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舞踏会②
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私はグレンお兄様と共に会場への道のりを歩いた。
隣を歩くお兄様がボソッと私に言った。
「陛下の愚行は俺が既に社交界に広めておいた。あの場にあの男の味方はおそらくいないだろう」
「お兄様、さすがですわね」
それからしばらくして、会場に到着した。
この扉の前に立ったところでいつもは何ともないのに、今日に限って何だかドキドキする。
隣にいるお兄様は、覚悟を決めたように前を見ていた。
(そうよね……私もしっかりしないと!)
やはりお兄様に比べると私はまだまだだ。
自分の未熟さを改めて思い知った。
「――王妃陛下と公爵閣下です!」
その声で、私とお兄様は会場へと足を踏み入れた。
既に到着していた貴族たちが、私を見てヒソヒソしている。
「王妃陛下よ……隣にいるのは兄君であらせられる公爵閣下よね?国王陛下はどうしたのかしら……」
「知らないのか?陛下はもうあの愛妾にご執心なんだぞ」
こうなることはある程度予想していたため、別に何とも思わなかった。
(お兄様が隣にいてくれてよかった……)
グレンお兄様が来てくれていなければ、私は一人で入場することになっていただろう。
考えるだけでも恐ろしい。
(だけど、陛下と一緒に歩くときよりも何だか居心地が良いわ)
私が陛下と隣り合って歩くことはもう二度と無い。
別に寂しくもないが。
それから私たちは会場の隅へと移動した。
王妃である私が入場したので、次に入場する人物はもう決まっている。
「――国王陛下とクリスティーナ様です!」
正装姿の国王陛下と、美しい装いをしたクリスティーナ様が会場へ入って来た。
二人を見た貴族たちの間に再びざわめきが起きる。
「やっぱりあの噂は本当だったのね……!」
「平民の女を舞踏会に連れてくるだなんて非常識にも程がある……!」
「誰か暗殺してくれねえかな……」
一国の王に対して言う言葉ではないものもちらほら。
入場を終えた二人は、お互いを見つめてフフッと微笑み合った。
陛下はそんな彼女を見つめて頬を染めている。
舞踏会用のドレスに着替えたクリスティーナ様はまるで妖精のように美しかった。
(本当に、お似合いな二人だこと)
しかしこの後、陛下がとんでもない行動に出ることを私はまだ知らなかった。
(さて、あの二人はどう動くのかしら?)
私はお兄様の横で二人の動きを注意深く観察していた。
こうしている理由は、あの二人を断罪する機会をしっかりと見極める必要があったからだ。
入場を終えた陛下はクリスティーナ様をダンスに誘った。
嬉しそうに陛下の手を取るクリスティーナ様。
そうして二人はホールの中央で踊り始めた。
美男美女である二人の踊る姿はとても美しかったが、貴族たちはそれを冷めた目で見ていた。
(やっぱりただの平民じゃないわね、知ってたけど)
平民がダンスなど踊れるはずがない。
陛下は何故それに気付かないのだろうか。
しばらくして、楽団が演奏を止め、二人のダンスが終了した。
(このあとはどうするつもりかしら?)
ダンスを終えた陛下は、クリスティーナ様の手を引いた。
会場の外にでも出るつもりか、と思っていたそのとき、陛下が信じられない行動に出た。
「……冗談でしょう?」
私ですら無意識に声を出してしまった。
何と陛下が、王の隣にある王妃の椅子にクリスティーナ様を座らせたのだ。
(……へぇ、そう出るのね)
これにはいくら私でも不快感を隠しきれなかった。
「「「!?!?!?」」」
陛下の暴挙に信じられないというような顔をする貴族たち。
その中にはチラチラと私の顔色を窺っている者までいる。
クリスティーナ様を王妃の席に座らせると、陛下は椅子から立ち上がって声を張り上げた。
「皆に知らせたいことがある!」
陛下のその声で、会場がシンと静まり返った。
(何を言うつもりかしら?)
どうせくだらないことなんだろうけど。
「私は今日を以て王妃と離婚し、ここにいるクリスティーナを妻にすることにした!」
私の予想通り、本当にくだらないことだった。
隣を歩くお兄様がボソッと私に言った。
「陛下の愚行は俺が既に社交界に広めておいた。あの場にあの男の味方はおそらくいないだろう」
「お兄様、さすがですわね」
それからしばらくして、会場に到着した。
この扉の前に立ったところでいつもは何ともないのに、今日に限って何だかドキドキする。
隣にいるお兄様は、覚悟を決めたように前を見ていた。
(そうよね……私もしっかりしないと!)
やはりお兄様に比べると私はまだまだだ。
自分の未熟さを改めて思い知った。
「――王妃陛下と公爵閣下です!」
その声で、私とお兄様は会場へと足を踏み入れた。
既に到着していた貴族たちが、私を見てヒソヒソしている。
「王妃陛下よ……隣にいるのは兄君であらせられる公爵閣下よね?国王陛下はどうしたのかしら……」
「知らないのか?陛下はもうあの愛妾にご執心なんだぞ」
こうなることはある程度予想していたため、別に何とも思わなかった。
(お兄様が隣にいてくれてよかった……)
グレンお兄様が来てくれていなければ、私は一人で入場することになっていただろう。
考えるだけでも恐ろしい。
(だけど、陛下と一緒に歩くときよりも何だか居心地が良いわ)
私が陛下と隣り合って歩くことはもう二度と無い。
別に寂しくもないが。
それから私たちは会場の隅へと移動した。
王妃である私が入場したので、次に入場する人物はもう決まっている。
「――国王陛下とクリスティーナ様です!」
正装姿の国王陛下と、美しい装いをしたクリスティーナ様が会場へ入って来た。
二人を見た貴族たちの間に再びざわめきが起きる。
「やっぱりあの噂は本当だったのね……!」
「平民の女を舞踏会に連れてくるだなんて非常識にも程がある……!」
「誰か暗殺してくれねえかな……」
一国の王に対して言う言葉ではないものもちらほら。
入場を終えた二人は、お互いを見つめてフフッと微笑み合った。
陛下はそんな彼女を見つめて頬を染めている。
舞踏会用のドレスに着替えたクリスティーナ様はまるで妖精のように美しかった。
(本当に、お似合いな二人だこと)
しかしこの後、陛下がとんでもない行動に出ることを私はまだ知らなかった。
(さて、あの二人はどう動くのかしら?)
私はお兄様の横で二人の動きを注意深く観察していた。
こうしている理由は、あの二人を断罪する機会をしっかりと見極める必要があったからだ。
入場を終えた陛下はクリスティーナ様をダンスに誘った。
嬉しそうに陛下の手を取るクリスティーナ様。
そうして二人はホールの中央で踊り始めた。
美男美女である二人の踊る姿はとても美しかったが、貴族たちはそれを冷めた目で見ていた。
(やっぱりただの平民じゃないわね、知ってたけど)
平民がダンスなど踊れるはずがない。
陛下は何故それに気付かないのだろうか。
しばらくして、楽団が演奏を止め、二人のダンスが終了した。
(このあとはどうするつもりかしら?)
ダンスを終えた陛下は、クリスティーナ様の手を引いた。
会場の外にでも出るつもりか、と思っていたそのとき、陛下が信じられない行動に出た。
「……冗談でしょう?」
私ですら無意識に声を出してしまった。
何と陛下が、王の隣にある王妃の椅子にクリスティーナ様を座らせたのだ。
(……へぇ、そう出るのね)
これにはいくら私でも不快感を隠しきれなかった。
「「「!?!?!?」」」
陛下の暴挙に信じられないというような顔をする貴族たち。
その中にはチラチラと私の顔色を窺っている者までいる。
クリスティーナ様を王妃の席に座らせると、陛下は椅子から立ち上がって声を張り上げた。
「皆に知らせたいことがある!」
陛下のその声で、会場がシンと静まり返った。
(何を言うつもりかしら?)
どうせくだらないことなんだろうけど。
「私は今日を以て王妃と離婚し、ここにいるクリスティーナを妻にすることにした!」
私の予想通り、本当にくだらないことだった。
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