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20 オルカサイド その2

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「すまない・・・相談があるんだが、少しいいだろうか・・・・」

青白い顔で部室へやってきたのは、先日リモーネに紹介されたリコルド・セレーノだった。
彼が俺やランチアに相談があるとするなら、それはリモーネに関することだろう。
俺とランチアは顔を見合わせると、こくりと頷いた。
最近、リモーネは放課後クラスの女子と話し込むことが多く、部室に遅れてやってくる。
彼女が来るまでに話を聞けば問題ないだろう。

「話を聞きましょう。座って下さいセレーノ様」
「僕に敬語はいらないよ。リコルドでいい。君にはものすごい迷惑をかけているし・・・」
「迷惑?俺はあんたに何もされてないが?」

俺の言葉に、リコルドが苦笑した。

「僕が直接迷惑をかけたわけではないけど・・・アルのせいで君に被害が出ているからね」
「それはあんたが謝る筋合い無いだろ」
「乳兄弟っていうのは・・・ほぼ身内みたいなものなんだよ。本当に、馬鹿な弟分がすまない・・・」

深く頭を下げられて、俺は慌てた。貴族にそんなことされると逆に困る。

「いや、別に俺は今んとこ何もしてないし!第二王子だって、誠実じゃないか。ちゃんとリモーネに新しい婚約者を紹介しようとしてるんだから」
「あー・・・いや~・・・それが・・・・・」

リコルドの目が泳ぐ。ソワソワと落ち着きなく視線をさまよわせた彼は、やがて覚悟を決めたのか話を始めた。――とても、衝撃的な話を。





「・・・うっそだろ・・・信じらんねー・・・」
「アルジェント様って、情操教育失敗されてるのかしら・・・」

にわかに信じがたい真実を語られた俺たちは、呆然とする。
第二王子、拗らせすぎだろ!
やっぱり俺の見立ては正しかった。ヤツのあの執着は、シスコンなんかではなかった。
リモーネを、唯一の女として溺愛していたのだ。

「・・・じゃあこの偽装恋人役も終わりだな。つっても、何もしてねーけど」

複雑な思いを抱えて俺がそう言うと、リコルドが気まずげに切り出した。

「実は、そのことなんだが・・・。もうしばらくの間、リモーネの恋人役を引き受けてもらえないだろうか」
「は?何でだ?」
「・・・アルからきちんとリモーネに告白させたいんだ。今、偽装だったとバラしたら、あいつの危機感を煽ることができなくなる。ただでさえヘタレなのに、ライバルがいなくなったらまたグズグズと悩みだすに決まってる」
「うわ、あんたも辛辣・・・」

すると、これまで黙って話を聞いていたランチアが口を開いた。

「・・・そう上手くいくかなぁ?リモーネもアルジェント様と同じくらい鈍感だから、相当はっきり言わないと伝わらないと思うけど・・・アルジェント様、ガツンといけるかしら・・・」
「・・・・・」
「・・・・・」

その後リモーネがやってくるまで、俺たち三人はこの大きな問題に悩み続けたのだった。



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