黒羽の約束

猫目オテテ

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第10話「恋と油断と、鉢合わせ」

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「……これ、ここをxで割って整理すれば、式が簡単になるんじゃない?」

「んー、やっぱりノアって頭いいな……。俺もう眠くなってきた」

休日の午後、宗一の家のリビングには、律とノアのふたりきりの空気が漂っていた。
宿題という名目で持ち込んだノートは広がったまま、すでに手は止まり、
いつのまにかふたりの視線は課題ではなく――互いへと移っていた。

「律くん……昨日の夜のこと、思い出した?」

「……っ、お前、いきなり何言い出すんだよ……」

「ねぇ……また、したくなった」

ノアの指が、律の頬に触れ、そっと顎をすくう。
自然と唇が重なり、背中に手がまわる。
抵抗しないどころか、律は吸い寄せられるようにノアの胸に身体を預けた。

「……部屋、行く?」

「待て、今ここで……?」

「もう我慢できない」

ソファの背にもたれたまま、ノアは律を膝に乗せるように引き寄せた。
浴びせられる甘いキスと囁き。
律は抗いながらも――頬を染めて、目を閉じる。

「……バカノア……」

けれど、ノアが律に覆いかぶさろうとしたその瞬間――

「……お前ら……何やってんの」

凍る空気。

振り返れば、玄関からひょっこり顔を出していたのは宗一であり、
その背後に、無表情で袋をぶら下げて立っていたのは――アルマだった。

「……あ」

「…………」

ノアは動きを止めたまま、完全に硬直。
律はというと、真っ赤になってノートを頭にかぶせた。

「お邪魔だったかな」

アルマの低い声に、宗一がくつくつと笑いながら肩をすくめる。

「まあ、見なかったことにしてやるよ。でも……俺の弟の貞操に手を出すとはな、ノアくん?」

「違、ちがっ……いや、違くはないけど……ッ!!」

「ノアが押し倒してきたんだ……俺は悪くない……!」

律の小声の言い訳が空しく響き、
アルマは静かにため息をつく。

「人間界って……なんて自由なんだ」

「違う、これはたぶん、どこでもあんま褒められないやつだよ」

「宗一、今度このふたりの監視、頼む」

「おう、任せとけ。兄としてな!」

ノアと律は、膝の上で固まったまま動けず。
ソファの前で、2組のカップルが奇妙な空気に包まれていた。

けれど、そんな中でも律の目だけは、
どこか嬉しそうに、アルマと宗一を見つめていた。

(また、ちゃんと笑ってる……良かった……)
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