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103 捜索
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公爵邸に入った私は、早速解毒剤の捜索に加わった。
(…………全く変わっていないのね)
住人が誰もいなくなって騎士たちだけになった公爵邸は、以前とまるで変わっていなかった。
驚いたのは私が暮らしていた公爵夫人の部屋でさえ、ほとんど変化が無かったことである。
私が出て行ってから半年以上も過ぎているのだからもう少し変化があってもいいはずなのに。
二度とここへ来ることはないと思っていたが、こうしてまた公爵邸に入ることになるとは。
良い思い出は無いし、ルークのためにも早く解毒剤を見つけて王宮に帰りたい。
「……ここにも無し、か」
邸にある部屋を全て捜索したが、結局は何も見つからなかった。
(やっぱり、オリバー様の虚言……?いや、でも彼は……)
私はちょうど近くにいた一人の騎士にオリバー様の様子を尋ねた。
「あの、レビンストン公爵に状況を話すことは出来ませんか。このままじゃ埒が明かないので……」
「ああ、それが、今の公爵はかなり情緒不安定で……とても話が出来る状態ではないようなのです。実行犯である使用人にも尋ねましたが、そんな部屋は知らない、聞いたことも無いと」
「そうですか……」
オリバー様は頼れない。
つまりは、自分の頭で考えるしかないということだ。
(公爵邸の地下……?地下監獄のことではないのかしら……?)
レビンストン公爵邸の地下に、王宮と同じように罪人を閉じ込める監獄があるという話は知っている。
「地下にある監獄はもう捜索しましたか?」
「はい、隅々まで調べましたが実験室なんてものはどこにも」
「そうでしたか……」
騎士の返答を聞いた私は、必死で公爵邸に住んでいた頃の記憶を辿った。
思い出したくない辛い記憶だらけではあるが、ルークのためなら耐えられる。
(公爵邸……地下……)
私はここに住んでいる間はほとんど外へ出ることが出来なかった。
夫であるオリバー様は週に一回ほどしか本邸へは帰らず、もう一つの家庭が出来てからはほとんどの時間をそちらで過ごすようになった。
(何か……何かヒントになることは……)
オリバー様との十年間の結婚生活を思い起こしてみたものの、結局は何も思いつかなかった。
(……あの使用人は私がここへ来る前から公爵家にいた男よ。そんな彼が知らないというのなら、私では……)
諦めかけていたそのとき、公爵邸の中で少し異質な存在だったある部屋のことが引っ掛かった。
「あ……」
オリバー様と結婚したての頃、その部屋に関する使用人たちの話を聞いたことがあった。
『またあんなに厳重に鍵がかけられているわよ』
『何か見られたくないものでもあるのかしらね、旦那様が何があっても絶対に入ってはいけないって使用人たちにキツく言っているし』
もちろん外部の人間は全く知らないだろうが、この公爵邸には絶対に入ってはいけないと言われている部屋があった。
誰にだって知られたくないことの一つや二つあるだろうと、そのときは特に気にしなかったが。
(……私ったら、どうやら地下という言葉に囚われすぎていたようね)
もしかすると、全ての秘密はその部屋に隠されているかもしれない。
私はすぐに部屋に向かって駆け出した。
(…………全く変わっていないのね)
住人が誰もいなくなって騎士たちだけになった公爵邸は、以前とまるで変わっていなかった。
驚いたのは私が暮らしていた公爵夫人の部屋でさえ、ほとんど変化が無かったことである。
私が出て行ってから半年以上も過ぎているのだからもう少し変化があってもいいはずなのに。
二度とここへ来ることはないと思っていたが、こうしてまた公爵邸に入ることになるとは。
良い思い出は無いし、ルークのためにも早く解毒剤を見つけて王宮に帰りたい。
「……ここにも無し、か」
邸にある部屋を全て捜索したが、結局は何も見つからなかった。
(やっぱり、オリバー様の虚言……?いや、でも彼は……)
私はちょうど近くにいた一人の騎士にオリバー様の様子を尋ねた。
「あの、レビンストン公爵に状況を話すことは出来ませんか。このままじゃ埒が明かないので……」
「ああ、それが、今の公爵はかなり情緒不安定で……とても話が出来る状態ではないようなのです。実行犯である使用人にも尋ねましたが、そんな部屋は知らない、聞いたことも無いと」
「そうですか……」
オリバー様は頼れない。
つまりは、自分の頭で考えるしかないということだ。
(公爵邸の地下……?地下監獄のことではないのかしら……?)
レビンストン公爵邸の地下に、王宮と同じように罪人を閉じ込める監獄があるという話は知っている。
「地下にある監獄はもう捜索しましたか?」
「はい、隅々まで調べましたが実験室なんてものはどこにも」
「そうでしたか……」
騎士の返答を聞いた私は、必死で公爵邸に住んでいた頃の記憶を辿った。
思い出したくない辛い記憶だらけではあるが、ルークのためなら耐えられる。
(公爵邸……地下……)
私はここに住んでいる間はほとんど外へ出ることが出来なかった。
夫であるオリバー様は週に一回ほどしか本邸へは帰らず、もう一つの家庭が出来てからはほとんどの時間をそちらで過ごすようになった。
(何か……何かヒントになることは……)
オリバー様との十年間の結婚生活を思い起こしてみたものの、結局は何も思いつかなかった。
(……あの使用人は私がここへ来る前から公爵家にいた男よ。そんな彼が知らないというのなら、私では……)
諦めかけていたそのとき、公爵邸の中で少し異質な存在だったある部屋のことが引っ掛かった。
「あ……」
オリバー様と結婚したての頃、その部屋に関する使用人たちの話を聞いたことがあった。
『またあんなに厳重に鍵がかけられているわよ』
『何か見られたくないものでもあるのかしらね、旦那様が何があっても絶対に入ってはいけないって使用人たちにキツく言っているし』
もちろん外部の人間は全く知らないだろうが、この公爵邸には絶対に入ってはいけないと言われている部屋があった。
誰にだって知られたくないことの一つや二つあるだろうと、そのときは特に気にしなかったが。
(……私ったら、どうやら地下という言葉に囚われすぎていたようね)
もしかすると、全ての秘密はその部屋に隠されているかもしれない。
私はすぐに部屋に向かって駆け出した。
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