黒羽の約束

猫目オテテ

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第8話「キミが笑う日」

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「誕生日……かぁ」

律はひとり、ベッドの上で唸っていた。
ノアにとっては人間界で迎える初めての誕生日。
なにか思い出に残ることをしてあげたい。けれど――

「何が嬉しいのか、全然わかんねぇ……」

異世界から来た美しい悪魔の少年。
そもそも“誕生日”という概念が魔界にどれほどあるのかも知らなかった。

けれど、何かしてあげたいという気持ちはどんどん膨らんでいく。

(よし……こうなったら、俺のセンスに任せるしかねぇ!)

その日から律は、放課後も少しずつ準備を始めた。
プレゼントは、自分で選んだレザーのブレスレット。
そして、ささやかながらケーキを焼いて――
夜には、ノアを家に呼ぶ予定だった。


当日。

「律くん、今日ちょっと放課後……」

「わりぃ! 今日は急用!先帰っててくれ!」

「えっ……あ、うん……?」

ノアは首を傾げながらも、言われたとおり一度帰る。
律はそのすきにダッシュでケーキを焼き、部屋を飾り付け、ブレスレットをラッピングする。

(……よし、完璧!)


夜。

玄関のベルが鳴くと、律は胸の鼓動を落ち着かせながらドアを開けた。

「律くん……なんだか部屋が、甘い匂い……?」

ノアがリビングに足を踏み入れると、そこには手作りのチョコケーキと飾り付けられた空間が広がっていた。

「……え?」

「誕生日……おめでとう。って、魔界にそういう文化あるか知らねーけど、こっち来たんだし、せっかくだからさ」

ノアは目を丸くして、ゆっくりと口元に笑みを浮かべた。

「律くん……本当に?」

「うん」

「……嬉しい。すごく、すごく嬉しい」

ノアは思わず律に飛びつくと、ぎゅっと抱きしめた。

「プレゼントもある。これ」

律が手渡したブレスレットは、黒革にシンプルな銀の留め具がついたものだった。

「……僕、これずっとつける。どこへ行っても。律くんがくれた、大切なものだから」

「よかった……似合ってるよ。すげぇ、かっこいい」

「……じゃあ、今日の誕生日のお願い、してもいい?」

「え? な、なんだよ」

「律くんと、ずっと一緒にいたい」

ぽつりと呟かれた言葉に、律はドキッとする。

「……もう、それは願わなくても叶ってる。お前がいいって言うなら、俺も……ずっと、そばにいるよ」


ケーキを食べ、笑いあった夜。
時計の針が午前0時をまわったころ――
ノアは律のベッドで、そっと律に寄り添った。

「……律くん。今夜は、キスだけでいい?」

「……“だけ”って言うな」

「ふふ……じゃあ、もう一回だけ」

何度も重なる口づけの中、ふたりの距離はまた少し、確かに近づいていく。


――夜が更けても、優しい気配は消えなかった。
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