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14.二人の叫び

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 数日後の昼下がり。

 マリアは公園に来ていた。隣にはロイズの姿。ゴシップに関してマリアが再び動こうとしているのを察したように、ロイズから誘いがあったのだ。
 マリアは一人で出掛けるのは推奨されていないので、これ幸いにと付き添いを頼んだ次第だ。

 それはそれとして、デートはちゃんと満喫しているけれど。本日持ち寄ったお菓子は、緑茶葉を使ったケーキだ。紅茶葉とはまた違った風味で美味しい。来週には売り出す予定である。

「今日はピア嬢について?」
「ええ、もうすぐ来ると思うのだけれど」

 ケーキと緑茶を楽しみながら、周囲を窺う。ルリが言っていた通りなら、もうすぐ姿が見えるはずで――。

「――ピアさん、私が傍におりますからね」
「ルリさん……付き合っていただき、本当にありがとうございます……。父は、私を侯爵に差し出す気のようで、もうどうしたらいいか分からなかったのです……」

 ルリに支えられたピアの姿が公園の入り口にあった。歩み寄ってきた二人は、マリアたちの背後にあるベンチに腰を下ろす。
 ルリはピアについて調べる過程で、友人の位置におさまっていたらしい。その報告を受けた時、マリアはなんとも言えない表情をしてしまった。「くれぐれも、ピアを裏切って傷つけることのないように」と指示を出すのが精一杯だったけれど。打算ありきの友人関係なんて悲しいではないか。

 暫く二人の話を聞いていると、公園の入り口に新たな人物が現れた。ロナルドだ。ピアから息を飲む気配がする。

「――ピア! 君は俺を捨てないだろう!? そうだ、モスト男爵に、俺が爵位を継いでやると言え! 侯爵家からの婿入りなんて、誉れだろう!?」

 挨拶もなく喚き出したロナルド。必死さが際立って、憐れで恐ろしさすら感じる。

「……む、無理です……。私、妾の子ですから……継承権を、放棄しています……」
「それを、俺が撤回させるんだよ。優秀な俺が家に来るんだ。モスト男爵は泣いて喜ぶさ!」

 優秀。その言葉に苦笑する。その言葉通りの人物だったら、ロナルドがここまで落ちぶれることはなかっただろう。
 マリアが調べさせた結果、リスト侯爵家はロナルドの存在を無いものにしようとしていることが分かっている。社交界で嗤われていることが、見栄を重視する貴族として耐えられないのだ。
 原因のロナルドを社交界に出して、更に嗤われることを避けたいためか、男爵家にロナルドを押しつけることも考えていない。ロナルドは領内での飼い殺しが決まっているという。平民並みの生活ができればいい方だろう。

「……本当に、無理なんです、っ。父も、リスト侯爵も、それを拒否していますから!」

 絞り出したピアの声に、ロナルドの喚き声が止まった。
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