黒羽の約束

猫目オテテ

文字の大きさ
44 / 47

第9話「2人きりの旅行」

しおりを挟む
「……ほんとに、来るなんてな」

ぽつりとつぶやいた律の隣で、ノアは旅館の鍵を指先で弄んでいた。
人里離れた静かな温泉宿。ここは、律の親がかつて使っていた保養所のひとつ。

「来たかったんだよ。律くんと、ふたりきりで」

振り返ったノアの瞳が、ほんのり熱を帯びている。
律はそれに気づかぬふりをしながら荷物を降ろし、そそくさと布団を確認する。

「……ちゃんと、二組あるな。ま、まあ当然だし」

「そう? 一組でもいいのに」

「ノアッ!?」

不意に肩を叩かれて飛び上がる律。
ノアはくすりと笑って、そのまま彼の手を取った。

「冗談だよ。でも……今日くらい、甘えてもいい?」

「……っ、わ、わかったよ……バカ」


湯上がりの部屋、浴衣姿の律は赤く火照った頬を隠すように壁にもたれていた。
ノアは隣に座りながら、彼の髪をそっと撫でる。

「律くん、肌……綺麗だね」

「お前、ずっと見てたのか?」

「うん。だって、好きだから」

その一言に、律の身体がびくりと震える。
視線を合わせられずに俯く彼の頬に、ノアはそっと唇を寄せた。

「……んっ……!」

「ねえ、律くん。今夜、俺に全部、任せてくれる?」

「……お、俺、初めてだぞ……」

「知ってる。だからこそ、ちゃんと大事にする。……優しくするから」

布団に押し倒される律。
肩をそっと抱かれ、ノアの指先が浴衣の合わせを丁寧にほどいていく。

「恥ずかしい……」

「見せて。律くんの全部。俺だけに」

言葉と共に、唇が首筋を這い、胸元に柔らかく触れる。
ゆっくりと、しかし確実に律の理性は甘さの中で溶かされていった。

「……っ、ノア……も、もう……」

「可愛いよ、律くん。……全部、俺が教えてあげる」

柔らかな吐息が、律の耳元で甘く囁かれた。
ノアの手が、身体の奥へとゆっくりと触れてくる。

「初めてでも……気持ちよくなるから。安心して」

「や、やめ……言うな、そんなこと……!」

けれどその声は次第に快感に変わり、震えながらノアを受け入れる律。
ノアはそのすべてを優しく、しかし確実に律の奥深くまで刻み込んだ。

「律くん、好きだよ……世界で一番、大事にする」

「……ばか……泣かすなよ……」


夜が明ける頃、布団の中。
腕の中で眠る律を抱きしめながら、ノアは静かに口づけた。

「君が、俺のすべてだよ」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

上司、快楽に沈むまで

赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。 冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。 だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。 入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。 真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。 ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、 篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」 疲労で僅かに緩んだ榊の表情。 その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。 「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」 指先が榊のネクタイを掴む。 引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。 拒むことも、許すこともできないまま、 彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。 言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。 だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。 そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。 「俺、前から思ってたんです。  あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」 支配する側だったはずの男が、 支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。 上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。 秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。 快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。 ――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

邪神の祭壇へ無垢な筋肉を生贄として捧ぐ

BL
鍛えられた肉体、高潔な魂―― それは選ばれし“供物”の条件。 山奥の男子校「平坂学園」で、新任教師・高尾雄一は静かに歪み始める。 見えない視線、執着する生徒、触れられる肉体。 誇り高き男は、何に屈し、何に縋るのか。 心と肉体が削がれていく“儀式”が、いま始まる。

吊るされた少年は惨めな絶頂を繰り返す

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

冤罪で堕とされた最強騎士、狂信的な男たちに包囲される

マンスーン
BL
​王国最強の聖騎士団長から一転、冤罪で生存率0%の懲罰部隊へと叩き落とされたレオン。 泥にまみれてもなお気高く、圧倒的な強さを振るう彼に、狂った執着を抱く男たちが集結する。

BL団地妻-恥じらい新妻、絶頂淫具の罠-

おととななな
BL
タイトル通りです。 楽しんでいただけたら幸いです。

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

処理中です...