元男子高校生が貴族の令嬢に転生しましたが…どうやら生まれた性別を間違えたようです

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第9話 出会って3年経過後のあれこれ

② ミランダ ☆

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 ……また今日も、別館の庭先からこちらを窺う弟の姿が小さく見える。
 日中は別館で貴族の子弟として最低限の教育を受けさせられていることや、それ以外の時間でも本人があまり外に出たがらないこともあって、別館の庭先より外で彼を見かけることはあまりなかった。

 しかし、2年前のあの時以降、時々外に出て何かを探すようにウロウロしていることがあるらしい。

 私は、特に身を潜めたりしてはいないが、何となく彼の眼に留まらないように…無意識に行動してしまうことがあり、それに気付くと後ろめたさに気分が沈んでしまう。

 私を探すようにキョロキョロしているケインの姿は、2年の間に随分身長も伸びて、すっかり男の子らしくなったな…と思って眩しくなったけれども、私は何も言わず、その真摯な視線に捕まらないように、気づかなかったフリをして、足早に視線から消えていくように努めていった。

 今でも弟は、私に対する愛情を隠さないで、私の姿を認めると本当に嬉しそうに笑って話しかけてくれる。
 しかし私は、そんなケインに対して余所余所しくも張り付いたような笑顔で、社交辞令のような言葉を返すのみで…ある意味冷たいとも言える対応をされ、シュンと肩を落とす様子を横目で見ながら立ち去るものの、自分でやっていることだと言うのに心は砂のように乾いているのを感じていた。



 2年前、私が暴走したせいでケインを傷つけた。

 ただ、傷とは言っても表皮程度の軽い傷だったので、あの後気を失ったケインの性器を私の治癒魔法で癒やすことが出来―――強化系を中心に魔法を操る私は、例え他人であっても多少出血した程度のかすり傷ならばその場で治癒することが出来るので―――
 その後は特に出血も後遺症もなく経過していたと、後から送り込んだ侍医(老年の男性)からも報告があった。

 傷自体は―――場所が場所だったので、思わず取り乱してしまったが―――かすり傷みたいなものだったのだが、私はそれ以降、己の暴走が恐ろしくなってケインに会いに行くことができなくなった。
 例えケイン本人が私に逢いたがってくれていても、1対1で対面して、またあの様に理性を失って彼を傷つけてしまったら…何の方策もなく近寄っても、ただあの時を繰り返すことになりかねないと思うと、余計に会いに行きかねた。

 あの時、何故私があんなに暴走することになったのか……実は事前にファントムからの報告で、理由は見当がついていたのに。
 その危険性を知っていながら理解せず、自分は大丈夫なんだと…思い込もうとしていた。

 だって…自分はれっきとした女性だったから。

 前世はともかく、この体は完全に女性のものだったから―――例えその兆候が薄々あったと気づいていたとしても―――自分には関係ないと思っていたかったのだ。

 ケインはこれまで、不特定多数の男たちの欲望の対象とされ、身を隠すように母親や親族の男性に匿われてひっそりと生活していたと言う。
 その男たちは、ケインの身から甘い花のような匂いがするのを感じ、その匂いを吸い込むとどうしても彼に欲望をぶつけたくなったと言っていたそうだが…

 同性愛嗜好傾向の男性にしか効かない媚香が自分に効いてしまったなんて…しかもあんなに強烈にっ。

 そんなこと、認められる訳がないじゃない!

 私は生まれてこの方、ずっと女として生きてきたというのに!
 前世の記憶が男だったからと言って、同性愛者ホモ認定されたとか、意味がわからない!!
 何よ、私の中身が男だとでも言いたい訳!?
 ちょっと記憶があるだけなのに!

 2年前の暴走後、夜の逢瀬もなくなって、お互い離れて暮らしながらあの時の事を冷静に考えられる様になり、ふとその事実を思い出してはウダウダとベッドで身悶えする時が増えた。


「お嬢…実は男だったのか?」

 私は、足元からキョトンとした顔で尋ねてくるファントムをキッと睨みつける。

「んな訳ないでしょ!!」

「まあ、そうだよな。アソコは女のものだったしな」

 なんて、口の端を吊り上げて笑いながらシレッとそう宣う下僕の顔面に枕をぶつけると、

「クククッ」

 と、避けもしないで枕を受け止めながら、忍び笑いを零されて余計に腹がたった。

「あんた…いい加減にしないと、ご褒美取りやめにするわよ?」

 そう言って、ニヤニヤ笑いながら見上げてくるファントムを睨みつけ、両手で恭しく掲げられている脚を引こうとしたのだが、グッと力を込めて引き返されたため、それ以上動かすことが出来ない。

「まあ、待て。俺が悪かったから、もう少し続けさせてくれ」

 そう言うと、跪いたままベッドに腰掛けて差し出した私の素足をさわさわと撫でながら口づけて、チュプっと親指を口に含んで舌を這わせた。



 以前頼んだケインの身辺調査のご褒美に、何が欲しいかと尋ねたら

「…脚を自由にさせてくれ」

 なんて、訳のわからないことを言い出されて、一瞬「は?」と首を傾げて二度聞きした私は、まともな思考をしている方だと思う。

「おまえの綺麗な脚で甚振られた時の事が忘れられない。
 これまであんなに興奮したことなんてなかった。
 だから、もう一度脚でいじめてほし「却下」」

「…………ダメ?」

「小首を傾げるな。可愛くないわ。
 却下です。なんで主人の私が部下に仕事させただけでそこまでサービスしてやらないといけないのよ」

 このままこの男の訴えを聞いているとまたおかしな事になりそうだと思って、皆まで言わせずにその提案を叩き潰そうと否定の言葉を2度も被せたのだが、変態は打たれ強いのかへこたれない。
 それどころか、ズイッと余計に近づいて間近に迫ってくるので、思わず同じだけ距離をとって後ずさってしまうではないか。

「わかった。
 ならば、脚を貸してくれ。
 俺が勝手に使うから。その位なら大丈夫だろう」

 …なんか、捨てられた大型犬が何が何でも自分を拾わせようとしている様な、うっとおしさを感じるわ…

 しかし、こんなしょうもない訴えでもこの男にしては必死の表情で…何度も粘り強く訴えてくる。

「…あんた…いけ図々しい……。…もういいわよ。勝手にしたら?」

 正直、ケインと逢うこともできなくなって気落ちしていたこともあり、しつこく食い下がられてそれをいちいち断ることとか、色々面倒になって若干投げやりになっていたことは否めない。

 それに、別に何かが減るというわけでもなし…ちょっと脚を好きに触らせる程度でいいのなら、まぁいっか…という、貞操観念の低さと割り切りの良さも、やっぱり前世が男だったからなのだろうか…なんて、ふと考えながら、私はドカッとベッドの端に腰を下ろして足を組み、ベッドの下で膝をついて座り込む男の目の前に片足を差し出したのだった。



 そうして、ペットに与えるおやつ代わりの様な気持ちで素足を晒し、下僕の目の前に差し出すと、

「……ちゅぷ……はぁ…」

 静かな寝室に、私の足の親指を口に含みながら足の甲に舌を這わせる、逞しい男の悩ましい吐息が微かに響く。
 男―――ファントムは、骨ばった長い指先で私の脹脛ふくらはぎすねに指を這わせて、足先の指の股や土踏まずなんかも丹念に舐めあげるので、時々ツーっと敏感な所をなぞられると、思わずピクンっと肩を揺らして脚を引こうとしてしまう。

「…まだ終わっていない。引っ込めようとするな」

 そう言いながら、レロリと丹念に舌を這わされて、くすぐったいようなもどかしいような刺激に身を捩る。

「~~~~っ!! しつっこいのよ!……ンっ」

 思わず引っ張られるままに脚を取られ、お尻の後ろに両手をついて座ったまま背中を反らせて吐息を漏らすと、脹脛ふくらはぎを柔く揉んでいた指を少しずつ上の方へ滑らされ、それに倣って5本の指の間を一つずつ丁寧に這わせていた舌も、徐々に徐々にといった緩慢な動きで舐め上げてきて………

 気づいたら、ネグリジェも足の付け根の際どいところまで捲くりあげられており、知らない内に広げられた内腿うちももの敏感な所にまで舌を這わせられて、強く吸い付かれる度にビクビクと体を揺らして、熱い吐息を溢していた。

「ぁっ…んっ……も…いい…でしょ……も…終わ……」

 膝をつくファントムに抱き込まれるように脚を抱えられて、夢中になってももの敏感な部分に舌による愛撫と口づけを受けていると、つま先に熱くて硬いものが触れ……その感触が何か思い出す前から、ムニムニと足の裏で刺激すると、その逞しい体躯がビクビクと反応を返した。

「ぁ…っ……ちょ…待…」

「……人の脚を舐めながら、勝手に勃たせてるんじゃないわよ…」

 なんて、散々やりたいように嬲らせたお返しに、すっかり張り詰めて、暴発寸前といった様子の股間の昂りを指の股で挟んで擦ると、ファントムはこれまでの余裕も消え失せた様に焦りを見せ始めたので、私はここぞとばかりに激しい動きで上下に擦り上げる。

「ミラ…まだ終わってないから…ちょっと…っ」

 余裕のない態度でそう言いながらも、またもや私の足に股間を押し当ててくる下僕にイラッとして胸ぐらを掴み上げ、

「あんた…これ以上上まできて何するつもりだったのよ…。
 それ以上変な所触ってきたら潰すわよ」

 なんて言いながら、足裏の踏みつける力を強くすると、より強い力で脚を抱き込まれる。

「…ていうか、いつまでも相手してられないんだから、いい加減終わりなさい」

 そうして、若干乱暴とも言える動きで股間を踏みつけてグリグリと押しつぶすと、

「あああっ!またっ!」

 と、悶えながらギュッと私の腰を抱き込んで、ブルブルと体を震わせて暴発したのだった。




 まあ、そんなこんなのやり取りも時々あったものの、日々は穏やかに過ぎていき……成人と見られる16歳の誕生日まで、あと3ヶ月もない程月日が経った。

 貴族社会的に、16歳を超えると正式に婚姻を結ぶことができるようになるため、もっと幼い時点で婚約者を決められることも少なくないが、16歳~20歳辺りの内に本腰を入れて結婚相手を探す家が多い。

 私は幼い頃からこの家を継ぐことを父母に伝えてあったので、そのための教育も受けさせてもらい、他の親族を含めた周りを認めさせるように実績も上げてきた。
 なので、私は嫁ぎ先ではなくこの家に嫁いでくれる婿を探さなくてはならず、釣り合いのとれる家柄の次男・三男といった辺りの男性との縁談がひっきりなしに我が家に舞い込んでいる。
 こう言ってはなんであるが、我が家は家格も高く財産も多い有力貴族ではあるものの、後継となる人間が一人娘の私であることからチョロいと思われがちなため、有象無象の婿候補の推薦自薦もひっきりなしなのだ。
 しかし、私は私で、家に籠もるのが女性らしいとされる風潮の中、女性であってもちゃんと領地に貢献した上で後継者に成り上がったとの自負もあるため、このようなバカ男など、及びでないのが正直な気持ちである。
 もちろん、家政を取り仕切りながらも私のすることに口を出さない、賢い男性であるならば否やはないけれども…あとは面倒な親族が控えていなければ、こちらからお願いしたいとも思っている。

 取り敢えず、家を継ぐには婚姻して後継を残すことも必要であるため、結婚すること自体は仕事のようなものだと割り切ることは―――既に幼い頃から出来ていた。

 市井で暮らしていた弟が、そういった貴族の婚姻を理解できているとも思えなかったので、そういう意味で傷の浅いうちに離れることができて…良かったのだと、思いたい。
 例え、婚姻相手と自分がそれぞれ愛人を囲おうと、相続などで揉めることなくその家を運営できるのであれば、それは貴族としてアリなのだ。

 弟を人目にさらさないように別館に閉じ込めて愛人のように囲うなんて……考えるだけで私の前世の倫理観が、激しく私の心を攻撃してくるけれども……少しだけ、その状況を想像して昏い喜びを感じる自分がいることも否定できなかった。



「今日はバンダム宰相の訪問だったわね………」

 なんて、鏡の中で徐々にメイクを施されていく自分を眺めている内に、徐々に思考が暗黒面に陥っていることに気づき、あえて考えを切り替えるように声を出して状況を確認する。

「はい。本日は旦那様にご領地についてのご相談があるとのご用向きと承っております。
 その際、ご長男様を付添いになられるそうなので、そのお相手をお嬢様に……とのことです」

 まあ、今日も父への用事にかこつけたお見合いなのね…

「そう…」

 わかっていたことを確認しただけだったので、他に特に言うこともなく、返事のみの言葉を返して小さくため息をつく。

 また今日も、同じ年頃の相手と出会って、二人でお話…みたいな流れになるのかしら…?
 
 とは言え、バンダム宰相の長男ねぇ……
 
 とりあえず褒めとけば良いだろう的な会話しかできない、頭の軽いボンボンと苦痛の時間を過ごす位だったら、お父様と相手の仕事の会話に参加させていただいた方がとっても有意義なんだけど…

 何故彼がその様な場に来るのか……

 いろいろ聞こえてくる彼の噂をなんかを思い出し、思わず大きく息を吸い込んで再びため息を吐き出した。

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