貴方が選んだのは全てを捧げて貴方を愛した私ではありませんでした

ましゅぺちーの

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幸福な日々

あの日から3年の月日が経った。


「奥様。ディボルト公爵様がいらっしゃいました。」


「通してちょうだい。」


私がそう言うと、侍女は客間を出て行き、入れ違いに一人の男性が入ってくる。


サラサラとした金髪に蒼い瞳。


「久しぶりだね、ローラン公爵夫人。」


「ええ、お久しぶりです。―エイドリアン・ディボルト公爵閣下。」


そう、ディボルト公爵とはエイドリアン殿下である。


彼はあの後勉学に励み、見事更生することが出来た。


まぁ元々彼は悪い人ではないから、更生という言い方は間違っているかもしれないが。


「今日は何のご用でしょうか?」


「・・・公爵夫人に、謝罪をしに来た。」


「・・・謝罪、ですか?」


そう言うとディボルト公爵閣下は真剣な顔で私を見つめた。


「ローラン公爵夫人、すまなかった。」


ディボルト公爵閣下はそう言って頭を下げた。


「あの時の私はどうかしていた。恋に溺れ、正常な判断が出来なくなっていた。そのせいで君を深く傷つけてしまった。本当にすまなかった。」


彼はあのことをかなり気にしていたようだ。


だけど私はもう気にしてなどいない。


「・・・顔を上げてください、公爵閣下。」


「・・・」


彼はゆっくりと顔を上げた。


「謝罪を受け入れます。貴方はもう十分罪を償われました。」


実際ディボルト公爵閣下は公爵となってからは、国のために必死で働いている。


彼に救われた命も多いと聞く。


もう十分、罪を償っただろう。


「ありがとう、公爵夫人。」


彼は三年前とは随分と変わった。


身体も鍛え上げられ、公爵としての仕事もきちんとこなしているようだ。


今では彼に対して血筋がどうこう言う貴族は一人もいない。


縁談も国内外問わず来ているようだ。


何だかんだ幸せになれたようで良かった!


私はふと、気になったことを聞いてみた。


「そういえば、ディボルト公爵閣下はご結婚なさらないのですか?」


私の言葉に彼は驚いたような顔をした。


少し考えこんだ後に口を開いた。


「・・・私は、結婚するつもりも子供を作るつもりもない。もう女性はこりごりだ。」


彼は冗談っぽく笑って言った。


それにつられて私も笑ってしまう。


「ふふふ、そうなんですね。」


「・・・もうこんな時間か。公爵夫人、忙しいところありがとう。」


「いいえ、こちらこそ。」




ディボルト公爵閣下はそのまま帰路についた。




しばらくして、クリスが客間に入ってくる。


その顔は少し不機嫌そうだ。


「・・・終わったのか?」


「ええ。」


「あいつ、今さらエレンに何を・・・」


「ただちょっと話してただけよ。」


「・・・」


しかしクリスの機嫌はなかなか直らなかった。


もう、ほんと嫉妬深いんだから・・・


「あとで久しぶりに市井に行かない?最近二人の時間あんまり取れてなかったし・・・。」


「・・・!」


私はクリスに対して微笑みながらそう言った。


彼はゆっくりと私の提案に頷いた。


機嫌直ったみたい!


するとクリスが突然私を後ろから抱きしめた。


「・・・この子のためにも、喧嘩なんてしちゃダメだよな。」


そう言って彼は私のお腹を優しく撫でた。


「ふふふ、まだ妊娠初期よ?」


「それでも俺にとってはもう可愛い子供なんだ。」


「気が早いんだから・・・」


私は彼の言葉に苦笑した。





私は今最高に幸せだ。


私はクリスと、これから生まれてくるであろうこの子と温かい家庭を築いていくんだ。


クリスと結婚した日から幸せじゃなかった日なんて一日たりともなかった。


「・・・ねぇ、クリス。」


「何だ・・・?」


「・・・愛してるわ。」


すると彼は顔を真っ赤にした。




窓から降り注ぐ日差しが私たちを照らした。


この先、彼とならどんな困難も乗り越えて行ける。


そんな気がした。




~fin~

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