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憎しみ
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それから私は執務室で王妃としての執務をこなしていた。
「・・・」
『―お前の人生だ。お前自身で決めろ。俺もアルバートもお前の決定に従うつもりだ』
しかし先ほどのお兄様の言葉が引っ掛かって集中出来ない。こんなのは初めてだ。
(執務中に他のことを考えてしまうだなんて王妃失格ね・・・)
「王妃陛下?いかがなさいました?」
「あ・・・」
珍しく物思いに耽る私を横にいた文官が心配そうな顔で見た。
「大丈夫よ、少し考え事をしていただけだから」
「そうでしたか、何だか王妃陛下らしくないですね」
「・・・ええ、私もそう思うわ」
驚いたような顔をしてそう言った文官に苦笑いが出る。
「少し休憩にしましょうか、あなたも疲れたでしょう」
そう言って私は椅子から立ち上がった。文官はそんな私をじっと見つめていたが、しばらくしてコクリと頷いた。
「分かりました」
「少し外に出て空気を吸ってくるわ」
「はい、いってらっしゃいませ」
私はそれだけ言って執務室から出た。
◆◇◆◇◆◇
「ハァ・・・」
王宮の廊下を歩きながら私は一人誰にも気付かれないように溜息をついた。
今は執務をしても集中出来そうになかった。いつもと様子が違うことに気付かれるわけにはいかない。だから私は逃げるようにして執務室から出たのである。
(私ったら本当にどうしてしまったのかしら・・・)
自分でも分からない心の不調に悩まされることになるとは思いもしなかった。体は健康なのに一体どうしたというのだろうか。
私は考え込みながらも宮殿の中を散歩し続けた。こうすれば気が紛れて次第にいい気分になってくれるんじゃないかとそんな希望を抱いて。
(・・・・・・・ん?)
庭園に差し掛かったとき、私はある人物の姿を視界に捉えた。
(あれって・・・リリア様・・・?)
一人庭園で佇んでいたのは第一側妃のリリア様だった。いつもなら私を見て馬鹿にしたような笑みを浮かべてくる彼女が、今日は私の存在に気付かずにある一点だけを見つめていた。
(何を見ているんだろう・・・?)
そう思い、彼女の視線の先に目を向けると―
「・・・・・・あ」
リリア様が近くにいるというのに思わず声を出してしまった。それと同時に、リリア様がそこから目を離せなかった理由をようやく察した。
彼女がじっと見つめていたのは国王陛下とクリスティーナ様の仲睦まじい姿だったからだ。
クリスティーナ様は花が綻ぶような笑みを浮かべて国王陛下と共に庭園を歩いていた。そして陛下はそんな彼女を愛しいものを見るかのような目で見つめていた。
リリア様はその光景を憎々しげに見ていた。グッと握りしめた拳からは血が出ている。よほど頭に来ているようだ。
(そりゃあ辛いわよね・・・もう私は何とも思わないけど・・・)
彼女はきっと愛しい夫を奪われたと思っているのだろう。元々陛下は好色な方なので、別に誰のものでもないのだが。
「もう、陛下ってば」
「クリスティーナ、本当に君は可愛いな」
クリスティーナ様と陛下の楽しそうな声がここまで聞こえてくる。その声を聞いてリリア様の顔はさらに険しくなった。私はというと―
(これを見ても少しも心が揺れない私はやっぱり陛下の妻失格ね)
そんなことを思いながらも、そのことに対して優越感を感じてる自分がいる。
そして私は再び少し離れたところにいる二人に目を向けた。
(・・・・・・・あら)
国王陛下がクリスティーナ様の額にキスをしていた。頬を赤く染めるクリスティーナ様。そんな彼女の頭を優しく撫でる国王陛下。これはなかなかに面白い物を見せてもらった。
―ポキッ
それを見たリリア様の手に持っていた一本の赤いバラが真っ二つに折れた。
そして、グッと唇を噛みながら彼女は荒々しく庭園から立ち去った。
「・・・」
『―お前の人生だ。お前自身で決めろ。俺もアルバートもお前の決定に従うつもりだ』
しかし先ほどのお兄様の言葉が引っ掛かって集中出来ない。こんなのは初めてだ。
(執務中に他のことを考えてしまうだなんて王妃失格ね・・・)
「王妃陛下?いかがなさいました?」
「あ・・・」
珍しく物思いに耽る私を横にいた文官が心配そうな顔で見た。
「大丈夫よ、少し考え事をしていただけだから」
「そうでしたか、何だか王妃陛下らしくないですね」
「・・・ええ、私もそう思うわ」
驚いたような顔をしてそう言った文官に苦笑いが出る。
「少し休憩にしましょうか、あなたも疲れたでしょう」
そう言って私は椅子から立ち上がった。文官はそんな私をじっと見つめていたが、しばらくしてコクリと頷いた。
「分かりました」
「少し外に出て空気を吸ってくるわ」
「はい、いってらっしゃいませ」
私はそれだけ言って執務室から出た。
◆◇◆◇◆◇
「ハァ・・・」
王宮の廊下を歩きながら私は一人誰にも気付かれないように溜息をついた。
今は執務をしても集中出来そうになかった。いつもと様子が違うことに気付かれるわけにはいかない。だから私は逃げるようにして執務室から出たのである。
(私ったら本当にどうしてしまったのかしら・・・)
自分でも分からない心の不調に悩まされることになるとは思いもしなかった。体は健康なのに一体どうしたというのだろうか。
私は考え込みながらも宮殿の中を散歩し続けた。こうすれば気が紛れて次第にいい気分になってくれるんじゃないかとそんな希望を抱いて。
(・・・・・・・ん?)
庭園に差し掛かったとき、私はある人物の姿を視界に捉えた。
(あれって・・・リリア様・・・?)
一人庭園で佇んでいたのは第一側妃のリリア様だった。いつもなら私を見て馬鹿にしたような笑みを浮かべてくる彼女が、今日は私の存在に気付かずにある一点だけを見つめていた。
(何を見ているんだろう・・・?)
そう思い、彼女の視線の先に目を向けると―
「・・・・・・あ」
リリア様が近くにいるというのに思わず声を出してしまった。それと同時に、リリア様がそこから目を離せなかった理由をようやく察した。
彼女がじっと見つめていたのは国王陛下とクリスティーナ様の仲睦まじい姿だったからだ。
クリスティーナ様は花が綻ぶような笑みを浮かべて国王陛下と共に庭園を歩いていた。そして陛下はそんな彼女を愛しいものを見るかのような目で見つめていた。
リリア様はその光景を憎々しげに見ていた。グッと握りしめた拳からは血が出ている。よほど頭に来ているようだ。
(そりゃあ辛いわよね・・・もう私は何とも思わないけど・・・)
彼女はきっと愛しい夫を奪われたと思っているのだろう。元々陛下は好色な方なので、別に誰のものでもないのだが。
「もう、陛下ってば」
「クリスティーナ、本当に君は可愛いな」
クリスティーナ様と陛下の楽しそうな声がここまで聞こえてくる。その声を聞いてリリア様の顔はさらに険しくなった。私はというと―
(これを見ても少しも心が揺れない私はやっぱり陛下の妻失格ね)
そんなことを思いながらも、そのことに対して優越感を感じてる自分がいる。
そして私は再び少し離れたところにいる二人に目を向けた。
(・・・・・・・あら)
国王陛下がクリスティーナ様の額にキスをしていた。頬を赤く染めるクリスティーナ様。そんな彼女の頭を優しく撫でる国王陛下。これはなかなかに面白い物を見せてもらった。
―ポキッ
それを見たリリア様の手に持っていた一本の赤いバラが真っ二つに折れた。
そして、グッと唇を噛みながら彼女は荒々しく庭園から立ち去った。
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