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人気店の視察とお風呂

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 護衛の事はどうにか断れたミク。あれから少し話をしてミク達にはこちらから話を持ちかけない限り手出し無用とした。
 話し合いが終わったのは夕方頃だった。ミク達は夕飯を食べてから帰る事にしたので、視察も兼ねて人気店に行く事にした。
「いらっしゃい。好きな席にどうぞ!」
 人気店だが時間が早かったのかまだ人はそんなに居ない様で、ミク達はキッチンに近い所に腰掛けた。
「オススメはどれ?」
「僕のオススメはボアステーキ定食かな」
「わたしのオススメは白身魚のソテーですね」
「俺は肉と野菜のスープ」
 オススメを聞かれて三人は其々別々の料理を口にした。
「んー、どれも美味しそう。迷うなぁ……、よし、肉と野菜のスープにする」
「嬉しい」
「残念……」
「残念です」
 ミクの選んだものに三者三様の反応をした。そこに丁度良く店員がくる。
「そろそろ、メニュー決まった?」
「ボアステーキ定食、白身魚のソテー、肉と野菜のスープ二つに果実水四つで」
「はいよ! 三四〇〇ビデだよ」
「はい、三四〇〇ビデです」
「はいよ! 丁度! じゃあちょっと待っててくださいな」
 店員がオーダーを通しに行ってすぐにミク達の元に戻って来た。
「はいよ! 先に果実水だよ。料理は少し待っててくださいな」
「じゃあ、今日の出会いに乾杯」
「「「乾杯」」」
 店員が居なくなってから四人はコップを持って口を揃えて乾杯をした。
 料理が来るまでアベル達がミクにこちらの常識などを教えていたら、直ぐに料理が運ばれてきた。
「肉と野菜のスープお待ち! 他の料理も今持ってくるよ」
 店員が持ってきたスープをミクとジルは自分の所に引き寄せた。するとまた直ぐに店員が戻って来た。
「ボアステーキ定食と白身魚のソテーお待ち! 追加で欲しいモノがあったら呼んでちょうだいな」
「「「「糧に感謝を」」」」
 アベル達に教えてもらったお祈りをして、ミクはスープを口にした。アベル達もそれぞれ料理を食べ始めた。
「スープどうだ?」
「んー普通……?」
「美味しくなかった?」
「味はいつも通りだと思いますが……?」
「元の世界の料理より質が落ちてるかなぁ。まぁ、食べられないなんて事はないよ」
 ジルにスープの味を聞かれ、ミクは正直に答えた。アベルは心配げに聞いてきて、ルネは魚を口に入れて首を傾げる仕草をした。ミクはここで元の世界と、この世界の料理の差がある事に気づいた。
「それならいいんだけど……」
「そんなに前の世界の料理って美味しいんですか?」
「少なくともこのスープよりは美味しい」
「成る程……料理店がますます楽しみだよ」
 それから四人は料理を楽しみながら色々な話しをした。
「ありがとう、またきてくださいな!」
 四人は料理を堪能したら、何処にも寄らずに家に帰った。
「ミク、お風呂あるけど入る?」
「お風呂あるの!? 嬉しい! この世界ってお風呂一般的じゃないみたいだったからあると思わなかった! 入ってくる! 場所は何処?」
「あっちの通路に青い扉がありますから、其処がお風呂ですよ。お手洗いは白い扉ですから間違わないと思います」
「分かった! 行ってくる!」
 ミクはアベルとルネの言葉を聞いて居ても立っても居られず、早口に言ってお風呂がある通路の方にウキウキと行ってしまった。
「可愛いなぁ」
「本当に……」
「あぁ……」
 アベル達はそんなミクを見て顔を綻ばせている。
 一方、ミクはお風呂に入る準備をしていた。アベル達に教えてもらっていた方法でお湯を貯め、着替えの服や、シャンプーなどをインベントリから鼻歌を歌いながら取り出していた。そして服を脱ぎ、髪や身体を洗い終わった頃、お湯が貯まり、ミクはインベントリから一つのバスボムを取り出して湯船に沈めた後、ゆっくり足から入り身体を沈めていき、肩まで浸かる。
「はぁ~……、気持ちいいぃ。柚子の香りにして正解ね。癒される~」
 それからミクは二〇分程湯船に浸かって、やっとお風呂から上がったのだった。服を着て、使った物をインベントリにしまってアベル達が居る所まで戻った。
「お風呂ありがと~」
「あ、おかえり。……ちゃんと温まって来たみたいだね」
「ミク、ホットミルクですよ」
「あ、ありがとう!」
「じゃあ、次は俺が入ってくる」
 ミクがアベル達の元に顔を出すと、アベルは笑顔を浮かべながら自分の近くのソファに座るのを勧め、ルネはホットミルクが入ったコップを差し出し手渡した、ジルはミクがホットミルクを一口飲んだのを見届けてお風呂場へ消えて行った。
「ミク、明日はレシピ登録と物件見るんだよね? 用意は出来てる?」
「レシピはインベントリに入ってるから大丈夫。物件は見てみない事にはなんとも言えないね」
「いい場所が見つかるといいですね」
「そろそろ部屋に案内するね。着いてきて」
 アベルはホットミルクを飲み干したのを見計らい、ミクを部屋に案内した。
「黒の扉が僕で薄緑の扉がルネで水色の扉がジルだよ。ミルク色の扉はミクの部屋、好きに使って。さっ、今日は疲れたでしょ? 寝ちゃっていいよ」
「ありがとう、もう寝る事にするね。おやすみ」
「おやすみ、いい夢を……」
 ミクはアベルが扉を閉めて出て行ったのを確認してベッドに横になって布団に包まり眠りについた。
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