元男子高校生が貴族の令嬢に転生しましたが…どうやら生まれた性別を間違えたようです

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第10話 ミランダもうすぐ18歳・ケイン14歳

ダグラス

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 従妹で婚約者となったミランダとは、子供の頃からの付き合いがある。

 初めて会ったのは彼女が赤ん坊の頃で、私は3歳になるかならないかだった。
 その時の記憶はそれ程鮮明に思い出せるわけじゃないが、彼女は昔から可愛らしく、フワフワした淡い金髪にキラキラとした『翠緑柱の瞳』が印象的だった。
同じ色合いでも、当主たる私の父親の瞳よりも輝きが強く、その魔力の純度には誰もが期待を込めて彼女の成長を楽しみにしていた。

 そのせいか私たちが子供の頃、父の妹である叔母は何かのおりにつけて自慢したがり、ミランダを連れて里帰りして来ていたため、必然的に年齢の近い私はミランダとよく遊んだ。…遊ばれていたような気もするが…。

彼女は、何故か私より年下のくせに時々うちの長兄よりも年上のような態度で、大人のようにふるまうことがあった。
そのため、私はいつも3歳も年下のくせに言葉も達者で頭も回る彼女に太刀打ちできなかった。
最も、彼女に勝てるような子供は兄たちも含め、周辺の貴族家にはいなかったが…。
 妙に博識で、時々理知的な年上男性のような態度を見せるので、私も含めて同じ年頃の貴族子息は妙に彼女を慕っていた。(モテてた…というのかは微妙だが)

 決定的になったのは彼女が4歳、私が7歳の頃。俺が魔法学の家庭教師に授業を受けていると、一緒になって隣で聞いていた彼女が、「魔法……ボンっと火の玉出したり、ビュンっと風の刃でウィンドカッター!とかいうやつですの!?」と興奮して、まるで想像したこともないおかしなことを言い出したのだ。

 なんだ、その発想?
 魔法っていうのは、ほとんど感覚特化とか身体強化。できても状態異常回復程度なんて常識だろうに。
 ………まぁ、そうは言っても、まだ子供だしな。

 いつも冷静で賢い彼女が言うこととも思えなかったが、子供らしく興奮した様子の従妹が可愛くて、思わず素直になれずからかってしまったが……3歳も年下の女の子に泣きながらボコられた。

 魔法の発現なんて、そんなに幼い頃から出るものじゃないというのに、彼女は早くも4歳で身体強化を会得し、年上の男をタコ殴りにしたのだ。私だって、別に弱い方じゃない。むしろ、兄たち以外にケンカで負けたことなどなかったのが自慢でもあったのだ。
しかも、何かの格闘技でも習得している様な、妙に洗練された動きで襲い掛かってくるので、私は殴られながら魅せられた………。

 コレが『恋』か……(*´ω`*)

 彼女の魅力を知ると、やたらと寄ってくる弱々しくて可愛らしいだけの他の女など目に入らなかった。
 あんなに美しく、賢く気高く力強い女なんているわけがない。
その上、時々私を畜生を見るような蔑んだ目で見るので、ゾクゾクして股間が熱く滾った。…それが初めての精通でもあったのはいい思い出だ。
 それ以来、彼女がうちに遊びに来たり、私がクロイツェン侯爵領に遊びに行ったりすると、後ろを付いて回った。
ずっと一緒にいたかったのだ。 
しつこく付け回すと、本当に嫌そうにしながら人気のないところで私を構ってくれるので、やめられなかった。(あまりのウザさに建物の陰で〆られたとも言うが)

 しかし、幸せな子供時代にも終わりは来る。

 彼女は、弱冠12歳でクロイツェン侯爵を継ぐために侯爵に付いて領地経営を学びだしたのだ。
いくら跡取りとはいえ、さすがに12歳は早い。傑物と言われるうちの長兄ですら15歳ごろから父について学びだした程度だ。
 幼い頃から神童の誉れの高い従妹はさすがだと、親戚一同感心したものだった。そして、それ以降クロイツェン侯爵領は更なる発展をとげた。彼女が関わってから、目に見えて領内が豊かになったと、誰もが口にする程に。
 農地改革に伴う食文化の発展、教育制度の充実、貿易の主軸となり得る有力商品の開発、医療の発展、インフラの整備など、彼女の痕跡が残るものを挙げたらキリがない。

 クロイツェン侯爵領に女神が舞い降りた

 そう、国内で噂される程のめざましい発展だった。
 当然、国王陛下の関心も高いものであり、彼女が唯一の跡取りで一粒種でなければかなり強硬な手を使ってシャルル王太子の妃とされていただろう。―――尤も、すでにシャルル王太子がかなりご執心だという噂もあったので、このままでは近いウチに王太子妃となっていたかも知れず、断った侯爵夫妻にはお礼を言いたいほどである。

そんな彼女の噂を聞くに連れ……

 彼女に釣り合うような男になりたい。

 そう思うのは、彼女を崇拝する男としては、当たり前の欲求だと思う。しかし、女の下に立つことについてよく思わない輩も少なくないのが難点だったが…幸い私の家族は、昔から私達の力関係を知っていたので、そのことについて反対されることはなかった。

 自分は彼女程の傑物にはなれなくても、せめて彼女を支える人間になりたい。…そう思った末に、俺は騎士団に入った。
 別に文官を目指しても良かったが、彼女の改革は文化面に特化していたのか、クロイツェン侯爵領が文化的な発展を遂げた半面、軍事方面が追い付いていない様だったので、その方が彼女の近くに食い込めると考えた。 
そう決めた時、私の人生はすべて彼女に賭けていると言っても過言ではない状態になっていたが、それでもかまわない。
 …その後5年も会えなくなるのは誤算でしかなかったのだが、その分想像で彼女を失った喪失感を補えば乗り越えられた。
想像の彼女では補えない、リアルな部分は娼館にでも通って男だろうが女だろうが構わず解消することにしたが…心は満たされなかった。

 しかし、その間も父や叔母や侯爵に訴え、婚約の打診はしつこく続けてもらっていたが、父や母にしてみれば、私がどれだけミランダを欲しているか知っていたので、仕方なし…というところだろうか。
幸い、当時のクロイツェン侯爵領とよしみを結びたい領地は多く、我が家も同様であったため、彼女を射止める協力は最大限してもらえたといえる。

 その甲斐あって、先日婚約までこぎつけることができたのだが、久しぶりに会った従妹は、すっかり大人の女性になっており、想像以上に美しく、魅力的になっていた。
そして、私が惹かれた強さは何も変わらず…彼女を抱擁し、その柔らかな感触や芳しい香りに酔いしれていると、容赦ない一撃食らって悶絶させられたものの、5年の不在を埋めるに足る、シビれる拳だと思った。

 …正直、少し勃った。厚い騎士服の裾で隠すことができて本当によかったと思う。
 …それとも、ゴミを見るような蔑む眼差しで見られるのも良かっただろうか…?

 しかし、あの時婚約を了承してくれた彼女が、私を同じように想っていると思える程、おめでたいわけではないが…あの時の彼女は、確かに私の言葉に心を動かし、その思いに応えようとしてくれていたと感じている。
ならば、今この時点で自分だけが合法的にでも彼女を縛れるなら、それでも良いと思った。
彼女と一緒にいられる大義名分を手に入れたら、あとはこれからでも徐々に関係を深めていけば良いと思える余裕もできるのだから。

 初めて交わした約束のキスも拒否されることなく、むしろ震えるようにしがみついて、積極的に応えてくれる可愛らしいミランダを堪能できたので、その夜は新しい彼女の魅力に取りつかれると、夜の自主鍛錬も新しいステージに突入した。

 全ては希望通り、順調に進んでいたと思うのだが……時々その笑顔に陰りがあるように見えるのは…私の気のせいだろうか?




 彼女が憂えている事が何なのか……いつか知りたいと思っていたが…まさかあんな形で知ることに成るとは思いもしなかった。
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