愛する夫にもう一つの家庭があったことを知ったのは、結婚して10年目のことでした

ましゅぺちーの

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104 黒魔術

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「ここね……」


公爵邸の一番端にある特に目立たない部屋。
普段は厳重に鍵がかけられている場所だが、既にオリバー様が捕まったためか部屋の扉は開かれていた。


(中はいたって普通だわ……)


部屋の中に入るも、特に変わった様子はない。
しいて言うなら、捜索の跡が少しあることくらいだろうか。


(本当に普通の部屋なのね……)


何の変哲もない、ただの使用人の部屋。
こんな場所に秘密があるなんて、誰が思うだろうか。


(私ももちろんそう思うわ。でも……)


何かが隠されているとしたらここ以外には思い浮かばない。
そう思った私は部屋の中を手当たり次第に捜索した。


何か仕掛けが無いか、隅々まで探し回った。
が、しかし――


(何も無い……か)


手掛かりになりそうなものは無く、本当にただの部屋だった。


(ちょっと待ってよ……本当の本当に何も無いっていうの?)


その可能性も十分にありえたが、どうも腑に落ちない。
絶対に何かがあるはずだ。
そうでなければあれほど厳重に施錠したりはしないだろう。


確信なんて無かったが、私の勘がそう言っていた。


(何か……何か手掛かりは………………って、何これ?)


もう一度部屋の中を見回した私は、本棚に不気味な本が入れられていることに気が付いた。
やけに分厚く、真っ黒で他に比べて存在感のある本。
興味本位でページをめくってみると、内容は意外なものだった。


(これって……黒魔術に関する本……!?)


何故王国でタブー視されている黒魔術について書かれている本がここにあるのか。
黒魔術は王国では禁忌とされていて、使用した者は王族だろうと貴族だろうと死刑と定められている。


(オリバー様……もしかして……!?)


自らの欲のために悪魔に魂を売ったのか。
いくら最低な男だったとしてもそこまでする人では無いと信じたいが、この状況からして……。


彼のしたことにゾッとしながらも、私は本を読み進めた。


(死者蘇生の術……不老不死になる方法……死神との契約……やはり書いてあるのはどれもとんでもない内容ね)


文字を読むだけでも眩暈がしそうだ。
こんなことを知って何になるというのだろう。


(だけどもし、オリバー様が本当に黒魔術を使っていたとしたら……)


そこで私が思い出したのは、王宮の地下監獄での彼の発言だ。


『どのみち死ぬ命だった』


あれはもしかすると、黒魔術を使用した自分に対して言っていたのかもしれない。
彼はずっと前から死を覚悟していたようだったから。


「……」


これまでオリバー様を信じ、敬愛していた自分が情けない。
何故十年も共にいてあの人の黒い本性に気が付かなかったのだろう。
今さら後悔しても遅すぎたが、どうしてもそう思わずにはいられなかった。


(……現実を受け止めきれないけれど、今は解毒剤を見つける方が先ね)


本をパタリと閉じた私は、覚悟を決めた。


「……」


黒魔術に関しては昔、何回か聞いたことがあった。
”血”を使用することで魔法が発動されるのだと。


(血を使えば……)


公爵邸の中でも異様だったこの部屋と黒魔術。
もし、この二つに何か関係があったとしたら。


(私は……何が何でもルークを助けたい……)


決意を固めた私は、自身の親指を思い切り噛んだ。


「痛ッ!!!」


初めてのことだったため力の加減が出来ず、血がドバドバと流れた。


(思ったよりずっと痛い!もっとそっとやれば良かった!)


指から流れた血が床に一滴垂れたそのとき――


「……!?」


突然電気が流れたような轟音と共に、部屋の中が光に包まれた。
思わず目を瞑り、耳を塞いだ。


(収まった……のかな……?)


それからしばらくして、再び開けたときには――


(……何これ)


――部屋の奥に一つの扉が出現していた。


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