごまかした。
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文化祭当日。
クラスの出し物は“メイド喫茶”。
ノアもメイド服に身を包み、どこか慣れない様子で律の横に立つ。
「……動きにくい……。けど、律くんが見たいって言ったから」
「そんなこと一言も言ってねぇ!?」
「でも、今すごく顔が嬉しそう」
「~~~っ!! もうやめろ!接客行け!」
ぎこちなくも笑いが絶えない時間が過ぎていく。
しかしその昼過ぎ、事件が起きた。
「ノアくん、ちょっと裏まで来てくれない?」
同じクラスの女子生徒がノアに呼びかける。
裏手に行くと――
「……好きなんです。ノアくんのこと」
「……」
「ずっと、他の女子と違うって思ってた。だから、もし今好きな人がいないなら、考えてほしい……」
律は偶然、そのやり取りを見てしまった。
(……告白、された……?)
胸がきゅう、と痛む。
自分じゃ勝てない相手のような気がして、どうしようもなく不安になる。
ノアの返事が聞こえないまま、律はその場をそっと離れた。
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夕方、文化祭が終わり、片付けが進む中。
校舎の裏庭に、律の姿があった。
一人ベンチに座り、夕陽を見つめている。
「……ここにいたんだ」
ノアの声がして、律が振り向く。
「……よ。文化祭、おつかれ」
「律くん、さっき……あの告白、見てた?」
律は視線をそらしてうなずいた。
「……返事、してなかったよね。もしかして、考えてんのかと思って」
ノアは無言で律の隣に座り、律の手をそっと握った。
「律くん以外、考えられない。返事もちゃんと断った」
「……でも、周りはお前のこと放っておかないっていうか……」
「それでも、僕が見てるのは律くんだけ。誰よりも優しくて、正直で、僕のすべてを受け止めてくれた律くん」
ぎゅ、と指が絡まる。
「……うっせーな、もう」
律は照れくさそうに目を伏せながら、肩を預けた。
「……好きだよ、ノア」
「僕も、律くんが大好き」
静かな夕暮れ、ふたりの間に流れる空気はやさしく甘く、どこまでも心地よかった。
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