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本編
28.聖女の暴走
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風の噂で聞いたが、呪い返しのせいで倒れたままだった者たちが起きたらしく、尋問が開始されたらしい。呪い返しされた者たちを見てはいないが、どうもひどく怯えた様子で聞かれたことにすらすらと答えているらしい。逆に、それが騎士たちの目には不審に映ったが、調査報告書と一致しているため、そのまま進めているそうだ。
第三騎士団には、やることあったら言ってくれれば、いつでも協力するよ、と手紙を出した。どうやら、瑞姫が第三騎士団を贔屓にしていると思われているらしい。というか、実際に贔屓だなんだとうるさいのが出てきた(らしい)ので(諜報員経由で聞いた)、頻繁に顔を出すのは控えようと言うことになった。騎士団に迷惑をかけるために顔を出しているわけじゃない。……全く、用があるから顔を出しているというのに、情報を読み間違える馬鹿が多いから困ったものである。それ以前に、第三騎士団の団員はメイズしか知らないが。
現在、瑞姫とフォリアは王宮の玄関口をのぞき込むように、柱の陰にいた。そんな二人を、ぎょっとした顔で侍女や侍従たちが通り過ぎていく。
「なんで駄目なんですかっ!?」
「そうだ。聖女様がわざわざ王妃様の元に足を運ぶと仰っておられるのだぞ」
「ですから」
聖女東雲ゆりあとその護衛二人が、王宮の玄関口で扉の警護にあたっている衛兵と口論になっていた。内容は、聖女が王妃様に会いたいから馬車を出せ、王妃様のご病気を治す、と。対して衛兵は、許可が下りていません、面会謝絶です、と。延々とそのやりとりが続いているのである。
「…………聖女って、病気治せるの?」
「過去にはそういう力を持った聖女様もお見えになったと聞いております。此度の聖女様がそうであるかは、わかりませんが」
「あー、能力がその時々で違うんだ」
「そうみたいですね」
あまり詳しいことは、フォリアでもわからないらしい。だが、伝わっているのは、聖人すべてにおいて共通して持つのは、瘴気を浄化する力。それにプラスして一つ、力があるらしい。病気を治せる人もいれば、怪我だけを治せる人、植物の成長を促せる、所謂緑の手を持った人もいたらしい。その時々で持つ能力が違うため、一概にこれ!とは言えないようだ。
「これさ……、私が出てかないと収まらない感じ?」
「……恐らくは、ですが。衛兵の態度から、まだそう時間はたってないと思います。殿下方を呼びに行ったとしても、まだ時間はかかるかと」
「このためだけに、シリウスたちを呼ぶのもね……。しかたないか……。私たちもここから出られないしね」
「ミズキ様の手を煩わせるとは、誠に遺憾ではありますが……」
頭が痛い、とフォリアは頭を抑える。瑞姫も同じ思いだ。大きいため息を飲み込み、しゃん、と背を伸ばすと歩き出した。
「東雲さん、こんなところで騒いで、皆さん驚いてますよ」
「!……え、神楽さん……」
「め、女神様……」
瑞姫の登場に、衛兵たちはほっと安堵の表情になり、頭を下げる。ゆりあは呆然と立っているが、護衛はさすがに心得ているようで、衛兵と同じく頭を下げた。楽にしてください、と声をかけると、彼らは頭を上げる。
「王妃様に会いたいと騒いでいたみたいですが、なぜですか?」
「え、な、なぜって、王妃様がご病気だって言うから、私が治せると思って」
「……、今回の聖女は、病気を治せる能力を持っている、と解釈しても?」
「い、いえ……、その、怪我だけ、ですけど……っ、でも!私は聖女ですからっ、病気だってっ」
聖女だからって、何でもできる万能さは持ち合わせていない。ゆりあの言い方だと、恐らく調べたのだろう。そのプラスの能力は、怪我を治せるだけらしい。なら、本当にそれしかできない、というのに、彼女は納得していないようだった。
「護衛の方々は、なぜ止めないのですか」
「失礼ですが、女神様。彼女は聖女様ですよ?できないことがあるはずありません」
「おい、やめろ!お前、本当に人の話を聞かないな!?聖女は、瘴気の浄化と、もう一つ能力があるだけで万能ではないっていっただろう!申し訳ありません、女神様。止めたのですが……、その」
一方は止めて一方が暴走している、と見ていいらしい。そして、暴走した方がゆりあを焚き付けたととれる。護衛たちの襟元を見れば、暴走している護衛が第二、止めている護衛が第五の第四師団。なんか納得してしまった瑞姫である。
「東雲さん、どうして一方の言うことを聞いたんですか?私は、こちらの止めた方の言うことを信じますけど」
「え!?だ、だって、聖女は何でもできるっていう存在じゃないですか……っ。女神だってそうでしょうっ!?」
「そんな万能な存在、いるわけないでしょう。私だって、女神である前に人間です。当然得手不得手はありますし、他人の怪我も病気も、治せませんよ、私」
「……え?」
治せればいいと何度思ったことか。実際、怪我も病気も治せない。できるのは、病気の進行を食い止めることくらいだ。それも気休めである。
そして、ゆりあの言葉を聞いて、なぜこんな奇行に走ったか理解できた。ゆりあは、元々聖女の力が万能だと思い込んでいて、そこに、この護衛が同調したものだから、一緒になって暴走したのだ。もう一人の護衛が止めようとしたところで、難しいだろう。
まあ、その前に、ゆりあがこの世界での常識をどこまで頭に入れているか、だが。
「東雲さん、先触れ出しました?」
「え?さきぶれ?なんですか?」
「アポとった?」
「!え、とってないですけど、でも聖女だから大丈夫だと思って……」
「王侯貴族の枠からは外れていますが、最低限の礼儀、というか、貴族のルールは守らなければならないですよ。元の世界でも、先方にアポを取るのは常識ですが。まあ、あなたはまだ未成年ですし、学生ですから知らなくても無理はないですけど」
一つ、疑問が浮かぶ。聖女についているのは貴族だ。護衛もそうだが、侍女も。護衛一人が止めても聞かないのは、もしや侍女もそういうことを彼女に教えてないのか、止めなかったのか。それとも止めたが彼女が聞かなかったのか。わからないが、これは問題視するべき事ではないだろうか。
「女神様?こちらの世界では十五が成人ですよ?聖女様は、十六です。とっくに成人されております」
「東雲さん、あなたの世界、成人は何歳?」
「は、二十歳です」
あぁ、やっぱり、と瑞姫は頷いた。
「私の世界も成人は二十歳です。護衛の方、この世界の常識を、まだこちらに来て間もない東雲さんに押しつけないで。元の世界では、東雲さんはまだ親元の庇護下にあるんです。こちらでもまだ、誰かが彼女を先導し、正しい知識を与えてあげなければならない。それなのに間違った知識を植え付け、一緒になって暴走するとは。本来なら、そちらの方のように、止めねばならないのですよ」
「っ」
聖女は十六だから、とっくに成人だと、瑞姫を嘲るようにいう第二の護衛に、瑞姫はぴしゃりと言い返した。
「増長させる様なことを、よくも軽く口にできますね?それが聖女を奇行に走らせ、ひいては貴族たちからの評価を落とし、更には後見人であるリカルドの名を汚すことに繋がる。なぜこの世界の貴族であるあなたが、わからないのですか」
「っぐ……、それは……」
「王妃様に、そんなに会いたいのはなぜ?聖女を利用し、王妃の現状を探れとお家から言われたりしたのですか?」
「なっ、そ、そのようなことはありません!」
あ、嘘だ。瑞姫は確信した。彼はお家から王妃の現状を探れと言われたから、聖女を焚き付けたのだ。この護衛は駄目だ。瑞姫はため息を飲み込み、ゆりあに視線を戻す。
「東雲さん、あなたに聞くわ。あなたが重い病気にかかりました。弱って、栄養もちゃんととれないから肌もボロボロだし痩せこけている。――――その状態で、人に会いたいの?恥ずかしくない?」
「!そ、それ、は……」
「王妃様がどのような状態かは私も知りません。聖女の助力が必要であれば、陛下自ら頼みに来るでしょう。それまでは、こちらから会いに行くのはやめた方がよろしいですよ。いくら聖女でも、問題視される行動だと、貴族たちの目に映ると思います。それではあなたの評価が下がる。それでも会いたいと思うのであれば、……あなたの後見人であるリカルドに頼みました?」
「い、いえ。言ってない、です」
「では、リカルドに頼むとよいかと。直接言いにくいのであれば、手紙でもいいと思いますし。恐らく断られると思いますが、勝手に動くよりは、聖女が心配している、と言うのが伝わって印象は上がるんじゃないかと、ね」
「……、は、はい、そう、ですね」
自分のことを棚に上げて言うことでもないが。でも、聖女を会いに行かせるわけにはいかないのだ。犯人がちゃんと捕まるまでは。それに、王妃は順調に回復していると聞いているので、心配はいらない。まあ、言えないのだが。
「東雲さん、あなたの行動一つで、リカルドの評価が下がる。彼の顔に泥を塗りたくないなら、きちんと現実と向き合いなさい。取り返しのつかなくなる前に、きちんとこの国を知らなければ、何もできませんよ。もし、あなたが強行突破し、王妃様に会いにいっていたなら、その護衛たちはクビです」
「え?」
「王様が面会謝絶と命令を下したのです。それに逆らったとして、最悪、国家反逆罪を疑われても文句は言えませんよ」
例えではあるが、少し過剰に言っておいた方が今は、ゆりあのためになるだろう。
「そん、な……」
「ここはそういう世界です。気をつけなさい。……そちらの、止めてくださった方、名前は?」
「はっ。メラル・バーリンと申します」
瑞姫は少し驚いた。その名は、瑞姫の護衛候補だった一人だ。第五騎士団第四師団のバーリン伯爵家六男で、第二騎士団長セレネイズの末の弟。そして、シリウスが推薦するほどの者である。
「……言われてみれば……?騎士団長を少し若くした感じ?」
「ははっ、よく言われます」
なるほど、彼ならゆりあのことを導いてくれそうな感じである。先ほども止めていたようだし。
「とりあえず、今回のことはリカルドに報告しておきます。東雲さん、わからなければ、メラルさんを頼りなさいな。彼は信用するに値する方ですよ。しかし、今日は部屋にお戻りなさい」
「!……はい」
「御前、失礼いたします」
不服そうな顔をしながらもぺこり、と頭を下げたゆりあはその場を去った。その背を追ってメラルも去り、第二の護衛は、こちらを少し睨んでから去って行く。
「……今あれ、誰睨んだと思う?」
「恐らく、私だと思いますね」
「ふーん?……護衛失格だね。第二騎士団だったよね?」
「はい、そうです」
「ふーん」
どう考えても、あの行動は悪手だ。それがわからないわけがないだろう、あの第二騎士団の団員は。それに、聖女の能力のことも。あれは知ってて聖女を焚き付けたのだろう。
書物庫に行こうと思ったが、予定変更である。
第三騎士団には、やることあったら言ってくれれば、いつでも協力するよ、と手紙を出した。どうやら、瑞姫が第三騎士団を贔屓にしていると思われているらしい。というか、実際に贔屓だなんだとうるさいのが出てきた(らしい)ので(諜報員経由で聞いた)、頻繁に顔を出すのは控えようと言うことになった。騎士団に迷惑をかけるために顔を出しているわけじゃない。……全く、用があるから顔を出しているというのに、情報を読み間違える馬鹿が多いから困ったものである。それ以前に、第三騎士団の団員はメイズしか知らないが。
現在、瑞姫とフォリアは王宮の玄関口をのぞき込むように、柱の陰にいた。そんな二人を、ぎょっとした顔で侍女や侍従たちが通り過ぎていく。
「なんで駄目なんですかっ!?」
「そうだ。聖女様がわざわざ王妃様の元に足を運ぶと仰っておられるのだぞ」
「ですから」
聖女東雲ゆりあとその護衛二人が、王宮の玄関口で扉の警護にあたっている衛兵と口論になっていた。内容は、聖女が王妃様に会いたいから馬車を出せ、王妃様のご病気を治す、と。対して衛兵は、許可が下りていません、面会謝絶です、と。延々とそのやりとりが続いているのである。
「…………聖女って、病気治せるの?」
「過去にはそういう力を持った聖女様もお見えになったと聞いております。此度の聖女様がそうであるかは、わかりませんが」
「あー、能力がその時々で違うんだ」
「そうみたいですね」
あまり詳しいことは、フォリアでもわからないらしい。だが、伝わっているのは、聖人すべてにおいて共通して持つのは、瘴気を浄化する力。それにプラスして一つ、力があるらしい。病気を治せる人もいれば、怪我だけを治せる人、植物の成長を促せる、所謂緑の手を持った人もいたらしい。その時々で持つ能力が違うため、一概にこれ!とは言えないようだ。
「これさ……、私が出てかないと収まらない感じ?」
「……恐らくは、ですが。衛兵の態度から、まだそう時間はたってないと思います。殿下方を呼びに行ったとしても、まだ時間はかかるかと」
「このためだけに、シリウスたちを呼ぶのもね……。しかたないか……。私たちもここから出られないしね」
「ミズキ様の手を煩わせるとは、誠に遺憾ではありますが……」
頭が痛い、とフォリアは頭を抑える。瑞姫も同じ思いだ。大きいため息を飲み込み、しゃん、と背を伸ばすと歩き出した。
「東雲さん、こんなところで騒いで、皆さん驚いてますよ」
「!……え、神楽さん……」
「め、女神様……」
瑞姫の登場に、衛兵たちはほっと安堵の表情になり、頭を下げる。ゆりあは呆然と立っているが、護衛はさすがに心得ているようで、衛兵と同じく頭を下げた。楽にしてください、と声をかけると、彼らは頭を上げる。
「王妃様に会いたいと騒いでいたみたいですが、なぜですか?」
「え、な、なぜって、王妃様がご病気だって言うから、私が治せると思って」
「……、今回の聖女は、病気を治せる能力を持っている、と解釈しても?」
「い、いえ……、その、怪我だけ、ですけど……っ、でも!私は聖女ですからっ、病気だってっ」
聖女だからって、何でもできる万能さは持ち合わせていない。ゆりあの言い方だと、恐らく調べたのだろう。そのプラスの能力は、怪我を治せるだけらしい。なら、本当にそれしかできない、というのに、彼女は納得していないようだった。
「護衛の方々は、なぜ止めないのですか」
「失礼ですが、女神様。彼女は聖女様ですよ?できないことがあるはずありません」
「おい、やめろ!お前、本当に人の話を聞かないな!?聖女は、瘴気の浄化と、もう一つ能力があるだけで万能ではないっていっただろう!申し訳ありません、女神様。止めたのですが……、その」
一方は止めて一方が暴走している、と見ていいらしい。そして、暴走した方がゆりあを焚き付けたととれる。護衛たちの襟元を見れば、暴走している護衛が第二、止めている護衛が第五の第四師団。なんか納得してしまった瑞姫である。
「東雲さん、どうして一方の言うことを聞いたんですか?私は、こちらの止めた方の言うことを信じますけど」
「え!?だ、だって、聖女は何でもできるっていう存在じゃないですか……っ。女神だってそうでしょうっ!?」
「そんな万能な存在、いるわけないでしょう。私だって、女神である前に人間です。当然得手不得手はありますし、他人の怪我も病気も、治せませんよ、私」
「……え?」
治せればいいと何度思ったことか。実際、怪我も病気も治せない。できるのは、病気の進行を食い止めることくらいだ。それも気休めである。
そして、ゆりあの言葉を聞いて、なぜこんな奇行に走ったか理解できた。ゆりあは、元々聖女の力が万能だと思い込んでいて、そこに、この護衛が同調したものだから、一緒になって暴走したのだ。もう一人の護衛が止めようとしたところで、難しいだろう。
まあ、その前に、ゆりあがこの世界での常識をどこまで頭に入れているか、だが。
「東雲さん、先触れ出しました?」
「え?さきぶれ?なんですか?」
「アポとった?」
「!え、とってないですけど、でも聖女だから大丈夫だと思って……」
「王侯貴族の枠からは外れていますが、最低限の礼儀、というか、貴族のルールは守らなければならないですよ。元の世界でも、先方にアポを取るのは常識ですが。まあ、あなたはまだ未成年ですし、学生ですから知らなくても無理はないですけど」
一つ、疑問が浮かぶ。聖女についているのは貴族だ。護衛もそうだが、侍女も。護衛一人が止めても聞かないのは、もしや侍女もそういうことを彼女に教えてないのか、止めなかったのか。それとも止めたが彼女が聞かなかったのか。わからないが、これは問題視するべき事ではないだろうか。
「女神様?こちらの世界では十五が成人ですよ?聖女様は、十六です。とっくに成人されております」
「東雲さん、あなたの世界、成人は何歳?」
「は、二十歳です」
あぁ、やっぱり、と瑞姫は頷いた。
「私の世界も成人は二十歳です。護衛の方、この世界の常識を、まだこちらに来て間もない東雲さんに押しつけないで。元の世界では、東雲さんはまだ親元の庇護下にあるんです。こちらでもまだ、誰かが彼女を先導し、正しい知識を与えてあげなければならない。それなのに間違った知識を植え付け、一緒になって暴走するとは。本来なら、そちらの方のように、止めねばならないのですよ」
「っ」
聖女は十六だから、とっくに成人だと、瑞姫を嘲るようにいう第二の護衛に、瑞姫はぴしゃりと言い返した。
「増長させる様なことを、よくも軽く口にできますね?それが聖女を奇行に走らせ、ひいては貴族たちからの評価を落とし、更には後見人であるリカルドの名を汚すことに繋がる。なぜこの世界の貴族であるあなたが、わからないのですか」
「っぐ……、それは……」
「王妃様に、そんなに会いたいのはなぜ?聖女を利用し、王妃の現状を探れとお家から言われたりしたのですか?」
「なっ、そ、そのようなことはありません!」
あ、嘘だ。瑞姫は確信した。彼はお家から王妃の現状を探れと言われたから、聖女を焚き付けたのだ。この護衛は駄目だ。瑞姫はため息を飲み込み、ゆりあに視線を戻す。
「東雲さん、あなたに聞くわ。あなたが重い病気にかかりました。弱って、栄養もちゃんととれないから肌もボロボロだし痩せこけている。――――その状態で、人に会いたいの?恥ずかしくない?」
「!そ、それ、は……」
「王妃様がどのような状態かは私も知りません。聖女の助力が必要であれば、陛下自ら頼みに来るでしょう。それまでは、こちらから会いに行くのはやめた方がよろしいですよ。いくら聖女でも、問題視される行動だと、貴族たちの目に映ると思います。それではあなたの評価が下がる。それでも会いたいと思うのであれば、……あなたの後見人であるリカルドに頼みました?」
「い、いえ。言ってない、です」
「では、リカルドに頼むとよいかと。直接言いにくいのであれば、手紙でもいいと思いますし。恐らく断られると思いますが、勝手に動くよりは、聖女が心配している、と言うのが伝わって印象は上がるんじゃないかと、ね」
「……、は、はい、そう、ですね」
自分のことを棚に上げて言うことでもないが。でも、聖女を会いに行かせるわけにはいかないのだ。犯人がちゃんと捕まるまでは。それに、王妃は順調に回復していると聞いているので、心配はいらない。まあ、言えないのだが。
「東雲さん、あなたの行動一つで、リカルドの評価が下がる。彼の顔に泥を塗りたくないなら、きちんと現実と向き合いなさい。取り返しのつかなくなる前に、きちんとこの国を知らなければ、何もできませんよ。もし、あなたが強行突破し、王妃様に会いにいっていたなら、その護衛たちはクビです」
「え?」
「王様が面会謝絶と命令を下したのです。それに逆らったとして、最悪、国家反逆罪を疑われても文句は言えませんよ」
例えではあるが、少し過剰に言っておいた方が今は、ゆりあのためになるだろう。
「そん、な……」
「ここはそういう世界です。気をつけなさい。……そちらの、止めてくださった方、名前は?」
「はっ。メラル・バーリンと申します」
瑞姫は少し驚いた。その名は、瑞姫の護衛候補だった一人だ。第五騎士団第四師団のバーリン伯爵家六男で、第二騎士団長セレネイズの末の弟。そして、シリウスが推薦するほどの者である。
「……言われてみれば……?騎士団長を少し若くした感じ?」
「ははっ、よく言われます」
なるほど、彼ならゆりあのことを導いてくれそうな感じである。先ほども止めていたようだし。
「とりあえず、今回のことはリカルドに報告しておきます。東雲さん、わからなければ、メラルさんを頼りなさいな。彼は信用するに値する方ですよ。しかし、今日は部屋にお戻りなさい」
「!……はい」
「御前、失礼いたします」
不服そうな顔をしながらもぺこり、と頭を下げたゆりあはその場を去った。その背を追ってメラルも去り、第二の護衛は、こちらを少し睨んでから去って行く。
「……今あれ、誰睨んだと思う?」
「恐らく、私だと思いますね」
「ふーん?……護衛失格だね。第二騎士団だったよね?」
「はい、そうです」
「ふーん」
どう考えても、あの行動は悪手だ。それがわからないわけがないだろう、あの第二騎士団の団員は。それに、聖女の能力のことも。あれは知ってて聖女を焚き付けたのだろう。
書物庫に行こうと思ったが、予定変更である。
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