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21.トリル現る
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翌朝、俺は目を覚ました。
隣には拘束が解かれた状態のヘルミナが寝息を立てている。こうして眠っているヘルミナを見ていると、可愛らしい受付嬢そのもので、昨日、俺を殺そうとした人と同一人物とは思えない。
「んん……んあぁ……」
ヘルミナが薄らと目を開けて、こちらを見た。
「おはよう」
「んん……おはよう」
お互い挨拶を交わし、ヘルミナが身じろぎすると、ベッドの上に放り出された鎖から音がする。
ヘルミナはその鎖を見て一言。
「こんな物を女に着けたまま抱くとか、本当に鬼畜だよね」
いや、その拘束具を用意したのはミローネだし、ヘルミナに装着させたのもミローネなんだ。
ヘルミナには通じない言い訳を心の中で言い、何て言い訳しようかと考え、俺の口から出た言葉は感想を聞くことだった。
「そうだな。でも、気持ち良かっただろ?」
「……っ。はあ? なに調子乗ってるの?」
ヘルミナは顔を赤くしている。
どうやら、言葉を間違えたみたいだが、ヘルミナの罵倒を引き出せたのでよしとしておこう。
それに、俺を罵倒した割には、ヘルミナはまた鎖を見ている。どうやら、ヘルミナの新しい扉を開いてしまったのかもしれない。
「いや、すまん」
「ふん、別にいいけどさ」
「……」
「……」
素直に謝ったら、今度は微妙な空気になった。
その空気はヘルミナも嫌だったのか、それを打ち払うように話し始める。
「……それにしても、身体のあちこちが痛いよ。あんなに激しくするなんてどうかしてるよね。まあ、殺そうとした恨みって言われれば、それまでだけどさ」
「すまない。ヘルミナの支配を解く為には激しくする必要があると思っていたんだ」
「アタシの支配は解けてたけどね。あんなに必死に訴えたのに無視するんだもん」
「いや、それは、本当にすまない」
殺されそうになった相手だったから、まさか本当に拘束を解いて欲しいと訴えてるとは思わなかったんだ。そもそもの原因はヘルミナの口を塞いだミローネの仕業だが、それをヘルミナに言ってもしょうがないし。
「ぷふっ、そこで馬鹿正直に謝らなくてもいいのに。アキトはアタシに殺されかけたんだから、信用しないのが普通だと思うけどね」
「いや、結果的に無理矢理した形になってしまった。そこは申し訳ないと思っている」
まあ、ミローネに言われれば、どちらにしろやったとは思うけど。ヘルミナは受付嬢だし、ミローネの言葉を免罪符にそのままやっていた自信はある。受付嬢が絡めば、俺はクズにでも何にでもなるのだ。
「ふーん、そっか。……それならさ、確かにアタシも男とするのは初めてだったし、男の味を覚えちゃったし、そこはちゃんと責任とって欲しいかな」
ヘルミナは頬を赤くして、胸の前で手をモジモジとさせている。なんか急に可愛さが増したな。
ただ、責任をとってと言われると、重いものを感じる。
俺が返事に困窮していると、ヘルミナが慌てて言葉を口にした。
「あっ、別にミローネと別れて欲しいとかそう言う事じゃないから。その、私もアキトの女の一人にして欲しいんだ。スーネリアとかイーシャもそうなんでしょ?」
イーシャとスーネリアが俺の女かと言われると、はいそうです、とは答えづらい。俺は女を囲っているという自覚はないのだ。もちろん、イーシャについては責任を取るつもりではいるが。
「モテモテでよかったですね。これでヘルミナもアキトさんの女の一員となった訳ですね」
いきなりテントの入り口が開かれ、ミローネが現れる。どうやら、テントの外で入るタイミングを伺っていたようだ。
「いや、女の一員って」
「いいじゃないですか。セックスするだけの女が増えた所で私は気にしませんよ」
いや、いつもセックスするだけじゃ済まないだろ。プチ修羅場みたいになってるじゃないか。
『ふふっ、私はアキトさんを信じてますから大丈夫ですよ』
そ、そうか。何だかとても心が重たいな。
俺がミローネの愛を噛みしめていると、ヘルミナがミローネの前へと移動した。
「あの、ミローネ。今まで、その、ごめんなさい。……アタシ、貴方にとっても酷い事してた」
ヘルミナはミローネに勢いよく頭を下げる。
「いいんですよ。ヘルミナはケーナに支配されていただけなのですから」
「でも、アタシのした事は謝っても許される事じゃないよ。あの子達も巻き込んじゃって、アタシはアタシの事が許せないよ」
「いいんです。ヘルミナのした事はもう全て許しました。支配される前のように仲良くやっていきましょう。ヘルミナが彼女達にした事は許される事ではありません。ですが、起きてしまった事はもうしょうがありません。彼女達に謝りに行くのなら私も着いて行きます。許してくれるかはわかりません。ですが、ヘルミナがさっきアキトさんに責任を求めたように、ヘルミナも彼女達のこれからの人生に責任を負っていくべきだと思います」
ミローネとヘルミナの会話を聞いていると、ミローネが聖人のように感じられた。だが、俺はミローネがそんな聖人ではないことを知っている。
昨日俺にたっぷりとヘルミナを責めさせていたし、ミローネ自ら俺の身体を操ってボコボコにしていたもんな。
ミローネの中ではヘルミナに対する鬱憤はある程度晴らしているのだ。
だから、何もかも許しました見たいな顔が出来るのだろう。
「……ミローネ、ありがとう。アタシ何でもするよ。ミローネの言う事なら何でもする。あの子達の為にも何でもする。贖罪になるかわからないけど、何でも言ってよ」
「それなら今後1年間のヘルミナの休日を全て譲って貰ってもいいですか?」
「えっ? ……えっと、うん、大丈夫、任せてよ」
「ふふっ、冗談です。今度まとまった休みを取りたいのでその時は宜しくお願いしますね」
「あはは、そうだよね、冗談だよね。いや、別に1年間でも大丈夫だけどね。まとまった休みが取りたかったら何時でも言ってよ」
どうやら、二人の話はまとまったらしい。無事仲直りできて何よりだ。
「それじゃあ、町に戻りましょうか」
俺達は、テントを片づけて、町へと戻る。
町の中に入って、一端スーネリアとヘルミナとは別れた。今日も出勤なので、これから家に帰って準備しないといけないらしい。
「二人とも、今日の夜は私の家に集合ですからね」
二人と別れる際にミローネはそんな事を言っていた。今夜もミローネの家に集合らしい。ミローネは複数人でプレイするのが好きなのだろうか。
『確かに楽しいですけどね。集合するのは今後の方針を話し合う為ですよ』
そうか、そう言えばそうだったな。スーネリアとヘルミナの支配は解けたから、いよいよケーナについての対策会議と言うわけだ。
「家に帰る前にお風呂に行きませんか?」
「はい、私もお風呂に行きたいです」
ミローネとイーシャの二人が風呂に行きたいようなので、風呂へと向かう事になった。
「ならこっちの道が近道ですよ」
ミローネに教えられて、俺達は3人がギリギリ並んで歩けるくらいの細い道を歩いていく。
大通りから入り込み、人の通りもなくなり、通路には誰の姿も見えない。
そこに、突然声をかけられた。
「昨日はたっぷりとお楽しみだったみたいですねぇ」
どこから現れたのか。言葉をかけられるまで、全く気づかなかった。
数メートル程離れた場所にトリルは立っている。いつもの受付嬢姿で。
「何の用ですか?」
ミローネが警戒した様子で、俺の前に出る。
「くふふ、ちょっとアキトさんに用がありましてねぇ、出来れば二人きりでお話したいんですけど、駄目ですか?」
トリルは甘えたような猫撫で声で、自身の要求を話した。どうやら、俺に用があるらしい。
「貴方はこの騒動には干渉しないと言っていたじゃないですか。あれは嘘だったんですか?」
「いえ、嘘じゃありませんよ。ただ、ミローネ先輩の件とは別で、私にも仕事があるんですよねぇ」
「その仕事にアキトさんが関係あるのなら、私も一緒にお聞きします」
「くふふ、私の話を聞けば、ミローネ先輩の目的は達成出来なくなるかもしれませんよ? それでもいいですか?」
トリルは何処からかナイフを取り出し、その切っ先をこちらに向けた。その行為は挑発的というか、こちらを脅しているように見える。
「……構いません。と言うよりも、貴方がそんな事をするとは思っていません。わざわざ、私とアキトさんが一緒にいる所に出て来たのは何か理由があるのでしょう?」
ミローネの言葉を受けて、トリルは手を叩いて喜んでいる。いつの間にか、手に持っていたナイフの姿はない。
「さすが、ミローネ先輩、鋭いですねぇ。ミローネ先輩がどれ程アキトさんに執着しているのか確認したかったんですよねぇ」
「私がアキトさんをどう思っているか確認するために来たのですか? それだけのはずありませんよね?」
「くふふ、それは個人的なものですよ。ミローネ先輩が随分アキトさんにご執心なのはわかりました。本当の目的は、アキトさんのスカウトです」
「やはり、そう言う事ですか」
「いやいや、どう言う事だよ。スカウトって何だよ。俺とイーシャにもわかるように説明してくれ」
「そうですねぇ。私は、某組織のエージェントをやっているんですよ。普段は情報収集を行っていますが、優秀な者を見つけ次第、組織に引き抜く仕事もやっています。アキトさんの能力は素晴らしいです。是非とも我が組織にスカウトしようと思ったのですよねぇ」
まさか俺の力がそこまで評価されていたとは、やっぱり俺が持っているギフトって凄いんだな。
「何でこのタイミングなの? 貴方も鑑定を持っているのだし、私よりも早くアキトさんを確保できたはずです」
「ミローネ先輩がまさかアキトさんをあんなに素早く確保するとは思っていなかったんですよねぇ。まさか、純潔を捨ててまでLvが4しかないアキトさんに賭けるとは思っていなかったんですよ。いえ、今考えれば、Lvが4しかないから賭けたんですよねぇ。さすがミローネ先輩です」
トリルは再び、ミローネに称賛を送るように手を叩く。
「それでも、アキトさんと私の仲が深まるまでに手を出す事も出来たはずです。なぜ、このタイミングなんですか?」
「私、ミローネ先輩の事も好き何ですよねぇ。だから、最初は見守ってたんですけど。もうすぐ、ケーナが帰って来るじゃないですか? ケーナが帰ってきたらミローネ先輩は間違いなく潰されますし、それと同時に、アキトさんも潰されちゃうかもしれないじゃないですか。だったら、今、アキトさんを引き抜く方が賢いと思いませんか?」
「それなら、貴方が力を貸してくれればいいじゃない。そうすれば、ケーナにも勝てるわよ」
「ミローネ先輩もアキトさんも、私の組織に来てくれるのなら、協力してもいいんですけどねぇ」
「それは出来ないわ。貴方の組織に手を貸したら、戦争でも起こしそうだもの」
「否定出来ないのが辛い所ですねぇ」
「そう言う事です。貴方にアキトさんを渡す事は出来ません」
「アキトさんが居ても、ケーナに勝てる可能性は低いですよ?」
「勝算はあります」
「くふふ、さすがミローネ先輩です。ところで、アキトさん、どうですか? 私と一緒に来ませんか? 来てくれたら今よりも沢山の受付嬢を抱くことが出来ますよ」
な、なんて魅力的な提案なんだ。だけど……
「俺はトリルとは一緒に行かない。ミローネと一緒にいるよ」
「私も、アキトさんと一緒に居ます」
「アキトさんもイーシャもこう言ってます。今日はお引き取りして貰ってもいいかしら?」
「くふふ、そうですか、残念ですねぇ。ただ、一つだけお願いがあるんですよねぇ」
トリルはわざとらしく手を合わせて、お願いのポーズを取る。
「……何かしら?」
「アキトさんとセックスさせて欲しいんですよ」
な、何だと?
「ええ、何でですか!?」
「くふふ、アキトさんの性者スキルを是非味わって見たいんですよね」
「……断ったらどうするつもりですか?」
「くふふ、ミローネ先輩、私の能力を警戒してますか? 大丈夫ですよ。アキトさんを寝取ったりしません。アキトさんはミローネ先輩と心が通じ合っているのでしょう? まあ、もし断るようでしたら、力尽くで、と言うことになります。でも、ただセックスするだけの女は増えても問題ないんですよねぇ?」
「……」
トリルの言葉にミローネは黙り込む。ここは男を見せるべき所だろう。
「ミローネ、俺なら大丈夫だ」
「アキトさんは受付嬢のトリルを抱きたいだけでしょう?」
ぐっ、確かにその通りなのだが。
「いや、俺がトリルを抱けば丸く収まるのだろう? それなら、抱こうと思ったんだ」
俺は真剣な目でミローネの目を見つめた。
その思いが通じたのか、ミローネは何時もの笑顔を見せる。
「ふふっ、アキトさんは本当に受付嬢の事となると、見境がない猿になりますね」
俺の思いは全く通じていなかったようだ。
「受付嬢の事になると猿になるのは仕方ないだろう? それが俺なんだから、今は俺が猿になればいいんじゃないのか?」
「トリルはアキトさんと同じく、手技、口技、性器技が使えます。他の女ならアキトさんの性者のギフトで押し切れますけど、トリル相手では一方的に搾り取られて終わりです。私はアキトさんが本当の猿に変えられてしまうのが怖いんです」
「いや、ミローネ。俺の事全く信用してくれてないよな」
「ふふっ、受付嬢の事でアキトさんの理性を信じる何て、神に世界の救済を願った方がまだ信じられます」
そうか、俺の信用はあの神の爺さんの気まぐれよりも低いのか。ちょっと、いや、かなりへこむな。
「くふふ、お二人とも仲がいいですねぇ。ミローネ先輩安心して下さい。さっきも言いましたけど、寝取ったりしませんよ。それにミローネ先輩からアキトさんをそう簡単に寝取れるとは思えませんしねぇ」
トリルの言葉に、ミローネは考え込み、最終的に折れた。
「……はぁ、わかりました。どちらにせよ、いま私達にトリルを止める方法はありませんから」
「くふふ、交渉成立と言う事ですねぇ」
トリルは嬉しそうに手を叩き、俺の方へとやって来て、俺の手を取った。
トリルの手は、すべすべの手だった。とてもナイフを扱い慣れているとは思えないほどすべすべだ。そして、手を触られた時から、リラックスした気分になる。
「むぅ、結局やっちゃうんですね。アキトさんの馬鹿」
イーシャは俺の手を取ったトリルを見て、頬を膨らませてぼそっと呟く。
いや、イーシャ。別に俺は悪くないと思うんだが。
「それでは、ミローネ先輩。夜にはミローネ先輩の所にお返ししますので、それまで、アキトさんをお借りします。後、いくらでも覗き見してもらっていいですよ」
トリルはそれだけ言い残し、俺と手を繋ぎながら俺を抱え上げ、一瞬で家の屋根の上まで飛び上がる。
「くふふ、それじゃあ行きますよ」
そして、俺を抱きかかえたまま、どこかへと走り出したのだった。
隣には拘束が解かれた状態のヘルミナが寝息を立てている。こうして眠っているヘルミナを見ていると、可愛らしい受付嬢そのもので、昨日、俺を殺そうとした人と同一人物とは思えない。
「んん……んあぁ……」
ヘルミナが薄らと目を開けて、こちらを見た。
「おはよう」
「んん……おはよう」
お互い挨拶を交わし、ヘルミナが身じろぎすると、ベッドの上に放り出された鎖から音がする。
ヘルミナはその鎖を見て一言。
「こんな物を女に着けたまま抱くとか、本当に鬼畜だよね」
いや、その拘束具を用意したのはミローネだし、ヘルミナに装着させたのもミローネなんだ。
ヘルミナには通じない言い訳を心の中で言い、何て言い訳しようかと考え、俺の口から出た言葉は感想を聞くことだった。
「そうだな。でも、気持ち良かっただろ?」
「……っ。はあ? なに調子乗ってるの?」
ヘルミナは顔を赤くしている。
どうやら、言葉を間違えたみたいだが、ヘルミナの罵倒を引き出せたのでよしとしておこう。
それに、俺を罵倒した割には、ヘルミナはまた鎖を見ている。どうやら、ヘルミナの新しい扉を開いてしまったのかもしれない。
「いや、すまん」
「ふん、別にいいけどさ」
「……」
「……」
素直に謝ったら、今度は微妙な空気になった。
その空気はヘルミナも嫌だったのか、それを打ち払うように話し始める。
「……それにしても、身体のあちこちが痛いよ。あんなに激しくするなんてどうかしてるよね。まあ、殺そうとした恨みって言われれば、それまでだけどさ」
「すまない。ヘルミナの支配を解く為には激しくする必要があると思っていたんだ」
「アタシの支配は解けてたけどね。あんなに必死に訴えたのに無視するんだもん」
「いや、それは、本当にすまない」
殺されそうになった相手だったから、まさか本当に拘束を解いて欲しいと訴えてるとは思わなかったんだ。そもそもの原因はヘルミナの口を塞いだミローネの仕業だが、それをヘルミナに言ってもしょうがないし。
「ぷふっ、そこで馬鹿正直に謝らなくてもいいのに。アキトはアタシに殺されかけたんだから、信用しないのが普通だと思うけどね」
「いや、結果的に無理矢理した形になってしまった。そこは申し訳ないと思っている」
まあ、ミローネに言われれば、どちらにしろやったとは思うけど。ヘルミナは受付嬢だし、ミローネの言葉を免罪符にそのままやっていた自信はある。受付嬢が絡めば、俺はクズにでも何にでもなるのだ。
「ふーん、そっか。……それならさ、確かにアタシも男とするのは初めてだったし、男の味を覚えちゃったし、そこはちゃんと責任とって欲しいかな」
ヘルミナは頬を赤くして、胸の前で手をモジモジとさせている。なんか急に可愛さが増したな。
ただ、責任をとってと言われると、重いものを感じる。
俺が返事に困窮していると、ヘルミナが慌てて言葉を口にした。
「あっ、別にミローネと別れて欲しいとかそう言う事じゃないから。その、私もアキトの女の一人にして欲しいんだ。スーネリアとかイーシャもそうなんでしょ?」
イーシャとスーネリアが俺の女かと言われると、はいそうです、とは答えづらい。俺は女を囲っているという自覚はないのだ。もちろん、イーシャについては責任を取るつもりではいるが。
「モテモテでよかったですね。これでヘルミナもアキトさんの女の一員となった訳ですね」
いきなりテントの入り口が開かれ、ミローネが現れる。どうやら、テントの外で入るタイミングを伺っていたようだ。
「いや、女の一員って」
「いいじゃないですか。セックスするだけの女が増えた所で私は気にしませんよ」
いや、いつもセックスするだけじゃ済まないだろ。プチ修羅場みたいになってるじゃないか。
『ふふっ、私はアキトさんを信じてますから大丈夫ですよ』
そ、そうか。何だかとても心が重たいな。
俺がミローネの愛を噛みしめていると、ヘルミナがミローネの前へと移動した。
「あの、ミローネ。今まで、その、ごめんなさい。……アタシ、貴方にとっても酷い事してた」
ヘルミナはミローネに勢いよく頭を下げる。
「いいんですよ。ヘルミナはケーナに支配されていただけなのですから」
「でも、アタシのした事は謝っても許される事じゃないよ。あの子達も巻き込んじゃって、アタシはアタシの事が許せないよ」
「いいんです。ヘルミナのした事はもう全て許しました。支配される前のように仲良くやっていきましょう。ヘルミナが彼女達にした事は許される事ではありません。ですが、起きてしまった事はもうしょうがありません。彼女達に謝りに行くのなら私も着いて行きます。許してくれるかはわかりません。ですが、ヘルミナがさっきアキトさんに責任を求めたように、ヘルミナも彼女達のこれからの人生に責任を負っていくべきだと思います」
ミローネとヘルミナの会話を聞いていると、ミローネが聖人のように感じられた。だが、俺はミローネがそんな聖人ではないことを知っている。
昨日俺にたっぷりとヘルミナを責めさせていたし、ミローネ自ら俺の身体を操ってボコボコにしていたもんな。
ミローネの中ではヘルミナに対する鬱憤はある程度晴らしているのだ。
だから、何もかも許しました見たいな顔が出来るのだろう。
「……ミローネ、ありがとう。アタシ何でもするよ。ミローネの言う事なら何でもする。あの子達の為にも何でもする。贖罪になるかわからないけど、何でも言ってよ」
「それなら今後1年間のヘルミナの休日を全て譲って貰ってもいいですか?」
「えっ? ……えっと、うん、大丈夫、任せてよ」
「ふふっ、冗談です。今度まとまった休みを取りたいのでその時は宜しくお願いしますね」
「あはは、そうだよね、冗談だよね。いや、別に1年間でも大丈夫だけどね。まとまった休みが取りたかったら何時でも言ってよ」
どうやら、二人の話はまとまったらしい。無事仲直りできて何よりだ。
「それじゃあ、町に戻りましょうか」
俺達は、テントを片づけて、町へと戻る。
町の中に入って、一端スーネリアとヘルミナとは別れた。今日も出勤なので、これから家に帰って準備しないといけないらしい。
「二人とも、今日の夜は私の家に集合ですからね」
二人と別れる際にミローネはそんな事を言っていた。今夜もミローネの家に集合らしい。ミローネは複数人でプレイするのが好きなのだろうか。
『確かに楽しいですけどね。集合するのは今後の方針を話し合う為ですよ』
そうか、そう言えばそうだったな。スーネリアとヘルミナの支配は解けたから、いよいよケーナについての対策会議と言うわけだ。
「家に帰る前にお風呂に行きませんか?」
「はい、私もお風呂に行きたいです」
ミローネとイーシャの二人が風呂に行きたいようなので、風呂へと向かう事になった。
「ならこっちの道が近道ですよ」
ミローネに教えられて、俺達は3人がギリギリ並んで歩けるくらいの細い道を歩いていく。
大通りから入り込み、人の通りもなくなり、通路には誰の姿も見えない。
そこに、突然声をかけられた。
「昨日はたっぷりとお楽しみだったみたいですねぇ」
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「何の用ですか?」
ミローネが警戒した様子で、俺の前に出る。
「くふふ、ちょっとアキトさんに用がありましてねぇ、出来れば二人きりでお話したいんですけど、駄目ですか?」
トリルは甘えたような猫撫で声で、自身の要求を話した。どうやら、俺に用があるらしい。
「貴方はこの騒動には干渉しないと言っていたじゃないですか。あれは嘘だったんですか?」
「いえ、嘘じゃありませんよ。ただ、ミローネ先輩の件とは別で、私にも仕事があるんですよねぇ」
「その仕事にアキトさんが関係あるのなら、私も一緒にお聞きします」
「くふふ、私の話を聞けば、ミローネ先輩の目的は達成出来なくなるかもしれませんよ? それでもいいですか?」
トリルは何処からかナイフを取り出し、その切っ先をこちらに向けた。その行為は挑発的というか、こちらを脅しているように見える。
「……構いません。と言うよりも、貴方がそんな事をするとは思っていません。わざわざ、私とアキトさんが一緒にいる所に出て来たのは何か理由があるのでしょう?」
ミローネの言葉を受けて、トリルは手を叩いて喜んでいる。いつの間にか、手に持っていたナイフの姿はない。
「さすが、ミローネ先輩、鋭いですねぇ。ミローネ先輩がどれ程アキトさんに執着しているのか確認したかったんですよねぇ」
「私がアキトさんをどう思っているか確認するために来たのですか? それだけのはずありませんよね?」
「くふふ、それは個人的なものですよ。ミローネ先輩が随分アキトさんにご執心なのはわかりました。本当の目的は、アキトさんのスカウトです」
「やはり、そう言う事ですか」
「いやいや、どう言う事だよ。スカウトって何だよ。俺とイーシャにもわかるように説明してくれ」
「そうですねぇ。私は、某組織のエージェントをやっているんですよ。普段は情報収集を行っていますが、優秀な者を見つけ次第、組織に引き抜く仕事もやっています。アキトさんの能力は素晴らしいです。是非とも我が組織にスカウトしようと思ったのですよねぇ」
まさか俺の力がそこまで評価されていたとは、やっぱり俺が持っているギフトって凄いんだな。
「何でこのタイミングなの? 貴方も鑑定を持っているのだし、私よりも早くアキトさんを確保できたはずです」
「ミローネ先輩がまさかアキトさんをあんなに素早く確保するとは思っていなかったんですよねぇ。まさか、純潔を捨ててまでLvが4しかないアキトさんに賭けるとは思っていなかったんですよ。いえ、今考えれば、Lvが4しかないから賭けたんですよねぇ。さすがミローネ先輩です」
トリルは再び、ミローネに称賛を送るように手を叩く。
「それでも、アキトさんと私の仲が深まるまでに手を出す事も出来たはずです。なぜ、このタイミングなんですか?」
「私、ミローネ先輩の事も好き何ですよねぇ。だから、最初は見守ってたんですけど。もうすぐ、ケーナが帰って来るじゃないですか? ケーナが帰ってきたらミローネ先輩は間違いなく潰されますし、それと同時に、アキトさんも潰されちゃうかもしれないじゃないですか。だったら、今、アキトさんを引き抜く方が賢いと思いませんか?」
「それなら、貴方が力を貸してくれればいいじゃない。そうすれば、ケーナにも勝てるわよ」
「ミローネ先輩もアキトさんも、私の組織に来てくれるのなら、協力してもいいんですけどねぇ」
「それは出来ないわ。貴方の組織に手を貸したら、戦争でも起こしそうだもの」
「否定出来ないのが辛い所ですねぇ」
「そう言う事です。貴方にアキトさんを渡す事は出来ません」
「アキトさんが居ても、ケーナに勝てる可能性は低いですよ?」
「勝算はあります」
「くふふ、さすがミローネ先輩です。ところで、アキトさん、どうですか? 私と一緒に来ませんか? 来てくれたら今よりも沢山の受付嬢を抱くことが出来ますよ」
な、なんて魅力的な提案なんだ。だけど……
「俺はトリルとは一緒に行かない。ミローネと一緒にいるよ」
「私も、アキトさんと一緒に居ます」
「アキトさんもイーシャもこう言ってます。今日はお引き取りして貰ってもいいかしら?」
「くふふ、そうですか、残念ですねぇ。ただ、一つだけお願いがあるんですよねぇ」
トリルはわざとらしく手を合わせて、お願いのポーズを取る。
「……何かしら?」
「アキトさんとセックスさせて欲しいんですよ」
な、何だと?
「ええ、何でですか!?」
「くふふ、アキトさんの性者スキルを是非味わって見たいんですよね」
「……断ったらどうするつもりですか?」
「くふふ、ミローネ先輩、私の能力を警戒してますか? 大丈夫ですよ。アキトさんを寝取ったりしません。アキトさんはミローネ先輩と心が通じ合っているのでしょう? まあ、もし断るようでしたら、力尽くで、と言うことになります。でも、ただセックスするだけの女は増えても問題ないんですよねぇ?」
「……」
トリルの言葉にミローネは黙り込む。ここは男を見せるべき所だろう。
「ミローネ、俺なら大丈夫だ」
「アキトさんは受付嬢のトリルを抱きたいだけでしょう?」
ぐっ、確かにその通りなのだが。
「いや、俺がトリルを抱けば丸く収まるのだろう? それなら、抱こうと思ったんだ」
俺は真剣な目でミローネの目を見つめた。
その思いが通じたのか、ミローネは何時もの笑顔を見せる。
「ふふっ、アキトさんは本当に受付嬢の事となると、見境がない猿になりますね」
俺の思いは全く通じていなかったようだ。
「受付嬢の事になると猿になるのは仕方ないだろう? それが俺なんだから、今は俺が猿になればいいんじゃないのか?」
「トリルはアキトさんと同じく、手技、口技、性器技が使えます。他の女ならアキトさんの性者のギフトで押し切れますけど、トリル相手では一方的に搾り取られて終わりです。私はアキトさんが本当の猿に変えられてしまうのが怖いんです」
「いや、ミローネ。俺の事全く信用してくれてないよな」
「ふふっ、受付嬢の事でアキトさんの理性を信じる何て、神に世界の救済を願った方がまだ信じられます」
そうか、俺の信用はあの神の爺さんの気まぐれよりも低いのか。ちょっと、いや、かなりへこむな。
「くふふ、お二人とも仲がいいですねぇ。ミローネ先輩安心して下さい。さっきも言いましたけど、寝取ったりしませんよ。それにミローネ先輩からアキトさんをそう簡単に寝取れるとは思えませんしねぇ」
トリルの言葉に、ミローネは考え込み、最終的に折れた。
「……はぁ、わかりました。どちらにせよ、いま私達にトリルを止める方法はありませんから」
「くふふ、交渉成立と言う事ですねぇ」
トリルは嬉しそうに手を叩き、俺の方へとやって来て、俺の手を取った。
トリルの手は、すべすべの手だった。とてもナイフを扱い慣れているとは思えないほどすべすべだ。そして、手を触られた時から、リラックスした気分になる。
「むぅ、結局やっちゃうんですね。アキトさんの馬鹿」
イーシャは俺の手を取ったトリルを見て、頬を膨らませてぼそっと呟く。
いや、イーシャ。別に俺は悪くないと思うんだが。
「それでは、ミローネ先輩。夜にはミローネ先輩の所にお返ししますので、それまで、アキトさんをお借りします。後、いくらでも覗き見してもらっていいですよ」
トリルはそれだけ言い残し、俺と手を繋ぎながら俺を抱え上げ、一瞬で家の屋根の上まで飛び上がる。
「くふふ、それじゃあ行きますよ」
そして、俺を抱きかかえたまま、どこかへと走り出したのだった。
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こちらは他のウェブ小説にも投稿しております。
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こうご期待。
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