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自分のために
しおりを挟むあの夜を境にレイフォードはシオンの起きている間に寝室に来るようになった。
そして自然と2人で夜を過ごすようになったのだ。
何度目かの夜かは忘れたが目の前のソファーでなく、隣に座るようになったレイフォードにシオンはドギマギしていた。
最初の数回は緊張していたが、いつの間にか慣れてきて今では普通に会話を楽しむようになった。
「おい、また顔にかかってるぞ。」
そう言ってレイフォードはシオンの長い髪を耳にかけてくれる。
「あ、ありがとうございます。」
「綺麗な髪だな。」
わずかに口角があがる彼にシオンの心臓は音を立てる。
(あ、いけない。勘違いしちゃだめだ。)
あの謝罪以来、レイフォードのシオンに対する態度は軟化し笑顔と言っていいかわからないがこうしていろんな表情をみせてくれるようになったのだ。
またシオンの胸をざわつかせるのがこういったちょっとしたボディタッチだった。
レイフォードは特に何も考えてなさそうだが、シオンは男性のあまり免疫がないせいかドキドキしてしまうのだ。
「そういえば、明日予定はあるか?」
「いえ、特にはありませんが…」
「なら、明日は王都に出かけよう。」
「え、王都ですか?」
突然の誘いにシオンは笑顔が溢れる。
「そうだ。披露宴の時の衣装を仕立てもらう。そのついでになんだが、いろいろ案内をしたいと思っている。お前さえよければ。」
(嬉しい!王都に行ってみたかったけど何となく言えないでいたんだよね。)
「ありがとうございます!行ってみたかったのですごく楽しみです!」
そう言ってレイフォードに笑顔を向ける。
そうすると、シオンの頭をレイフォードの大きな手が撫でる。
「っ…。」
一気に顔が赤くなり、おどおどしてしまう。
ちらっとレイフォードの顔をみると優しげな表情でシオンをみていた。
(僕の事、弟とでも思っているのかな。)
チリっと胸が痛むように感じるがシオンはそれを無視する。
こうして過ごせるだけで以前と全く違う。
期待してはいけない。
自分がまた傷つかないようにシオンは何も考えないようにする。
レイフォードと夜を過ごすようになってからこうして期待してしまいそうになってはだめだと自分に言い聞かせている。
「レイフォード様、ありがとうございます。」
これでいいんだ。
「…?ああ。もしも行きたい所があったら遠慮なく言ってくれ。」
「ふふ、そうします。」
そうだ。明日出かけるんだから精一杯楽しもう。
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