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18.ヘルミナとの戦い
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翌朝、目が覚めると、股間がぬるぬるした暖かいものに触れられているようだった。
じゅるるる♡……ちゅぱっ♡ちゅぱっ♡……れろ♡れろ♡……
目を開けると、ミローネとイーシャ、スーネリアの三人がベロベロと俺の肉棒を舐めている。
とても嬉しいし、興奮する。だが、早速スーネリアからの影響を受けているようである。
「おはよう」
声をかけると、熱心に肉棒を舐めていた三人が俺の方へと向き直る。
「おはよう」
「おはよう」
「おはようございます」
朝の挨拶を終えると、ミローネはすぐに肉棒を舐めるのを止めて、俺の顔の方へとやってきて、キスをした。
ちゅっ♡……ちゅるちゅる♡……ちゅぱっ♡ちゅぱっ♡……
朝一のキスとは思えない、舌を絡ませた濃厚なキスだ。ミローネも、肉棒を舐めていて興奮したのかもしれない。
ちゅぱっ♡ちゅぱっ……ちゅっ♡んっ♡
ミローネが口を離すと、すぐにイーシャが俺にキスをする。
ちゅうっ♡……ぢゅるぢゅる♡……ぢゅうぅぅぅ♡……
ミローネに対抗してなのか、イーシャのキスも激しい。
ぢゅるぢゅる♡……ちゅうっ♡
「んふっ♡」
イーシャが口を離したと同時に、スーネリアのおしゃぶりの激しさが増した。
じゅるるる♡じゅぼっじゅぼっ♡じゅるっじゅるっ♡
タイミングを見計らっていたのか、一気に俺の子種を搾りだそうとしている。俺は我慢せずに、スーネリアのお口の中に発射した。
ドビュルルルル! ビュルルル! ビュルッ!
「んんっ♡」
じゅるるる♡……ごくん♡
俺が出した子種をしっかりとお口で受け止めたスーネリアは、しっかりとそれを飲み干したようだ。
「それじゃあ、しましょうか」
セックスするのが、当然のようにミローネは言う。
俺はミローネの誘いを断るはずもなく、ミローネを抱いた。
その後、ミローネとスーネリアが出勤した後でイーシャも抱いた。
また朝から忙しない一日が始まったのだ。
ミローネとスーネリアは冒険者ギルドへ、俺とイーシャは冒険者ギルドへ寄ってから、町の外へレベル上げに向かった。
今日は地獄のレベル上げだ。しかも、イーシャの魔法の援護なしである。むしろ、俺がイーシャの補助もしないといけないだろう。そんな中で、自分と同等か格上の魔物を相手にしながら戦闘しないといけないなんて、何の罰ゲームなのだろうか。
「はあ、今日は魔法使っちゃダメなんですよね」
イーシャも普段よりどこか憂鬱そうだ。
「イーシャ、無理に俺に付き合ってくれなくてもいいからな。無理せずに、外で狩りをしていてくれてもいいんだぞ」
「いえ、ミローネさんの言う通り、私も近接戦闘が出来るようにならないといけないと思うんです。そうしないと、アキトさんのパーティーメンバーにふさわしくありませんから」
イーシャは真剣な顔つきで杖をギュッと握っている。
そんな事ないと思う、と言おうとして、止めた。ここがゲームだったら、得意な事に特化する方がいいと思うが、死んだら終わりの現実で、魔法が使えませんから死にましたでは、シャレにならない。
俺が側にいたとしても、俺の力では確実に守ってやれる保証もない。生存確率は少しでも上げておいた方がいいだろう。
「無理はするなよ」
「はい」
ただ、そのレベル上げ自体、生存確率が高くなさそうなのは何とかならないだろうかとは思う。この無茶なレベル上げはいつまで続くのだろうか。
「右から来てるぞ!」
「は、はい!」
イーシャは近接戦闘に関しては、何のギフトも持っていない。
力のステータスが低い訳ではないので、戦えない訳ではない。
ただ、近接戦闘をする場合、スキルの補助があるから、魔物と上手く戦闘を行える。
曲がりなりにも異世界で初めて戦闘を行った俺が魔物と戦えるのは、スキルの補助の影響が大きい。
スキルが無くても経験があれば戦えるのかもしれないが、イーシャは今日初めて魔物と実践で近接戦闘を行っている。
本来なら、訓練をしてから挑むべきだろう。それに、最初は格下の魔物と戦って慣らすべきだと思う。
つまり、何が言いたいかというと、今日初めて同格の魔物とぶっつけ本番で近接戦闘を行ったイーシャがまともに戦える訳がないのだ。
「きゃあ!」
魔物の一撃を受けて、イーシャが吹っ飛ぶ。
いま戦っている敵を斬り倒し、急いでイーシャの元へと駆けつけた。
すぐにイーシャを抱えて魔物から距離をとり、回復魔法を使う。
「うう、すみません」
ダンジョンに入ってしばらくこんな調子だ。これがまだ数時間は続くとなるとかなり厳しいのではないだろうか。
「やっぱり、止めておくか?」
「いえ、最後までやらせてください」
イーシャの意思の力は随分強いようである。
「そうか、じゃあもう一度だ」
「はい」
イーシャは何度も吹っ飛ばされながら、遂に魔物を切り伏せた。
――ホブゴブリンを倒しました。経験値を500入手しました。
「やりました」
近接戦闘で初めて魔物を倒したイーシャはとても嬉しそうだ。
『大分イーシャも慣れてきたようですね。それでは、赤い箱を使いましょうか』
もはやレベル上げの定番になった赤い箱。
ゲームなら効率よくレベルをあげる良いアイテムとなるのであろうが、現実に魔物をおびき寄せるアイテムを使ってレベルを上げるなんて、気が狂っていると思われてもおかしくない。
イーシャはまだ一体倒しただけなのだが、早くないか?
『沢山の魔物を相手にした方が早く成長出来ますよ。それにこれまでの戦闘を見ましたけど、アキトさんの力なら十分サポート可能だと判断しました。いざとなれば命令を使えばいいでしょう』
……そうか、わかった。ここでごねても、命令を使って赤い箱を使わされるのだ。ミローネの言葉に大人しくしたがっておこう。それに、ミローネが出来ると言うのなら、きっと出来るのだろう。
「イーシャ、今から赤い箱を使う。準備はいいな?」
「っ……はい、わかりました」
俺の言葉に、イーシャは力強い調子で答えた。イーシャの方が覚悟は出来ていたようだ。
俺は赤い箱を開けた。
………………
疲れた。その一言に尽きる。
ダンジョンでのレベル上げを終えて、俺達は町へと戻っているところだ。
体力はすぐに回復する俺だが、精神的な部分はそうはいかない。魔物が大挙して押し寄せて来る中、イーシャをフォローしながら戦うのは緊張の連続で、精神を疲弊したのである。
「もうすぐ襲われるかもしれないのに、こんな調子で大丈夫なんでしょうか?」
イーシャは心身ともに疲れたようで、足取りが重い。
確かに、今ヘルミナに襲われるのはあまりよろしくない状態である。ただ、基本はイーシャが聖結界を張ってミローネが来るまでの時間稼ぎをするだけのはずだから、作戦通りにいけば問題はないはずだ。
『アキトさん、ヘルミナが冒険者ギルドを出ました。どうやら、今からアキトさん達を襲うようです』
ミローネから、ヘルミナが動き出したと報告があった。
「イーシャ、疲れているとは思うが、ヘルミナが何時襲ってきてもいいように警戒していてくれ」
「はい、わかりました」
ミローネから遠話があったことを隠しながら、イーシャに警戒するよう促して、俺達は町へと向かう。
だが、数分後。
『不味い事になりました。私がそちらに駆けつけるのは難しそうです』
ミローネが少し慌てた口調で話しかけてきたのだ。
どう言うことだ?
『ヘルミナに魅了されている女冒険者達で囲まれてしまいました。恐らく、私の足止めをするつもりでしょう。すみません、これまでヘルミナが女冒険者達を動かした事がなかったので予想出来ませんでした』
振り切ってくることは出来ないのか?
『今も振り切ろうとしているのですが、彼女達は違法なポーションで強化しているようで、振り切れません。町中で攻撃する訳にもいきませんし、時間をかければ振り切れると思いますけど、そんな事をしていたらアキトさんとヘルミナの戦いに間に合いません』
おいおい、じゃあどうするんだ? ヘルミナは強いんだろう?
『仕方ありません。次善の策を使います。この様子だとヘルミナはアキトさん達を女冒険者達に監視させていた可能性が高いです。恐らく後数分もせずにそちらに着くでしょう。私が――』
「アキトさん、何かが近づいて来てます!」
ミローネの遠話を遮るように、慌てた声でイーシャは言った。
イーシャが指を差す方を見ると、何かが土埃をあげながらこちらに向かって来ている。
それが近づくに連れて、受付嬢の姿をした赤い髪の人間であることがわかった。間違いなくヘルミナだ。
『ヘルミナも違法ポーションをっ。少しだけ時間を稼いでください』
ミローネの遠話が途絶え、すぐそこにヘルミナが近づいて来ている。
「イーシャ、聖結界を」
「はい」
イーシャが聖結界を発動するのと同時に、ヘルミナが俺達の五メートル程手前で止まった。
「やあやあ、お二人さん仲がいいね」
ヘルミナはいつもの受付嬢姿で、とても今から戦闘を行うようには見えない。
「ヘルミナさん? どうしてこんな所に?」
「あはっ、ちょっと野暮用があってさ」
ヘルミナはニヤニヤとこちらを見ている。
「野暮用ですか?」
「うん、野暮用。二人とも最近ミローネと仲がいいよね。それってさ、ワタシにとっては凄い目障りなんだよ、だからさ」
ヘルミナが身体に闘気を纏う。
「だからさっ、死んでよ!」
ミローネ、ヘルミナは俺達を殺そうとはしないって言ってなかったか。
闘気を纏ったヘルミナが俺に向かって突撃してくる。イーシャの聖結界が発動しているのに、お構いなしだ。
バチィ!
聖結界が、ヘルミナの拳を防ぐ。
「あはは、安心してよ、本当に殺したりしないよ。ワタシが気が済むまでボコボコにするだけだからさ。イーシャはアキトをボコボコにした後で、ゆっくり可愛がってあげるよ」
気が済むまでボコボコにされたら、結果的に死にませんかね。やばいよ、ヘルミナの目。完全にいっちゃってるよ。
「あはは、あははははははは!」
バチィ! バチィ! っとヘルミナは聖結界に向かって拳を叩きつける。拳からは血が出ているのに痛みなんて無いかの様に叩きつけている。
「ううぅ」
聖結界を殴られる度にイーシャのMPは減っていき、いずれ聖結界は維持出来なくなる。
そうなれば、目の前に迫るヘルミナを止める方法はない。
本来なら、ミローネが駆けつけるまでの間だけでよかったのだけれど。
イーシャの上部に表示されているMPを見る限り、このペースだと、もう二分も持たない。
ミローネ、あとどれ位かかる?
『五分くらいです』
三分は最低でも聖結界なしで耐えないといけないのか。
「ほらほら、そんな結界の中に隠れてないで出て来なよ」
ミローネ、命令を使ってくれ。それなら、普段の俺よりは何とかなるはずだ。
『……わかりました。その前に以前渡した金色のポーションを飲んでください。力と速さが1.5倍になります。それと闘神闘気を使ってください』
わかった。俺は急いで金色のポーションを取り出して、一気に飲む。
身体中から力が湧いてくる、不思議な感覚だ。
それから、闘神闘気を発動する。
「イーシャ、俺が合図したら、聖結界を解除しろ」
「ううぅ、でも、それじゃあアキトさんが」
「大丈夫だ。俺を信じろ」
何の勝算もないが、今俺が前に出ないと、活路は開けない。その意思が伝わったのか、イーシャは頷いた。
「わかりました」
『行きます。命令:ヘルミナの攻撃を全力で避けなさい』
命令が発動し、イーシャのMPが2割を切ったところで、イーシャに聖結界を解くように言った。
「今だ」
「はい」
イーシャが聖結界を解除し、ヘルミナが今まで殴っていた聖結界が突然消えた事で、体勢を崩した。
その隙を見逃さず、俺は殴りかかった。
「あはっ、ようやく観念したんだ」
俺の攻撃はヘルミナに受け止められてしまう。
そのまま、ヘルミナが俺に拳を繰り出す。
スキルとポーションの効果でステータスが三倍になった俺の身体は、ギリギリでヘルミナの攻撃を回避した。
「へえ、レベルが低い割には上手く避けるじゃん。さっき飲んだ薬が良い薬だったのかな、それともいいギフトを持ってるのかな?」
ただ、ヘルミナはまだ余裕の表情をしていて、全力を出していないのが明らかだ。
「あははっ、どんどん行くよ」
笑いながらヘルミナが俺に殴りかかってくる。
目でギリギリ追えるかどうかという速度のパンチを、自動操縦の体はかろうじて体をひねって躱した。
ヘルミナはどんどんパンチやキックを繰り出してきたけど、俺の体は何とか躱し続けている。
このままヘルミナが全力を出さずに遊んでくれているなら、三分くらいは持つかも。
僅かな希望を感じ始めたその時、ヘルミナがにやりと笑った。
「じゃあ、これはどうかな? 『分裂掌』」
僅かに感じていた希望はまやかしだったようで、ヘルミナの拳が四つに分裂して、俺の体に迫る。
俺の身体はその三つを躱したが、一つ避けきる事が出来ずに、腹に直撃した。
「ぐあっ」
俺の身体は吹っ飛ばされ、地面を転がる。視界が目まぐるしく変わり何が起こったのか把握出来なかったが、自動制御中の身体は、上手く受け身を取って体勢を立て直した。
「何だ、今のを避けられないんじゃ興ざめだね」
ヘルミナはもう俺の攻略方を見つけてしまったようで、冷めた目で俺を見ている。
確かに今の一撃で俺のHPは3割ほど無くなっている。直撃を食らえば即死、全部を避けきれない以上、その内死ぬ。
……だけど、受付嬢に殺されるのなら悪くないか。いや、せめて死ぬのなら腹上死がいい。
「アキトさん!」
っ! 何を馬鹿な事を考えてるんだ。俺はイーシャの事を一生面倒見るんだろ。それにまだヘルミナとセックスしてないぞ。目の前にやってもいい受付嬢がいるのに、死んでたまるか。
「俺は絶対にヘルミナとセックスするんだ!」
「あはっ、ごめんね。アタシ、男は対象外なんだよね。つまんないし、次で終わりにするね」
ヘルミナが俺に止めを差すために動き出す。
俺はイーシャに手で聖結界をはるように指示して、全力で逃げた。
「はっ?」
「どうした? 俺を殺すんじゃなかったのか?」
時間を稼げばいいんだから、無理に戦う必要はないんだ。
イーシャは指示通りすぐに聖結果を発動したし、この状況なら俺を追ってくるはずだ。
「ぶっ殺す」
案の定、ヘルミナは俺を追いかけてきた。
だけど、俺とヘルミナの距離は中々縮まらない。
ヘルミナの攻撃を避けていたときから感じていたことだが、ステータスで一番差がないのは速度差だと感じていた。
その感覚は当たっていたようだ。
最初に俺たちの前までやってきた時の圧倒的な速度はもう出せていない。
「うっざいなぁ。いますぐ止まれば、半殺しで許してあげるよ?」
「はははっ、そんな言葉信じるわけないだろ」
俺はいま、受付嬢と追いかけっこをしている。
もう少し、キャッキャうふふ的な感じがよかったけどな。
移動系のスキルを駆使して、俺は逃げる。
ヘルミナもスキルを使って俺を追ってくる。
俺が持っているスキルの方が性能が高いのか、スキルを使っている間は距離が縮まらない。
だけど、スキルにはクールダウンが必要で、ただ走っている間は距離が縮まっていた。
徐々に徐々に、ヘルミナとの距離は縮まってきている。
そして、俺はヘルミナに捕まった。
「あははっ、追いついたあ!」
俺に追いついたヘルミナは、分裂拳を繰り出してくる。
「ぐふっ、がはっ」
避けきれず、二発貰って吹っ飛んで、地面を転がる。俺のHPは残り1割を切った。
「あはっ、これで終わりだね」
ははは、本当にやばいな。
でも、そろそろじゃないのか、ミローネ?
『はい、準備ができました! 行きますよ!』
『命令解除』
『憑依』
ミローネが何やら言葉を発すると、俺の身体が動かせなくなった。
「死になよ!」
ヘルミナが俺に向かって突っ込んでくる。
俺の身体は、俺の意思とは関係なく動き、ヘルミナの拳にカウンターを合わせる形で、拳を入れた。
「ぐうっ」
今度はヘルミナの方が、吹っ飛んで、地面を転がった。
「へえ、これがアキトさんの、男の人の身体の感覚ですか」
俺が何やら喋っている。何だ、俺は何も喋ろうとしてないぞ。
『ふふっ、ちょっと身体をお借りしました』
ミローネの声が頭で響いている。身体を借りただって?
『はい、本来は私がヘルミナの相手をするはずだったのですけど、それが出来なかったので、アキトさんの身体を借りて相手をする事にしました』
つまり、今俺の身体を動かしているのは、ミローネと言う事か?
『そういう事です』
「あはっ、あははは! 力を隠してたって訳だ。本当にむかつくね。でも、こっちが全力を出してると思ったら大間違いだよ」
ヘルミナが立ち上がり、こちらを睨んでいる。
ヘルミナは口から出ている血を拭き取ると、再び俺に向かって殴りかかってくる。
だが、俺(ミローネ)はヘルミナの拳を難なく躱す。ヘルミナが繰り出す攻撃を全て避けた。
ミローネが憑依したのはわかったけど、俺の身体だろ? さっきまで苦戦していたヘルミナの攻撃をこんな簡単に躱せるのか?
『憑依は、憑依した相手に私のレベルの半分とスキルを上乗せします。つまり、今のアキトさんの身体は、アキトさんのレベル35と私のレベ70の半分の35を足した、レベル70の身体なのです』
いや、そんな方法があるなら、最初からそれで戦えばよくないか。
『いえ、色々と制約があるので、私自身が戦って済むのなら、それに越したことはなかったのですよ』
俺(ミローネ)の拳がヘルミナの腹を捕らえる。
「ぐっ」
ヘルミナは苦悶の表情を浮かべて、距離を取った。
「その程度ですか?」
「は、はあ? 何調子乗っちゃってるの? ……あはは、本気で殺す」
俺(ミローネ)の挑発にヘルミナは更に闘気を膨らまし、赤い闘気に包まれた。
「あはっ、謝るなら今の内だよ? 今なら半殺しで許してあげるよ」
何か滅茶苦茶強くなった気配があるけど、大丈夫なのかミローネ?
『闘気爆発ですね。闘神闘気の下位互換の技です。今のこの身体はヘルミナのレベルを上回っている上に、闘神闘気、ポーションの力も上乗せされています。負ける要素はありません』
いや、それでもわざわざ挑発しなくても。
『ヘルミナには突っ込んで来て貰った方が都合がいいんですよ』
そう言って、ミローネは更なる挑発の言葉を重ねた。
「どうした? 殺すのなら早く殺して見ろよ、口だけか?」
「……ぶっ殺す!」
ヘルミナは何やら腕に闘気を溜め、こちらに向かってその闘気を飛ばして来た。
俺(ミローネ)はその攻撃を難なく躱すが、ヘルミナはこちらに近づいて来ずに遠距離攻撃に徹している。
さっきまでのように突っ込んでくると思ったけど、そうでもなかったな。
『冷静ですね。闘気爆発を使いましたけど、こちらとの力の差を冷静に分析したのでしょう。突っ込めば先ほどの二の舞になると考えたのかもしれません。それと、こちらの力の上昇が一時的なものだと考えているのかもしれません』
こちらのスキルの効果切れを狙ってると?
『はい、普通強力なスキルには何かしらの制限があります。闘神闘気も15分程度しか持ちませんし、私の憑依も同じく15分しか持ちません。ポーションもそうです。そう言った時間の制限があると考えて、時間稼ぎに出ているのかもしれません』
「あははっ! さっきまでの威勢はどうしたのさ!」
ヘルミナはこちらに向かって、どんどん闘気を飛ばしてくる。
その割には、ヘルミナはかなりこちらに攻撃して欲しそうだが?
『誘っているのでしょう。こちらが近づいた所に最大級の闘気技をぶつけて、一気にケリを付けるつもりでしょう。こちらが警戒して近づいて来なければ、それでよし。お互いの強化したスキルが解除されれば、ヘルミナの方が有利ですから』
完全にキレてるように見えたけど、そんな冷静に戦況を判断してたのか。どうするんだ? こちらに打つ手はあるのか?
『突っ込みます』
俺(ミローネ)はヘルミナに向かって突進する。
「あはっ、引っかかったね!」
ヘルミナは待ってましたと言わんばかりに、両手を付きだしてこちらに闘気の塊を放出した。
その闘気の塊が、ヘルミナに突進していた俺(ミローネ)に直撃する。
視界が真っ白に染まり、当たったと思ったのだが、身体に衝撃はやってこなかった。
いや、次の瞬間には右手に感触が伝わってきた。
「ぐふぅぅっ!」
視界が晴れると、俺(ミローネ)に腹を殴られて、くの字に折れ曲がったヘルミナの姿が見えた。
俺(ミローネ)はヘルミナに追撃をしかけ、一気に拳を浴びせる。
「がはっ、がっ、なんでっ、ぐうぅっ、がああっ、どこにっ、ぐうっ、こんなっ、ちからがっ」
ヘルミナは瞬く間にボコボコにされていく。
「これで終わりです」
「がはぁっ!! ……そんな……ワタシが……ま……」
最後に思いっきり腹を殴られて、ヘルミナはだらりと拳の上で動かなくなった。どうやら、気を失ったようだ。
先ほどまで、あれ程脅威に感じていたヘルミナが、ミローネの手であっさりと制圧されてしまった。
これでヘルミナの脅威は去ったわけだが、俺にはさっきのヘルミナからの攻撃を防いだ方法が気になっていた。
さっきはどうやって、ヘルミナの攻撃を防いだんだ?
『アキトさんの闘人スキルには最強の防御スキル、闘神障壁があるじゃないですか。自分のスキルなのに忘れたんですか?』
ああ、そう言えば、俺のスキルも使えるんだったな。いや、あのスキルって使いどころが難しいんだよな。
『ふふっ、ちゃんと使えるようにしないと駄目ですよ』
分かってるよ。それにしても、ミローネは凄いな。いきなり俺のスキルまで使いこなすなんて。
『それは経験が違いますからね。アキトさんも経験を積めば出来るようになりますよ。それに私の力はそこまで凄くありません。本来の私の力はヘルミナより少し強いくらいですから』
いや、それは充分に凄いと思うけど。
『さあ、ヘルミナが気を失っている間に、拘束してしまいましょう』
俺(ミローネ)は収納魔法から、拘束具を取り出し、ヘルミナを後ろ手に拘束し、両脚も腕の拘束具と鎖で繋いで拘束した。口にも口枷を噛ませている。
『これでいいでしょう。このまま町に戻る訳にはいきませんから、外で相手をするしかありませんね。野営の道具は持っていますよね?』
ああ、持ってるぞ。
『わかりました。見張りの為に私とスーネリアも仕事が終わり次第そちらに向かいます。ヘルミナが目を覚ましたら、ヘルミナの相手をして下さい。ヘルミナはスーネリアよりも激しくやっちゃいましょう。もう、徹底的にやっちゃって下さいね』
ああ、わかった。けど、自分を殺そうとした相手とヤらないといけないとか、気が重いな。
『大丈夫です。ヘルミナの姿を見て下さい』
ミローネに言われて、ヘルミナを見る。口にはボールギャグがはめられていて、両手が後ろ手に拘束具で固定されていて、両手に付けられた枷と鎖で繋がっており、脚は真っ直ぐ伸ばすことが出来なさそうだ。そして、ヘルミナは受付嬢姿である。
俺は、憑依中で俺の意思には反応しないはずの肉棒がギンギンになるのを感じた。
『ふふっ、ド変態っぷりは健在ですね。それでは私は戻ります』
『憑依解除』
ミローネが言葉を発すると、俺に感覚が戻ってきて、思わず倒れ込みそうになった。
「アキトさん、大丈夫ですか?」
いつまにかやって来ていたイーシャが、心配そうにしている。
「ああ、大丈夫だ。イーシャのおかげで助かったよ」
本当にイーシャがいなかったら、死んでたかもしれない。
「えへへ、そうですか。うれしいです」
「後、ヘルミナを治療してやってくれ」
「はい、わかりました」
ヘルミナの治療をイーシャに任せて、俺は野営の準備を始めた。
じゅるるる♡……ちゅぱっ♡ちゅぱっ♡……れろ♡れろ♡……
目を開けると、ミローネとイーシャ、スーネリアの三人がベロベロと俺の肉棒を舐めている。
とても嬉しいし、興奮する。だが、早速スーネリアからの影響を受けているようである。
「おはよう」
声をかけると、熱心に肉棒を舐めていた三人が俺の方へと向き直る。
「おはよう」
「おはよう」
「おはようございます」
朝の挨拶を終えると、ミローネはすぐに肉棒を舐めるのを止めて、俺の顔の方へとやってきて、キスをした。
ちゅっ♡……ちゅるちゅる♡……ちゅぱっ♡ちゅぱっ♡……
朝一のキスとは思えない、舌を絡ませた濃厚なキスだ。ミローネも、肉棒を舐めていて興奮したのかもしれない。
ちゅぱっ♡ちゅぱっ……ちゅっ♡んっ♡
ミローネが口を離すと、すぐにイーシャが俺にキスをする。
ちゅうっ♡……ぢゅるぢゅる♡……ぢゅうぅぅぅ♡……
ミローネに対抗してなのか、イーシャのキスも激しい。
ぢゅるぢゅる♡……ちゅうっ♡
「んふっ♡」
イーシャが口を離したと同時に、スーネリアのおしゃぶりの激しさが増した。
じゅるるる♡じゅぼっじゅぼっ♡じゅるっじゅるっ♡
タイミングを見計らっていたのか、一気に俺の子種を搾りだそうとしている。俺は我慢せずに、スーネリアのお口の中に発射した。
ドビュルルルル! ビュルルル! ビュルッ!
「んんっ♡」
じゅるるる♡……ごくん♡
俺が出した子種をしっかりとお口で受け止めたスーネリアは、しっかりとそれを飲み干したようだ。
「それじゃあ、しましょうか」
セックスするのが、当然のようにミローネは言う。
俺はミローネの誘いを断るはずもなく、ミローネを抱いた。
その後、ミローネとスーネリアが出勤した後でイーシャも抱いた。
また朝から忙しない一日が始まったのだ。
ミローネとスーネリアは冒険者ギルドへ、俺とイーシャは冒険者ギルドへ寄ってから、町の外へレベル上げに向かった。
今日は地獄のレベル上げだ。しかも、イーシャの魔法の援護なしである。むしろ、俺がイーシャの補助もしないといけないだろう。そんな中で、自分と同等か格上の魔物を相手にしながら戦闘しないといけないなんて、何の罰ゲームなのだろうか。
「はあ、今日は魔法使っちゃダメなんですよね」
イーシャも普段よりどこか憂鬱そうだ。
「イーシャ、無理に俺に付き合ってくれなくてもいいからな。無理せずに、外で狩りをしていてくれてもいいんだぞ」
「いえ、ミローネさんの言う通り、私も近接戦闘が出来るようにならないといけないと思うんです。そうしないと、アキトさんのパーティーメンバーにふさわしくありませんから」
イーシャは真剣な顔つきで杖をギュッと握っている。
そんな事ないと思う、と言おうとして、止めた。ここがゲームだったら、得意な事に特化する方がいいと思うが、死んだら終わりの現実で、魔法が使えませんから死にましたでは、シャレにならない。
俺が側にいたとしても、俺の力では確実に守ってやれる保証もない。生存確率は少しでも上げておいた方がいいだろう。
「無理はするなよ」
「はい」
ただ、そのレベル上げ自体、生存確率が高くなさそうなのは何とかならないだろうかとは思う。この無茶なレベル上げはいつまで続くのだろうか。
「右から来てるぞ!」
「は、はい!」
イーシャは近接戦闘に関しては、何のギフトも持っていない。
力のステータスが低い訳ではないので、戦えない訳ではない。
ただ、近接戦闘をする場合、スキルの補助があるから、魔物と上手く戦闘を行える。
曲がりなりにも異世界で初めて戦闘を行った俺が魔物と戦えるのは、スキルの補助の影響が大きい。
スキルが無くても経験があれば戦えるのかもしれないが、イーシャは今日初めて魔物と実践で近接戦闘を行っている。
本来なら、訓練をしてから挑むべきだろう。それに、最初は格下の魔物と戦って慣らすべきだと思う。
つまり、何が言いたいかというと、今日初めて同格の魔物とぶっつけ本番で近接戦闘を行ったイーシャがまともに戦える訳がないのだ。
「きゃあ!」
魔物の一撃を受けて、イーシャが吹っ飛ぶ。
いま戦っている敵を斬り倒し、急いでイーシャの元へと駆けつけた。
すぐにイーシャを抱えて魔物から距離をとり、回復魔法を使う。
「うう、すみません」
ダンジョンに入ってしばらくこんな調子だ。これがまだ数時間は続くとなるとかなり厳しいのではないだろうか。
「やっぱり、止めておくか?」
「いえ、最後までやらせてください」
イーシャの意思の力は随分強いようである。
「そうか、じゃあもう一度だ」
「はい」
イーシャは何度も吹っ飛ばされながら、遂に魔物を切り伏せた。
――ホブゴブリンを倒しました。経験値を500入手しました。
「やりました」
近接戦闘で初めて魔物を倒したイーシャはとても嬉しそうだ。
『大分イーシャも慣れてきたようですね。それでは、赤い箱を使いましょうか』
もはやレベル上げの定番になった赤い箱。
ゲームなら効率よくレベルをあげる良いアイテムとなるのであろうが、現実に魔物をおびき寄せるアイテムを使ってレベルを上げるなんて、気が狂っていると思われてもおかしくない。
イーシャはまだ一体倒しただけなのだが、早くないか?
『沢山の魔物を相手にした方が早く成長出来ますよ。それにこれまでの戦闘を見ましたけど、アキトさんの力なら十分サポート可能だと判断しました。いざとなれば命令を使えばいいでしょう』
……そうか、わかった。ここでごねても、命令を使って赤い箱を使わされるのだ。ミローネの言葉に大人しくしたがっておこう。それに、ミローネが出来ると言うのなら、きっと出来るのだろう。
「イーシャ、今から赤い箱を使う。準備はいいな?」
「っ……はい、わかりました」
俺の言葉に、イーシャは力強い調子で答えた。イーシャの方が覚悟は出来ていたようだ。
俺は赤い箱を開けた。
………………
疲れた。その一言に尽きる。
ダンジョンでのレベル上げを終えて、俺達は町へと戻っているところだ。
体力はすぐに回復する俺だが、精神的な部分はそうはいかない。魔物が大挙して押し寄せて来る中、イーシャをフォローしながら戦うのは緊張の連続で、精神を疲弊したのである。
「もうすぐ襲われるかもしれないのに、こんな調子で大丈夫なんでしょうか?」
イーシャは心身ともに疲れたようで、足取りが重い。
確かに、今ヘルミナに襲われるのはあまりよろしくない状態である。ただ、基本はイーシャが聖結界を張ってミローネが来るまでの時間稼ぎをするだけのはずだから、作戦通りにいけば問題はないはずだ。
『アキトさん、ヘルミナが冒険者ギルドを出ました。どうやら、今からアキトさん達を襲うようです』
ミローネから、ヘルミナが動き出したと報告があった。
「イーシャ、疲れているとは思うが、ヘルミナが何時襲ってきてもいいように警戒していてくれ」
「はい、わかりました」
ミローネから遠話があったことを隠しながら、イーシャに警戒するよう促して、俺達は町へと向かう。
だが、数分後。
『不味い事になりました。私がそちらに駆けつけるのは難しそうです』
ミローネが少し慌てた口調で話しかけてきたのだ。
どう言うことだ?
『ヘルミナに魅了されている女冒険者達で囲まれてしまいました。恐らく、私の足止めをするつもりでしょう。すみません、これまでヘルミナが女冒険者達を動かした事がなかったので予想出来ませんでした』
振り切ってくることは出来ないのか?
『今も振り切ろうとしているのですが、彼女達は違法なポーションで強化しているようで、振り切れません。町中で攻撃する訳にもいきませんし、時間をかければ振り切れると思いますけど、そんな事をしていたらアキトさんとヘルミナの戦いに間に合いません』
おいおい、じゃあどうするんだ? ヘルミナは強いんだろう?
『仕方ありません。次善の策を使います。この様子だとヘルミナはアキトさん達を女冒険者達に監視させていた可能性が高いです。恐らく後数分もせずにそちらに着くでしょう。私が――』
「アキトさん、何かが近づいて来てます!」
ミローネの遠話を遮るように、慌てた声でイーシャは言った。
イーシャが指を差す方を見ると、何かが土埃をあげながらこちらに向かって来ている。
それが近づくに連れて、受付嬢の姿をした赤い髪の人間であることがわかった。間違いなくヘルミナだ。
『ヘルミナも違法ポーションをっ。少しだけ時間を稼いでください』
ミローネの遠話が途絶え、すぐそこにヘルミナが近づいて来ている。
「イーシャ、聖結界を」
「はい」
イーシャが聖結界を発動するのと同時に、ヘルミナが俺達の五メートル程手前で止まった。
「やあやあ、お二人さん仲がいいね」
ヘルミナはいつもの受付嬢姿で、とても今から戦闘を行うようには見えない。
「ヘルミナさん? どうしてこんな所に?」
「あはっ、ちょっと野暮用があってさ」
ヘルミナはニヤニヤとこちらを見ている。
「野暮用ですか?」
「うん、野暮用。二人とも最近ミローネと仲がいいよね。それってさ、ワタシにとっては凄い目障りなんだよ、だからさ」
ヘルミナが身体に闘気を纏う。
「だからさっ、死んでよ!」
ミローネ、ヘルミナは俺達を殺そうとはしないって言ってなかったか。
闘気を纏ったヘルミナが俺に向かって突撃してくる。イーシャの聖結界が発動しているのに、お構いなしだ。
バチィ!
聖結界が、ヘルミナの拳を防ぐ。
「あはは、安心してよ、本当に殺したりしないよ。ワタシが気が済むまでボコボコにするだけだからさ。イーシャはアキトをボコボコにした後で、ゆっくり可愛がってあげるよ」
気が済むまでボコボコにされたら、結果的に死にませんかね。やばいよ、ヘルミナの目。完全にいっちゃってるよ。
「あはは、あははははははは!」
バチィ! バチィ! っとヘルミナは聖結界に向かって拳を叩きつける。拳からは血が出ているのに痛みなんて無いかの様に叩きつけている。
「ううぅ」
聖結界を殴られる度にイーシャのMPは減っていき、いずれ聖結界は維持出来なくなる。
そうなれば、目の前に迫るヘルミナを止める方法はない。
本来なら、ミローネが駆けつけるまでの間だけでよかったのだけれど。
イーシャの上部に表示されているMPを見る限り、このペースだと、もう二分も持たない。
ミローネ、あとどれ位かかる?
『五分くらいです』
三分は最低でも聖結界なしで耐えないといけないのか。
「ほらほら、そんな結界の中に隠れてないで出て来なよ」
ミローネ、命令を使ってくれ。それなら、普段の俺よりは何とかなるはずだ。
『……わかりました。その前に以前渡した金色のポーションを飲んでください。力と速さが1.5倍になります。それと闘神闘気を使ってください』
わかった。俺は急いで金色のポーションを取り出して、一気に飲む。
身体中から力が湧いてくる、不思議な感覚だ。
それから、闘神闘気を発動する。
「イーシャ、俺が合図したら、聖結界を解除しろ」
「ううぅ、でも、それじゃあアキトさんが」
「大丈夫だ。俺を信じろ」
何の勝算もないが、今俺が前に出ないと、活路は開けない。その意思が伝わったのか、イーシャは頷いた。
「わかりました」
『行きます。命令:ヘルミナの攻撃を全力で避けなさい』
命令が発動し、イーシャのMPが2割を切ったところで、イーシャに聖結界を解くように言った。
「今だ」
「はい」
イーシャが聖結界を解除し、ヘルミナが今まで殴っていた聖結界が突然消えた事で、体勢を崩した。
その隙を見逃さず、俺は殴りかかった。
「あはっ、ようやく観念したんだ」
俺の攻撃はヘルミナに受け止められてしまう。
そのまま、ヘルミナが俺に拳を繰り出す。
スキルとポーションの効果でステータスが三倍になった俺の身体は、ギリギリでヘルミナの攻撃を回避した。
「へえ、レベルが低い割には上手く避けるじゃん。さっき飲んだ薬が良い薬だったのかな、それともいいギフトを持ってるのかな?」
ただ、ヘルミナはまだ余裕の表情をしていて、全力を出していないのが明らかだ。
「あははっ、どんどん行くよ」
笑いながらヘルミナが俺に殴りかかってくる。
目でギリギリ追えるかどうかという速度のパンチを、自動操縦の体はかろうじて体をひねって躱した。
ヘルミナはどんどんパンチやキックを繰り出してきたけど、俺の体は何とか躱し続けている。
このままヘルミナが全力を出さずに遊んでくれているなら、三分くらいは持つかも。
僅かな希望を感じ始めたその時、ヘルミナがにやりと笑った。
「じゃあ、これはどうかな? 『分裂掌』」
僅かに感じていた希望はまやかしだったようで、ヘルミナの拳が四つに分裂して、俺の体に迫る。
俺の身体はその三つを躱したが、一つ避けきる事が出来ずに、腹に直撃した。
「ぐあっ」
俺の身体は吹っ飛ばされ、地面を転がる。視界が目まぐるしく変わり何が起こったのか把握出来なかったが、自動制御中の身体は、上手く受け身を取って体勢を立て直した。
「何だ、今のを避けられないんじゃ興ざめだね」
ヘルミナはもう俺の攻略方を見つけてしまったようで、冷めた目で俺を見ている。
確かに今の一撃で俺のHPは3割ほど無くなっている。直撃を食らえば即死、全部を避けきれない以上、その内死ぬ。
……だけど、受付嬢に殺されるのなら悪くないか。いや、せめて死ぬのなら腹上死がいい。
「アキトさん!」
っ! 何を馬鹿な事を考えてるんだ。俺はイーシャの事を一生面倒見るんだろ。それにまだヘルミナとセックスしてないぞ。目の前にやってもいい受付嬢がいるのに、死んでたまるか。
「俺は絶対にヘルミナとセックスするんだ!」
「あはっ、ごめんね。アタシ、男は対象外なんだよね。つまんないし、次で終わりにするね」
ヘルミナが俺に止めを差すために動き出す。
俺はイーシャに手で聖結界をはるように指示して、全力で逃げた。
「はっ?」
「どうした? 俺を殺すんじゃなかったのか?」
時間を稼げばいいんだから、無理に戦う必要はないんだ。
イーシャは指示通りすぐに聖結果を発動したし、この状況なら俺を追ってくるはずだ。
「ぶっ殺す」
案の定、ヘルミナは俺を追いかけてきた。
だけど、俺とヘルミナの距離は中々縮まらない。
ヘルミナの攻撃を避けていたときから感じていたことだが、ステータスで一番差がないのは速度差だと感じていた。
その感覚は当たっていたようだ。
最初に俺たちの前までやってきた時の圧倒的な速度はもう出せていない。
「うっざいなぁ。いますぐ止まれば、半殺しで許してあげるよ?」
「はははっ、そんな言葉信じるわけないだろ」
俺はいま、受付嬢と追いかけっこをしている。
もう少し、キャッキャうふふ的な感じがよかったけどな。
移動系のスキルを駆使して、俺は逃げる。
ヘルミナもスキルを使って俺を追ってくる。
俺が持っているスキルの方が性能が高いのか、スキルを使っている間は距離が縮まらない。
だけど、スキルにはクールダウンが必要で、ただ走っている間は距離が縮まっていた。
徐々に徐々に、ヘルミナとの距離は縮まってきている。
そして、俺はヘルミナに捕まった。
「あははっ、追いついたあ!」
俺に追いついたヘルミナは、分裂拳を繰り出してくる。
「ぐふっ、がはっ」
避けきれず、二発貰って吹っ飛んで、地面を転がる。俺のHPは残り1割を切った。
「あはっ、これで終わりだね」
ははは、本当にやばいな。
でも、そろそろじゃないのか、ミローネ?
『はい、準備ができました! 行きますよ!』
『命令解除』
『憑依』
ミローネが何やら言葉を発すると、俺の身体が動かせなくなった。
「死になよ!」
ヘルミナが俺に向かって突っ込んでくる。
俺の身体は、俺の意思とは関係なく動き、ヘルミナの拳にカウンターを合わせる形で、拳を入れた。
「ぐうっ」
今度はヘルミナの方が、吹っ飛んで、地面を転がった。
「へえ、これがアキトさんの、男の人の身体の感覚ですか」
俺が何やら喋っている。何だ、俺は何も喋ろうとしてないぞ。
『ふふっ、ちょっと身体をお借りしました』
ミローネの声が頭で響いている。身体を借りただって?
『はい、本来は私がヘルミナの相手をするはずだったのですけど、それが出来なかったので、アキトさんの身体を借りて相手をする事にしました』
つまり、今俺の身体を動かしているのは、ミローネと言う事か?
『そういう事です』
「あはっ、あははは! 力を隠してたって訳だ。本当にむかつくね。でも、こっちが全力を出してると思ったら大間違いだよ」
ヘルミナが立ち上がり、こちらを睨んでいる。
ヘルミナは口から出ている血を拭き取ると、再び俺に向かって殴りかかってくる。
だが、俺(ミローネ)はヘルミナの拳を難なく躱す。ヘルミナが繰り出す攻撃を全て避けた。
ミローネが憑依したのはわかったけど、俺の身体だろ? さっきまで苦戦していたヘルミナの攻撃をこんな簡単に躱せるのか?
『憑依は、憑依した相手に私のレベルの半分とスキルを上乗せします。つまり、今のアキトさんの身体は、アキトさんのレベル35と私のレベ70の半分の35を足した、レベル70の身体なのです』
いや、そんな方法があるなら、最初からそれで戦えばよくないか。
『いえ、色々と制約があるので、私自身が戦って済むのなら、それに越したことはなかったのですよ』
俺(ミローネ)の拳がヘルミナの腹を捕らえる。
「ぐっ」
ヘルミナは苦悶の表情を浮かべて、距離を取った。
「その程度ですか?」
「は、はあ? 何調子乗っちゃってるの? ……あはは、本気で殺す」
俺(ミローネ)の挑発にヘルミナは更に闘気を膨らまし、赤い闘気に包まれた。
「あはっ、謝るなら今の内だよ? 今なら半殺しで許してあげるよ」
何か滅茶苦茶強くなった気配があるけど、大丈夫なのかミローネ?
『闘気爆発ですね。闘神闘気の下位互換の技です。今のこの身体はヘルミナのレベルを上回っている上に、闘神闘気、ポーションの力も上乗せされています。負ける要素はありません』
いや、それでもわざわざ挑発しなくても。
『ヘルミナには突っ込んで来て貰った方が都合がいいんですよ』
そう言って、ミローネは更なる挑発の言葉を重ねた。
「どうした? 殺すのなら早く殺して見ろよ、口だけか?」
「……ぶっ殺す!」
ヘルミナは何やら腕に闘気を溜め、こちらに向かってその闘気を飛ばして来た。
俺(ミローネ)はその攻撃を難なく躱すが、ヘルミナはこちらに近づいて来ずに遠距離攻撃に徹している。
さっきまでのように突っ込んでくると思ったけど、そうでもなかったな。
『冷静ですね。闘気爆発を使いましたけど、こちらとの力の差を冷静に分析したのでしょう。突っ込めば先ほどの二の舞になると考えたのかもしれません。それと、こちらの力の上昇が一時的なものだと考えているのかもしれません』
こちらのスキルの効果切れを狙ってると?
『はい、普通強力なスキルには何かしらの制限があります。闘神闘気も15分程度しか持ちませんし、私の憑依も同じく15分しか持ちません。ポーションもそうです。そう言った時間の制限があると考えて、時間稼ぎに出ているのかもしれません』
「あははっ! さっきまでの威勢はどうしたのさ!」
ヘルミナはこちらに向かって、どんどん闘気を飛ばしてくる。
その割には、ヘルミナはかなりこちらに攻撃して欲しそうだが?
『誘っているのでしょう。こちらが近づいた所に最大級の闘気技をぶつけて、一気にケリを付けるつもりでしょう。こちらが警戒して近づいて来なければ、それでよし。お互いの強化したスキルが解除されれば、ヘルミナの方が有利ですから』
完全にキレてるように見えたけど、そんな冷静に戦況を判断してたのか。どうするんだ? こちらに打つ手はあるのか?
『突っ込みます』
俺(ミローネ)はヘルミナに向かって突進する。
「あはっ、引っかかったね!」
ヘルミナは待ってましたと言わんばかりに、両手を付きだしてこちらに闘気の塊を放出した。
その闘気の塊が、ヘルミナに突進していた俺(ミローネ)に直撃する。
視界が真っ白に染まり、当たったと思ったのだが、身体に衝撃はやってこなかった。
いや、次の瞬間には右手に感触が伝わってきた。
「ぐふぅぅっ!」
視界が晴れると、俺(ミローネ)に腹を殴られて、くの字に折れ曲がったヘルミナの姿が見えた。
俺(ミローネ)はヘルミナに追撃をしかけ、一気に拳を浴びせる。
「がはっ、がっ、なんでっ、ぐうぅっ、がああっ、どこにっ、ぐうっ、こんなっ、ちからがっ」
ヘルミナは瞬く間にボコボコにされていく。
「これで終わりです」
「がはぁっ!! ……そんな……ワタシが……ま……」
最後に思いっきり腹を殴られて、ヘルミナはだらりと拳の上で動かなくなった。どうやら、気を失ったようだ。
先ほどまで、あれ程脅威に感じていたヘルミナが、ミローネの手であっさりと制圧されてしまった。
これでヘルミナの脅威は去ったわけだが、俺にはさっきのヘルミナからの攻撃を防いだ方法が気になっていた。
さっきはどうやって、ヘルミナの攻撃を防いだんだ?
『アキトさんの闘人スキルには最強の防御スキル、闘神障壁があるじゃないですか。自分のスキルなのに忘れたんですか?』
ああ、そう言えば、俺のスキルも使えるんだったな。いや、あのスキルって使いどころが難しいんだよな。
『ふふっ、ちゃんと使えるようにしないと駄目ですよ』
分かってるよ。それにしても、ミローネは凄いな。いきなり俺のスキルまで使いこなすなんて。
『それは経験が違いますからね。アキトさんも経験を積めば出来るようになりますよ。それに私の力はそこまで凄くありません。本来の私の力はヘルミナより少し強いくらいですから』
いや、それは充分に凄いと思うけど。
『さあ、ヘルミナが気を失っている間に、拘束してしまいましょう』
俺(ミローネ)は収納魔法から、拘束具を取り出し、ヘルミナを後ろ手に拘束し、両脚も腕の拘束具と鎖で繋いで拘束した。口にも口枷を噛ませている。
『これでいいでしょう。このまま町に戻る訳にはいきませんから、外で相手をするしかありませんね。野営の道具は持っていますよね?』
ああ、持ってるぞ。
『わかりました。見張りの為に私とスーネリアも仕事が終わり次第そちらに向かいます。ヘルミナが目を覚ましたら、ヘルミナの相手をして下さい。ヘルミナはスーネリアよりも激しくやっちゃいましょう。もう、徹底的にやっちゃって下さいね』
ああ、わかった。けど、自分を殺そうとした相手とヤらないといけないとか、気が重いな。
『大丈夫です。ヘルミナの姿を見て下さい』
ミローネに言われて、ヘルミナを見る。口にはボールギャグがはめられていて、両手が後ろ手に拘束具で固定されていて、両手に付けられた枷と鎖で繋がっており、脚は真っ直ぐ伸ばすことが出来なさそうだ。そして、ヘルミナは受付嬢姿である。
俺は、憑依中で俺の意思には反応しないはずの肉棒がギンギンになるのを感じた。
『ふふっ、ド変態っぷりは健在ですね。それでは私は戻ります』
『憑依解除』
ミローネが言葉を発すると、俺に感覚が戻ってきて、思わず倒れ込みそうになった。
「アキトさん、大丈夫ですか?」
いつまにかやって来ていたイーシャが、心配そうにしている。
「ああ、大丈夫だ。イーシャのおかげで助かったよ」
本当にイーシャがいなかったら、死んでたかもしれない。
「えへへ、そうですか。うれしいです」
「後、ヘルミナを治療してやってくれ」
「はい、わかりました」
ヘルミナの治療をイーシャに任せて、俺は野営の準備を始めた。
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