[完結]魔女の森

夏伐

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3 魔物と男

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 遠くに小さく煙が見えた。

「……のろし?」

 私が向かっている場所は、そこにあるのだろうか。
 魔女の屋敷は。
 この森に他の噂は聞かない。人が入っただけで近隣の村では一大ニュースなのだから。

 煙に向かって歩けば少なくとも人語を話すものに会えそうだ。

 魔女の屋敷であったら、昼食の用意であろうか。もしかしたら人でも煮込んでいるのかもしれない。何せこの森に住んでいるのは人食い魔女なのだから。
 想像すると寒気がする。

「魔女と言っても、元は人間なのだから。それに、私には――」

「何か秘策でもあるの?」

「っ!?」

 反射的に声の方向を見る。木の隙間に隠れるようにして女の子が立っていた。今の時代に珍しい、きれいな服を着ている。なんだか真っ白な少女だ。

「……天使?」

 女の子はクスッと笑った。

「おじさん。天使を信じているの? それは昔の人間が有翼人種を見て創造したものに過ぎないと偉い大学校の先生が発表したじゃない。それに、この間の戦争で相当な活躍をしたらしいわよ?」

 嘲笑に似た笑みを浮かべて女の子は饒舌に話している。

「昔は神の使いだなんだと崇めていて勝手な話よね。神の使いに人間風情が命じて同族の殺し合いの手伝いをさせてるのよ。笑えるわよね? 人がどんどんいなくなって私は面白く見ていたけれど、それにご飯にも困らなかったし。神さまには感謝してるわ」

「神さま?」

 女の子はもしかしたら、例の人食い魔女ではないか? 

 こんな森の奥深くに子供が一人でいるのはおかしくはないか? その疑問は全て彼女が『魔女』であれば説明はつくだろう。

「神さまに感謝をしているのかい?」

「ええ。とても。あなたの信じる神とは違うかもしれないけれどね」

 女の子は楽しそうにケラケラと笑った。

 魔女の言う神とは悪魔であろうか? ならば私の信じる神とは正反対のものかもしれない。

「あはは。あなた先生に会いに来たんでしょう? 私は人食い魔女ではないわよ」

 私の顔に、疲れが見えたのだろう。女の子は煙の出ていた方向を指さして「こっちに行ったらすぐよ」と言った。「またね」とも。

 私は「ありがとう」とだけ言い、彼女に言われた方向に歩を進めた。

 歩くたびに足はどんどんと軽くなっていった。

 そして赤く染まり枯れ始めていた森は生気を取り戻し、緑色へ。空気中にも植物の気配を感じる。息苦しい。空気が薄い、そんな感じだ。

 煙の場所からはかなり離れていたと思うが、息苦しさが限界を迎えそうな頃魔女の屋敷にたどり着いた。

「先生、今日は冴えてますね!!」

 少女の声だ。

「最高です! このモツステーキ!!」

 ……どうやら人食い魔女の家であっているようだ。

 壁に大穴が開いている。ワイルドなセンスをお持ちのようだ。
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