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11.成功?

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「――愛のない結婚はしないって言っていたじゃない……」

 マリアは微笑むリカルドを軽く睨みながら呟いた。

 リカルドとの交渉が失敗に終わって二週間。ユアナの婚約者をどうしようかと頭を悩ますマリアの元に突如報告が入った。それは、ユアナがロナルドと婚約を解消し、リカルドと婚約するというもの。マリアにとって、まさに寝耳に水の話だった。
 驚いたマリアは、デート中だったこともあり、ロイズを連れてリカルドに会いに来たのだ。

「ははっ、愛のない結婚はお断りだと言いましたが、そこに愛があれば構わないということですからね。いやはや、マリア様は優秀な方ですが、男女の機微には疎いところがおありになりますねぇ」

 愉快そうに返されて、ますますマリアは腹が立った。隣に座るロイズが、宥めるように背を撫でてくれるから、なんとか罵らずにいられるけれど。

「……私がユアナ様にあなたを紹介しようと思っていたのに、どうやってお見合いまでこぎつけたのかしら?」
「俺は商会長ですからね。ごく普通に商売の話を持ち込んで。その際に、マリア様から俺の名前を聞いていたユアナ様が、同席されたのですよ」
「あぁ……確かにあなたの名前は伝えていたわ。でも、愛がどうこうという話はどこにいったの? まさか一目惚れ?」

 話の核心をつくと、リカルドがニヤリと笑った。

「ええ、一目惚れですね。……約三年前の話になりますが」
「三年前!?」
「ユアナ様の社交界デビューのお姿は、本当にお美しかったのですよ。既に婚約者もいらして、俺にとっては高嶺の花でしたが」
「……そんな、前から……」

 目を細めて過去を思い出す仕草をするリカルドに、マリアはため息をついた。自分が完全に手の内で遊ばれていたことを悟ったのだ。
 マリアがユアナとの婚約の話を持ち込んだときから、リカルドは己の手でユアナを手に入れると決めていたのだろう。見初めたものは、何であっても己の手で扱わねば気が済まないという、リカルドの性格がよく表れていた。

「――ふふっ、お二人は本当に仲がよろしいのね?」

 席を外していたユアナが戻ってきた。ここはメルシャン伯爵家の邸宅なのだ。ユアナと交流を深めていたリカルドの元に、マリアたちが乗り込んてきた形になる。ユアナが寛大に受け入れてくれたのは嬉しいが、リカルドの余裕顔は少し腹が立つ。

「ええ。ですが誤解してほしくはありませんね。マリア様とは仕事上の関係ですよ」
「私の方がそう言いたいわ!」
「ふふっ、さようですか。リカルド様を通じて、マリア様とも仲良くなれそうで嬉しいですわ。私、マリア様に憧れていたの」
「……それは、光栄ですわ。私も、ぜひ、今後も仲良くしていただきたいと思っていますわ」

 リカルドには思うところもあるが、ユアナと仲良くなりたいのはマリアも同じ。邪気のないユアナに微笑みかけた。


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