妹に婚約者を奪われ、聖女の座まで譲れと言ってきたので潔く譲る事にしました。〜あなたに聖女が務まるといいですね?〜

雪島 由

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四十九話 

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 「ここが古代遺跡……」

 アティスは古代遺跡の前で呟いた。
 古代遺跡の周りには木々が立ち並んでいる。古代遺跡は森の中にひっそりと存在していた。

 入り口を見つけ、中へ足を踏み入れる。

 古い造りの石畳が奥へと続いている。

 周りが森に囲まれているだけあって、見たところ人がここへ立ち入った痕跡は見受けられない。

 アティスは静かに石畳の上を歩き、灼熱の魔剣使いギルアスカが封印されていると言われている部屋を目指す。

 しばらく歩くと地下へと続く階段が目に映った。

 「この奥が、目的の部屋ですね……」

 ゴクッと、アティスは思わず息を呑んだ。

 この階段を降りればきっと何かがあるのだろう。そして、その何かは自分ではどうしようも出来ないほど強大なものかもしれない。
 階段を下ることを躊躇ってしまうのも無理はない。

 「お守りですか……」

 ふと、マリアが自分の手の甲に付けた紋様を思い出す。
 マリアはお守りみたいなものと言っていたが、きっとこれは何かの役に立つのだろう。

 意を決して地下への階段を下っていく。

 「……ん?」

 この奥にはギルアスカが封印されている部屋がある。そのはずだ。
 だが、アティスが地下への階段の先で見たものは部屋と呼べるようなものではなく、歪な形をした空間だった。

 ここまでの道はしっかりと石が敷き詰められ、綺麗な形をした通路であったのに、地下へ降りた途端石は無くなり地中にできた空間のようになっている。

 「ほう、随分と早くたどり着いたな?」

 奥が見えないほど広い空間で、ゆっくりとアティスに近づいてくる人影が見える。

 「……貴様が、ギルアスカか?」

 「その通りだ」

 足音を立てて近づいてきた若い長身の男。
 見た目は人間とそう変わらない。
 だが、人間とは比べ物にならないほどの魔力を保持している。ギルアスカから流れ出る魔力がそれを裏付ける。

 「出来ることなら争いたくはない。貴様が結界魔法に干渉したことは分かっている。それを止めるのであればここで争う必要はない」

 「おい、おい、必死だな? 俺から流れ出る魔力で分かっちまったか? 俺には勝てないって」

 煽るような口調で言う。

 「……」

 「何だよ、無視か? ……お前からの質問だが、止める気はない。俺にとってあれは邪魔なもんでしかないからな。て言うかよ、そもそも結界なんて関係なくお前は俺を殺しにきたんだろうが」

 「……どう言う意味だ?」

 「何だ? 分からないのか?
 俺の時代よりも魔法技術が落ちたって言っても、魔物がおかしくなる理由くらい分かるだろ?」

 「……強大な魔力……」

 目の前の敵のことで頭が埋まっていたアティスは、言われてやっと理解した。

 魔物の変異種の出現、魔物が突然力を増すといった現象には強大な魔力によってといったケースが多い。普通は地面や洞窟などから魔力が溢れ出ることはあっても人から溢れ出すことなどあり得ない。
 だが目の前の敵は……

 「聖女の結界が消失したから魔物の変異種が現れたのではなく、聖女の結界が消失したことにより封印が解け、貴様から流れ出した魔力が事の原因だと?」

 「まぁ、そう言う事だな」

 「……ッ」

 冷や汗を流しながら、アティスはゆっくりと剣を抜く。

 「やっと覚悟が決まったか? まぁ、魔族と人間は相容れぬ存在だからな。お前を殺したら、次は外に出て他の人間を狩るのも良いかもしれないな。
 どうだ? やる気が上がっただろ?」

 挑発するようなギルアスカの声と共に戦いの火蓋がきられる。
 
 
 
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