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105 解毒剤
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(何あれ……?扉……?)
私はゆっくりと近付いて黒魔術によって出現した扉を開けた。
その先は真っ暗で何も見えなかったが、行かないという選択肢は今の私には無かった。
(ルークの命が懸かっているんだから……)
この先に何が待ち受けているか想像もつかなかったし、当然怖いわけではなかった。
しかし、今の私にはそれよりも大事なものがある。
(覚悟を決めるのよ、エミリア!)
私は勇気を振り絞り、暗闇の中へと飛び込んだ。
辺りが真っ暗だからか、何だか変な感覚に襲われた。
(暗くて何も見えないわ……)
私はただただ勘だけで歩みを進めた。
オリバー様の話だと、この空間のどこかに解毒剤があるはずだ。
(こんなところに解毒剤があるとは思えないけど……)
オリバー様がルークに盛った毒はかなり強い類のものだった。
解毒剤無しでは回復は見込めないだろう。
だからこそ、絶対に解毒剤を持って彼の元へ帰る必要があった。
(ルーク……待っててね……私が必ず解毒剤を手に入れるから……)
これまで散々助けられてきたんだから今度は私が彼を助ける番だ。
その覚悟だけが私を突き動かした。
それからしばらくして、突然暗闇の中に光が見えた。
(何かしら……?もしかして……)
一抹の希望を感じた私は、光に向かって駆け出した。
その先にあったのは――
「え……これって研究室………………?」
とある一室に辿り着いた。
研究室だと思われる部屋だが、どこからどう見ても異常だった。
「ううっ……何これ……血……?」
床や壁などいたるところに血がべっとりと染み付いていて酷い悪臭を放っていた。
研究室にある机にはよく分からない色をした液体が散乱しており、何らかの実験をした痕跡がある。
「これって……」
この部屋を見て、私が出した結論はただ一つ。
(オリバー様……まさかここで黒魔術を研究していたの……?)
扉を発見する前から薄々感じていたことだったが、こうも真実を目の当たりにするとショックを隠しきれない。
ただ冷たくて性格が悪いだけの人だと思っていたから。
(とにかく、早く出ましょう……気味が悪いわ……)
これ以上ここにいると気が狂ってしまいそうだ。
そう思った私は急いで解毒剤を探した。
「――あったわ!!!」
何とか棚の中から解毒剤を発見した私はすぐに来た道を戻った。
黒魔術によって作られた空間から元の部屋に戻ると、安堵感が一気に私を襲った。
「ふぅ……」
何はともあれ解毒剤を無事に見つけられてよかった。
私にとってはその事実だけで十分だ。
そして私にはもう一つ遂行しなければならないことがあった。
(この扉、どうやって元に戻すのかしら?)
黒魔術はタブーだ。
使用した者は重罪に問われ、いくら名門公爵家の当主でもそれは変えられない。
(これを明らかにしてしまったらリオ君がこの先さらに生き辛くなってしまうかもしれないわ……)
かつて黒魔術を使用し死刑になった女の家族が「魔女の血筋」として酷い差別を受けていたという話を聞いたことがあった。
リオ君にこれ以上背負わせてしまうわけにはいかない。
それに既に死刑が決まっているというのに、これ以上の罪を増やす必要も無いだろう。
オリバー様は別にどうなってもかまわなかったが、幼いあの子のことだけは気になった。
「オリバー様は隠してたわけだし、私にだってきっと出来るわ!」
騎士がここへ来る前に何とか証拠隠滅しようと、扉に手を触れたそのときだった――
「!?」
突然ドス黒い何かが部屋を包み込み、瞬く間に黒魔術を呑み込んでしまったのだ。
唐突な出来事に慌てふためいていると、部屋の扉が開き、焦ったような顔をした騎士が入って来た。
「エミリア嬢!大変です!」
「どうかしたんですか?」
未だに状況を理解出来ていない私に告げられたのは、衝撃的な事実だった。
「レビンストン元公爵が……――牢獄で自ら命を絶ったそうです!」
私はゆっくりと近付いて黒魔術によって出現した扉を開けた。
その先は真っ暗で何も見えなかったが、行かないという選択肢は今の私には無かった。
(ルークの命が懸かっているんだから……)
この先に何が待ち受けているか想像もつかなかったし、当然怖いわけではなかった。
しかし、今の私にはそれよりも大事なものがある。
(覚悟を決めるのよ、エミリア!)
私は勇気を振り絞り、暗闇の中へと飛び込んだ。
辺りが真っ暗だからか、何だか変な感覚に襲われた。
(暗くて何も見えないわ……)
私はただただ勘だけで歩みを進めた。
オリバー様の話だと、この空間のどこかに解毒剤があるはずだ。
(こんなところに解毒剤があるとは思えないけど……)
オリバー様がルークに盛った毒はかなり強い類のものだった。
解毒剤無しでは回復は見込めないだろう。
だからこそ、絶対に解毒剤を持って彼の元へ帰る必要があった。
(ルーク……待っててね……私が必ず解毒剤を手に入れるから……)
これまで散々助けられてきたんだから今度は私が彼を助ける番だ。
その覚悟だけが私を突き動かした。
それからしばらくして、突然暗闇の中に光が見えた。
(何かしら……?もしかして……)
一抹の希望を感じた私は、光に向かって駆け出した。
その先にあったのは――
「え……これって研究室………………?」
とある一室に辿り着いた。
研究室だと思われる部屋だが、どこからどう見ても異常だった。
「ううっ……何これ……血……?」
床や壁などいたるところに血がべっとりと染み付いていて酷い悪臭を放っていた。
研究室にある机にはよく分からない色をした液体が散乱しており、何らかの実験をした痕跡がある。
「これって……」
この部屋を見て、私が出した結論はただ一つ。
(オリバー様……まさかここで黒魔術を研究していたの……?)
扉を発見する前から薄々感じていたことだったが、こうも真実を目の当たりにするとショックを隠しきれない。
ただ冷たくて性格が悪いだけの人だと思っていたから。
(とにかく、早く出ましょう……気味が悪いわ……)
これ以上ここにいると気が狂ってしまいそうだ。
そう思った私は急いで解毒剤を探した。
「――あったわ!!!」
何とか棚の中から解毒剤を発見した私はすぐに来た道を戻った。
黒魔術によって作られた空間から元の部屋に戻ると、安堵感が一気に私を襲った。
「ふぅ……」
何はともあれ解毒剤を無事に見つけられてよかった。
私にとってはその事実だけで十分だ。
そして私にはもう一つ遂行しなければならないことがあった。
(この扉、どうやって元に戻すのかしら?)
黒魔術はタブーだ。
使用した者は重罪に問われ、いくら名門公爵家の当主でもそれは変えられない。
(これを明らかにしてしまったらリオ君がこの先さらに生き辛くなってしまうかもしれないわ……)
かつて黒魔術を使用し死刑になった女の家族が「魔女の血筋」として酷い差別を受けていたという話を聞いたことがあった。
リオ君にこれ以上背負わせてしまうわけにはいかない。
それに既に死刑が決まっているというのに、これ以上の罪を増やす必要も無いだろう。
オリバー様は別にどうなってもかまわなかったが、幼いあの子のことだけは気になった。
「オリバー様は隠してたわけだし、私にだってきっと出来るわ!」
騎士がここへ来る前に何とか証拠隠滅しようと、扉に手を触れたそのときだった――
「!?」
突然ドス黒い何かが部屋を包み込み、瞬く間に黒魔術を呑み込んでしまったのだ。
唐突な出来事に慌てふためいていると、部屋の扉が開き、焦ったような顔をした騎士が入って来た。
「エミリア嬢!大変です!」
「どうかしたんですか?」
未だに状況を理解出来ていない私に告げられたのは、衝撃的な事実だった。
「レビンストン元公爵が……――牢獄で自ら命を絶ったそうです!」
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