【完結】婚約破棄された伯爵令嬢、今度は偽装婚約の殿下に溺愛されてます

ゆーぴー

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第一章

ナデナデしたら、トキメキました

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「え?」

 エルシアとケインの声が重なる。

(そんなことで良いのかしら……)


 呆然とする彼女を横目に、ケインとクロードは言い争いを始めた。

「殿下! そんなヘタレでどうするんです!! せっかくのチャンスですよ!? あんな事とかこんな事とか、色々あるでしょうっ」

(あんな事とか、こんな事?)

 エルシアが首を傾げる。

 それを見たクロードは怒ってケインに言い返した。

「女神の前で汚らわしい事を口にするな! 俺はエルシアの手で髪を撫でて貰うのが夢なんだ、何が悪い!!」


(……え? わたくしの手って、癒しの力とかがあったのかしら? いえ、ないわよねぇ)

 しげしげと自分の両手を見つめ、握ったり広げたりするエルシア。


「ハッ。そんなお子ちゃま王子だから、いつまでも進展しないんでしょう? エルシア嬢にもそろそろ愛想をつかされますよ」

 ケインの言葉に、ビクッとするクロード。

(殿下もケインさんも、何が言いたいのかよく分からないけれど……)

 クスクス。

 縋る様な目で見つめてくるクロードを見ていると何だか嬉しい様な、楽しい様な気持ちになるエルシアであった。

 

「殿下、しゃがんで下さいな」

「あ、ああ」

 クロードがしゃがんで小さくなると、エルシアは指先を伸ばす。
 そして滑るようなサラサラした髪を優しく、丁寧に撫でていく。

「幸せだ……」

「うふふ。まぁ、本当に?」

 目を細めてウットリと呟くクロードと恥ずかしげ笑うエルシア。

 そんな二人を離れて見るケインは苦笑いだ。


「ああ。それに、こんなに笑う君を見たのも初めてだから嬉しい」

 トクン

「……もう少し、笑うようにします」

 トクントクン、トクン

(勘違いしちゃ、いけないのに。殿下の優しい言葉にドキドキするーー)


 うぅぅん!!

 そんなエルシアの思考は、ケインの咳払いで中断される。

「エルシア嬢、殿下にご褒美をありがとうございます。さぁ、殿下! これで心置きなく働けますね!」

 ドサドサドサ 

 大量の書類をクロードの机に置いたケインは、いい笑顔だ。

「うぅ。お前は相変わらず、悪魔だな」

 そう言いながらもクロードは、仕事に戻る。
 
「今日はありがとうエルシア。気が向いたらいつでも遊びに来てくれ」

「は、はい」

 こうして、クロードとケインに見送られたエルシアは、よく見ると顔を赤らめながら自宅に戻ったのであった。

 
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