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第1話ーミランダ視点ー
②:お嬢様は支度中
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ケインが応接間から出ていった後、私達親子3人は互いに、これ以上特にケインについて話すこともなく食堂へ移動した。
そして、普段と変わらぬ豪奢な食事を、完璧なテーブルマナーでもって黙々と静かに済ませ、それぞれの部屋に戻っていったのだが…。
3人が3人共、それ程口数が多い方でもないので、我が家の食事風景とは、今日に限らず大体この様なものなのだ。
食事の後は、寝支度に向けて湯浴みの時間が取られている。
もちろん、上級貴族たる者、例え一人で入れるとしても、一人で入浴することはない。
自室に備え付けられている浴室で、専属の美容メイド3人がかりで行われる湯浴みを済ませた後、裸でマッサージ台にうつ伏せに横たわり、全身にマッサージを受けながら美容オイルで肌を潤される。
例え子供だとしても、貴族令嬢として、美容に気を使うのもマナーの一つであると、お母様は主張している。
なので、これらのエステを受けるのも、すっかり日々の業務のようなものなのだが、自分の輝くばかりにツヤめく玉のお肌を見て、「なんだかなぁ…」と、小さなため息をついてしまう。
…その様子を見ていたメイドが頬を染め、うっとりと見つめてくる視線を感じたが、何も言わずに微笑すると、
「ふぐ…っ」
濡れた髪を纏めていたメイドのあたりから、吹き出すようなおかしな声がした。
同時に、その横のメイドが真っ赤になって自分の鼻を押えながらふらりとしているのを見るのは、偶に見かける光景ではあるのだが、未だに彼女たちに何が起こっているのか理解できないでいる。
……この人達、大丈夫かしら……
そう思って、微かに首を傾げていると、後頭部で鼻を啜るような音がしたかもしれないが、やはり時々あることなので、
「この世界にも花粉症ってあるのかしら?」
と、内心疑問に思いながらも、黙って彼女たちの行動を黙殺した。
こんな少しおかしな行動がみられる人達でも、上級貴族に仕えるに相応しい、最高級の職業メイドたちなのだ。
その腕と審美感については、信頼している。 仕事さえ全うしてくれているならば、アレルギーだろうが花粉症だろうが問題はない。
…ちょっと…なんか時々目つきが怪しい気もするけども、気にしたら負けだと思う。
そして、素肌にガウンを羽織った姿でドレッサーの前に座らされ、背中まである長いふわふわの金髪を丁寧にタオルドライされながら、日焼けを知らない真っ白な肌の顔や首筋、デコルテ部分に美容クリームを丁寧に塗りこまれた。
今日も私の美肌を保つために、みなさんご苦労さまです…
丹精込めて私の美貌を整えてくれるメイド達に感謝しながら、私は鏡の中でこちらを窺っている、どこか浮世離れした儚げな容姿の美少女―――自分の姿をまじまじと見つめて、再び小さくため息をつく。
長く、ふわふわにタオルドライされた淡い色合いの金髪に、淡く輝く翠色の虹彩の瞳。
緑の虹彩を持つ者がそれ程たくさんいるわけではないが、このような特殊な色合いの翠と、その周囲を彩る金色を持つ瞳は希少であり、“翠緑柱の瞳”と呼ばれる、母方のウィンストン公爵家の血族特有の色合いだと言われている。
そして、その周囲を彩る金色の長い睫毛や抜けるように白い肌、華奢な首筋や細い肩。
体つきは折れそうなほどにほっそりしているのに、12歳の子供とは思えない程豊かで形の良い胸は、少し固さを残しながらもたわわに実り、年齢よりは凹凸のある体つきをしている。
しかし、成長期真っ最中であるので、胸はきっともっと大きくなるのだろうと思うと、憂鬱になる。
最近やけに張ってきて、強く触ったり激しい運動をすると、痛いわ重いわ肩こるわ…何の苦行なのか。
オマケに、ちょくちょく男どもに胸を見られているという視線がうっとおしいので、まだ12歳の子供でもあることから、あまり胸元を強調するようなドレスは選ばないようにしているのだが……
あんまりフリフリの年齢相応なドレスを選ぶと、何故か無理して子供服を着ている可哀想な子みたいになるので、ドレス選びはいつも悩みのタネだったりする。
お母様はスラッと細身ながらも適度に大きめという、程よいスタイルを保っているというのに……やっぱりバランスが一番よね…。
私は小さく息をつき、鏡に映る自分の胸元を見るのを止めて、寝支度のスキンケアを施されている頭部に視線を移す。
鏡に映る少女の顔は、小さな顔貌を彩るツヤツヤのさくらんぼのような淡いピンクの唇に、薄く染まったバラ色の頬など、まるでおとぎ話のお姫様のようだ。
…なんて、他人事のように考えてしまうが、私の思考を読み取る者がいたら、どんなナルシスト発言だと思われるかもしれない。
しかし、完全に他人の視点から見てしまっているため、どうも自分の容姿であるという実感が湧かず、ピンとこないのである。
鏡に写った自分は、どこからどう見ても、労働するなど考えたこともないような、ヨーロッパの上級貴族のお嬢様にしか見えない。
………ホント、どこでどうなってこうなったんだろう………
ふとした折に、この容姿や性別にすっかり馴染んでしまっているものの、初めて違和感を覚えるようになってから、もう10年近く経っているだろうか。
今でも時々、自分の髪や瞳は黒いままで、その容姿ももっと庶民的というか、程々整ってはいるものの凹凸は乏しい日本人顔だったんじゃないかと錯覚する。
そして、その上―――ココが重要なのだが―――今の年齢より5歳は年上の男だったと思うのに。
私は、静かに熱く気合いの入ったメイドたちの手によって、鏡の中でどんどん美少女っぷりを上げられていく己を見守りながら、遠い目をして思い出していた。
一番古い記憶は、やっぱり鏡の中の自分を見たときだった。
まだ男だとも女だとも自覚がなく、2~3歳の物心がつき始めた頃だったと思う。
「鏡の中に、お姫様がいる。……あなたはだぁれ?」
貴族の子ども用のフリフリドレスを着せられて、鏡の中で着飾った西洋人の女の子の姿を自分とは思わず、一人鏡に向かってそう言っていたと思うのだが、当時のメイドたちは、その可愛らしい言動にメロメロにやられたらしい。
自分にとっては、思い出すと身悶え必至の、こっ恥ずかしい黒歴史その1であるが。
なんつーナルシストな子供だっていうの
思い出すだけで全身が発火しそうなくらい、恥ずかしい。
しかし、現場の目撃者であったメイドたちは、ドロドロに笑み崩れた顔で
「そうですね、お嬢様。 妖精のお姫様のように可愛らしいお嬢様ですわ。 それとも、精霊さんでしょうか?」
なんて言いながら、私の疑問を“幼い子が持つ独特の世界観のようなもの”だと思って、真剣には取り合わなかった。
そして、その時の私も感覚的な違和感を感じただけだったので、何をどう説明していいのかわからず、メイド達に言われるままに受け取って、それ以上追求することもなかった。
それからその後も、周囲の状況を理解していくにつれて、鏡に話しかける頻度は徐々に減っていってはいたが、時々やっぱり自分の容姿にどこか違和感を抱いて過ごしており………そしてある日、急に気づいてしまったのだ。
ああ、そうか………ちんこがないのか……。 と。
齢4歳にして、突然の覚醒だった。
3重苦のヘレン・ケラーが突然水の概念を理解して、「ウォーター!!」と叫んだ時のような目覚めの時が訪れたのだ。
何がきっかけで覚醒するのかなんて、わからないものである。
その瞬間、急激に自分の年齢より長く生きた別人の記憶が頭の中で氾濫し、よくある異世界転生モノのセオリー通りに、幼い私は知恵熱を出してぶっ倒れた。
そんな兆候などまるでなかったのに、突然風呂上がりに謎の高熱を発して倒れたので、周囲は大変慌てふためいたそうである。
その後ベッドの中で3日程寝込むこととなったのだが、真っ青な顔で看病してくれたお母様の手を嬉しく思いながら、目覚めた時の自分は変わらず“ミランダ=クロイツェン 4歳”のままであることを認識してホッとした。
しかし、その幼女の記憶野の中に、元々ダウンロードされていたと思われる、前世の記憶がインストールされ…その記憶の持ち主こそが、かつて17歳の若さで命を落とした―――日本という極東アジアの一国の―――平凡な男子高校生のものであったのだった。
そうやって1時間ほど物思いに耽っていると、メイドたちの手により一通りの美顔エステが終了し、簡素であり優雅な…されど可愛らしい、淡い桜色のネグリジェに着替えさせられた。
湯浴み、マッサージ、エステと、一通りの義務を熟して寝支度を終えられ、ようやくベッドに横になれる。
貴族の令嬢って、寝るだけでも一大イベントよね…
…もっと簡単でいいのに…昼間も習い事や社交で大変だっていうのに、これだけで疲れて眠れちゃうわ…
などと、いつもそう思うが、そんなことを口に出して、私を美しく整えることに情熱を燃やすメイド達に嘆かれたり、メイド長のばあやに涙ながらに訴えられるのはまっぴらごめんだったので、今日も私は余計なことは言わずに良い子を保ったまま、メイドたちに労いの言葉をかけて床につく。
そしてしばらく眠ったふりをして…人の気配が無くなった頃からが、本来の私の時間だ。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
ミランダ嬢の基本のメンタリティは女性です。
加えて貴族の令嬢育ちなので、使用人の前で裸になっても気にしません。
なので、綺麗なメイドのお姉さんたちに、裸で揉みくちゃにされても何とも思いませんが…お姉さんたちが時々獣のような目で自分を見ているような気がして、ちょっと怖いw
◆そんなメイドさん達の一幕◆
メイドA子「ミランダたん…(*´Д`)ハァハァ」
メイドB子「なんて張りのある、玉のお肌…12歳のロリータに巨乳の気配……やっべ…鼻から男汁吹きそうだわ…」
メイドC子「だめよ、B子! 一時のテンションでこの天国を手放すわけにはいかないわ! 鼻血はしまっておきなさい!
A子!どさくさに紛れて胸を揉もうとするんじゃないわよ!流石にそれはアウトよ! メイド長にしばかれるわよ!」
メイドA子「でもでも……ロリ巨乳という逸材を、もっと育てて導けと、神からお告げが聞こえるでござる!!」
メイドC子「気持ちはわかるけど……メイドのあんたがやってどうすんのよ!?」
メイドA子「テクなしの中途半端なオレ様イケメンに乱暴に揉みしだかれて、痛い思いをさせる位なら、某が…某がぁぁーーっ!!」
メイドB子「ちょっ…手をワキワキさせて忍び寄るな! プロの無駄に滑らかな指使いがいっそ気持ち悪い!」
メイドC子「メイド長、メイドちょぉーーーっ!!」
ミランダ「……………ZZZ(なんかゾクッとするわね。冷えたのかしら)」
…てなやりとりが、うつ伏せで寝そべるミランダお嬢の背後で、密やかに行われていたりいなかったり。
そして、普段と変わらぬ豪奢な食事を、完璧なテーブルマナーでもって黙々と静かに済ませ、それぞれの部屋に戻っていったのだが…。
3人が3人共、それ程口数が多い方でもないので、我が家の食事風景とは、今日に限らず大体この様なものなのだ。
食事の後は、寝支度に向けて湯浴みの時間が取られている。
もちろん、上級貴族たる者、例え一人で入れるとしても、一人で入浴することはない。
自室に備え付けられている浴室で、専属の美容メイド3人がかりで行われる湯浴みを済ませた後、裸でマッサージ台にうつ伏せに横たわり、全身にマッサージを受けながら美容オイルで肌を潤される。
例え子供だとしても、貴族令嬢として、美容に気を使うのもマナーの一つであると、お母様は主張している。
なので、これらのエステを受けるのも、すっかり日々の業務のようなものなのだが、自分の輝くばかりにツヤめく玉のお肌を見て、「なんだかなぁ…」と、小さなため息をついてしまう。
…その様子を見ていたメイドが頬を染め、うっとりと見つめてくる視線を感じたが、何も言わずに微笑すると、
「ふぐ…っ」
濡れた髪を纏めていたメイドのあたりから、吹き出すようなおかしな声がした。
同時に、その横のメイドが真っ赤になって自分の鼻を押えながらふらりとしているのを見るのは、偶に見かける光景ではあるのだが、未だに彼女たちに何が起こっているのか理解できないでいる。
……この人達、大丈夫かしら……
そう思って、微かに首を傾げていると、後頭部で鼻を啜るような音がしたかもしれないが、やはり時々あることなので、
「この世界にも花粉症ってあるのかしら?」
と、内心疑問に思いながらも、黙って彼女たちの行動を黙殺した。
こんな少しおかしな行動がみられる人達でも、上級貴族に仕えるに相応しい、最高級の職業メイドたちなのだ。
その腕と審美感については、信頼している。 仕事さえ全うしてくれているならば、アレルギーだろうが花粉症だろうが問題はない。
…ちょっと…なんか時々目つきが怪しい気もするけども、気にしたら負けだと思う。
そして、素肌にガウンを羽織った姿でドレッサーの前に座らされ、背中まである長いふわふわの金髪を丁寧にタオルドライされながら、日焼けを知らない真っ白な肌の顔や首筋、デコルテ部分に美容クリームを丁寧に塗りこまれた。
今日も私の美肌を保つために、みなさんご苦労さまです…
丹精込めて私の美貌を整えてくれるメイド達に感謝しながら、私は鏡の中でこちらを窺っている、どこか浮世離れした儚げな容姿の美少女―――自分の姿をまじまじと見つめて、再び小さくため息をつく。
長く、ふわふわにタオルドライされた淡い色合いの金髪に、淡く輝く翠色の虹彩の瞳。
緑の虹彩を持つ者がそれ程たくさんいるわけではないが、このような特殊な色合いの翠と、その周囲を彩る金色を持つ瞳は希少であり、“翠緑柱の瞳”と呼ばれる、母方のウィンストン公爵家の血族特有の色合いだと言われている。
そして、その周囲を彩る金色の長い睫毛や抜けるように白い肌、華奢な首筋や細い肩。
体つきは折れそうなほどにほっそりしているのに、12歳の子供とは思えない程豊かで形の良い胸は、少し固さを残しながらもたわわに実り、年齢よりは凹凸のある体つきをしている。
しかし、成長期真っ最中であるので、胸はきっともっと大きくなるのだろうと思うと、憂鬱になる。
最近やけに張ってきて、強く触ったり激しい運動をすると、痛いわ重いわ肩こるわ…何の苦行なのか。
オマケに、ちょくちょく男どもに胸を見られているという視線がうっとおしいので、まだ12歳の子供でもあることから、あまり胸元を強調するようなドレスは選ばないようにしているのだが……
あんまりフリフリの年齢相応なドレスを選ぶと、何故か無理して子供服を着ている可哀想な子みたいになるので、ドレス選びはいつも悩みのタネだったりする。
お母様はスラッと細身ながらも適度に大きめという、程よいスタイルを保っているというのに……やっぱりバランスが一番よね…。
私は小さく息をつき、鏡に映る自分の胸元を見るのを止めて、寝支度のスキンケアを施されている頭部に視線を移す。
鏡に映る少女の顔は、小さな顔貌を彩るツヤツヤのさくらんぼのような淡いピンクの唇に、薄く染まったバラ色の頬など、まるでおとぎ話のお姫様のようだ。
…なんて、他人事のように考えてしまうが、私の思考を読み取る者がいたら、どんなナルシスト発言だと思われるかもしれない。
しかし、完全に他人の視点から見てしまっているため、どうも自分の容姿であるという実感が湧かず、ピンとこないのである。
鏡に写った自分は、どこからどう見ても、労働するなど考えたこともないような、ヨーロッパの上級貴族のお嬢様にしか見えない。
………ホント、どこでどうなってこうなったんだろう………
ふとした折に、この容姿や性別にすっかり馴染んでしまっているものの、初めて違和感を覚えるようになってから、もう10年近く経っているだろうか。
今でも時々、自分の髪や瞳は黒いままで、その容姿ももっと庶民的というか、程々整ってはいるものの凹凸は乏しい日本人顔だったんじゃないかと錯覚する。
そして、その上―――ココが重要なのだが―――今の年齢より5歳は年上の男だったと思うのに。
私は、静かに熱く気合いの入ったメイドたちの手によって、鏡の中でどんどん美少女っぷりを上げられていく己を見守りながら、遠い目をして思い出していた。
一番古い記憶は、やっぱり鏡の中の自分を見たときだった。
まだ男だとも女だとも自覚がなく、2~3歳の物心がつき始めた頃だったと思う。
「鏡の中に、お姫様がいる。……あなたはだぁれ?」
貴族の子ども用のフリフリドレスを着せられて、鏡の中で着飾った西洋人の女の子の姿を自分とは思わず、一人鏡に向かってそう言っていたと思うのだが、当時のメイドたちは、その可愛らしい言動にメロメロにやられたらしい。
自分にとっては、思い出すと身悶え必至の、こっ恥ずかしい黒歴史その1であるが。
なんつーナルシストな子供だっていうの
思い出すだけで全身が発火しそうなくらい、恥ずかしい。
しかし、現場の目撃者であったメイドたちは、ドロドロに笑み崩れた顔で
「そうですね、お嬢様。 妖精のお姫様のように可愛らしいお嬢様ですわ。 それとも、精霊さんでしょうか?」
なんて言いながら、私の疑問を“幼い子が持つ独特の世界観のようなもの”だと思って、真剣には取り合わなかった。
そして、その時の私も感覚的な違和感を感じただけだったので、何をどう説明していいのかわからず、メイド達に言われるままに受け取って、それ以上追求することもなかった。
それからその後も、周囲の状況を理解していくにつれて、鏡に話しかける頻度は徐々に減っていってはいたが、時々やっぱり自分の容姿にどこか違和感を抱いて過ごしており………そしてある日、急に気づいてしまったのだ。
ああ、そうか………ちんこがないのか……。 と。
齢4歳にして、突然の覚醒だった。
3重苦のヘレン・ケラーが突然水の概念を理解して、「ウォーター!!」と叫んだ時のような目覚めの時が訪れたのだ。
何がきっかけで覚醒するのかなんて、わからないものである。
その瞬間、急激に自分の年齢より長く生きた別人の記憶が頭の中で氾濫し、よくある異世界転生モノのセオリー通りに、幼い私は知恵熱を出してぶっ倒れた。
そんな兆候などまるでなかったのに、突然風呂上がりに謎の高熱を発して倒れたので、周囲は大変慌てふためいたそうである。
その後ベッドの中で3日程寝込むこととなったのだが、真っ青な顔で看病してくれたお母様の手を嬉しく思いながら、目覚めた時の自分は変わらず“ミランダ=クロイツェン 4歳”のままであることを認識してホッとした。
しかし、その幼女の記憶野の中に、元々ダウンロードされていたと思われる、前世の記憶がインストールされ…その記憶の持ち主こそが、かつて17歳の若さで命を落とした―――日本という極東アジアの一国の―――平凡な男子高校生のものであったのだった。
そうやって1時間ほど物思いに耽っていると、メイドたちの手により一通りの美顔エステが終了し、簡素であり優雅な…されど可愛らしい、淡い桜色のネグリジェに着替えさせられた。
湯浴み、マッサージ、エステと、一通りの義務を熟して寝支度を終えられ、ようやくベッドに横になれる。
貴族の令嬢って、寝るだけでも一大イベントよね…
…もっと簡単でいいのに…昼間も習い事や社交で大変だっていうのに、これだけで疲れて眠れちゃうわ…
などと、いつもそう思うが、そんなことを口に出して、私を美しく整えることに情熱を燃やすメイド達に嘆かれたり、メイド長のばあやに涙ながらに訴えられるのはまっぴらごめんだったので、今日も私は余計なことは言わずに良い子を保ったまま、メイドたちに労いの言葉をかけて床につく。
そしてしばらく眠ったふりをして…人の気配が無くなった頃からが、本来の私の時間だ。
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ミランダ嬢の基本のメンタリティは女性です。
加えて貴族の令嬢育ちなので、使用人の前で裸になっても気にしません。
なので、綺麗なメイドのお姉さんたちに、裸で揉みくちゃにされても何とも思いませんが…お姉さんたちが時々獣のような目で自分を見ているような気がして、ちょっと怖いw
◆そんなメイドさん達の一幕◆
メイドA子「ミランダたん…(*´Д`)ハァハァ」
メイドB子「なんて張りのある、玉のお肌…12歳のロリータに巨乳の気配……やっべ…鼻から男汁吹きそうだわ…」
メイドC子「だめよ、B子! 一時のテンションでこの天国を手放すわけにはいかないわ! 鼻血はしまっておきなさい!
A子!どさくさに紛れて胸を揉もうとするんじゃないわよ!流石にそれはアウトよ! メイド長にしばかれるわよ!」
メイドA子「でもでも……ロリ巨乳という逸材を、もっと育てて導けと、神からお告げが聞こえるでござる!!」
メイドC子「気持ちはわかるけど……メイドのあんたがやってどうすんのよ!?」
メイドA子「テクなしの中途半端なオレ様イケメンに乱暴に揉みしだかれて、痛い思いをさせる位なら、某が…某がぁぁーーっ!!」
メイドB子「ちょっ…手をワキワキさせて忍び寄るな! プロの無駄に滑らかな指使いがいっそ気持ち悪い!」
メイドC子「メイド長、メイドちょぉーーーっ!!」
ミランダ「……………ZZZ(なんかゾクッとするわね。冷えたのかしら)」
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