社畜が生まれ変わって猫神様になり、イケメン猫ヲタに(性的に)食われるお話

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3.猫神様は体から絆される

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 転生直後子猫だったプリティな私の黒猫ボディは、5年を経てこの地の風土に馴染んで成猫サイズに成長したのだと、教えられた。
 地球の家猫としては大型種に分類されるだろうけども、私としてはまずまず常識的なサイズだったことにホッとしている。

 今の姿は、大きめな短毛種の黒猫で、毛並みは神官長の毎日のブラッシングでツヤツヤに黒光りしている。
 金色の瞳はそのままであるが、去年あたりから額に赤いルビーのような石が、目視で確認出来る位に大きくなっていてびっくりした。

 最初の頃は、毛をかき分けてようやく確認出来る程度の大きさだった。
 それが徐々に大きくなってきたので、額に出来物ができたかと思って神官長に相談したのだが……
 それこそが神獣としての証であり、貴石のような額の石は魔力特化した神猫の巨大な魔力を操るために必要な器官であると言われて安心した。

「ハァハァ………この石、舐めてみても…ブホッ…」

 両手で顔を包み込まれながら、至近距離でされるがままに額の石を確認される。
 最初はこの男も真剣な表情だったので、彼の間近で見ても整った美貌に感心しながら額を差し出て大人しくしていたのだ。
 しかし、身悶えしながらキモいことを言いだしたので、みなまで言われる前に顔面にガチめの猫パンチをお見舞いすると、アスランは寝台の端まで吹っ飛んだ。

 ちっちゃくても神獣なので、力は強いのです。

 頑張って大人しくしていようと思っていたけれど、もともとそんなに我慢強い方だったわけではなく……最近神官長のキモさに物理で対処することが増えてきている。
 …やっぱり幼い動物の体だと、ストレス耐性がかなり低下しているかもしれない。
 ―――ていうか、変態に気を使うのもバカバカしく、彼に対する遠慮が年々無くなってきたと言っても良い。

 …殴られて嬉しそうにしているアスラン神官長の姿もやっぱりキモかったので、構わず振り払って逃げればよかったなと思ったけども。

 ただ…この子の手付き…めっちゃ気持ちよかったりするのよね…

 私は―――認めたくないが―――彼の趣味嗜好は否定(スルー)しつつも、その指先から施される手技により、体も随分懐柔されているのかもしれなかった。




「ミーア様も…そろそろ大人になられるのですね」

 額石の確認を含めた健康診断が終わると、そのままグルーミングというか全身マッサージに移行する。

 アスラン神官長は、自分で言ったセリフに何を思ったのか艶かしくも頬を染め、私のお腹を撫で回しながらウットリとため息をついた。
 その手付きは、愛するペットに対する他意のないモノだと思う。思うんだけど…

『……んっ……突然何?
 ていうか…何を…根拠に……っ…そ…んなこと言い…ぁっ…出すのよ?』

 この流れるような手技に骨抜きにされて、鼻にかかった甘え声で途切れ途切れに反応するが、ビーンと伸びた後ろ足は緊張しきってビクビクと震えている。

 あああ…もう、たまんね。

 ツボを抑えられているっていうか…最初は普通にベッドの上で背中をブラッシングされてただけだったのに、いつの間にか急所晒してゴロゴロ言わされているとか………変態のくせにテクニシャン、怖っ。

 とはいえ、結局私の体は猫なので、全く性的な危機感が芽生えることなどない。ないったらない。
 しかも神官長は、初めて出会った頃からずっと(自称)下僕であり続けているので、私を害する心配など全くしていなかった。

 ある意味、変態は変態なりの倫理があると思っているので、「これ以上の危険はない」と信じてしまっているのだ。

 ……なんか、いつの間にか体から慣らされてる気がしなくもないが、今更この手から離れられると思えないのが怖い。

 快楽に流されやすい動物ボディがいけないのだろうか…だってなんか…気持ちよすぎるんだもの

 …脳内でそんな否定的回想を続けていると、アスラン神官長は一人語りの様に言葉を続けた。

「小さな子猫の姿でここにいらしてから、早5年。
 額石も育って、火炎石のように赤く染まってきました。
 腹立たしいことですが、雄を誘う甘い芳香を纏われ、その匂いに誘われる有象無象現れて…
 骨格もしっかりとしながらも嫋やかで…大人の女性になりかかっています。
 ほら、こうして撫でると胸が少しずつ張ってきて、腰のあたりに丸みを帯びて……」

 そう言いながら、お腹にあるおっぱいの辺りを撫で回されて、不覚にも尻尾の根本がモゾモゾして落ち着かない。

『にゃぁ…っ』

 と媚びるような鳴き声が漏れかけて、息を飲み込んだ

 落ち着け…落ち着け、私。
 こんなの、獣医の触診みたいなもんなんだから、イチイチ反応するんじゃない、私。

 てか、乙女の胸(腹)を無遠慮にまさぐるなっ!!

 そう思って襲いくる衝動を堪えながら、アスランの言葉に耳を傾けた。

「……そろそろ伴侶を迎えるに、良い頃合いかと……」

 その言葉のトーンが妙に低くて少し気にかかるが、その言葉の内容は聞き捨てならなかった。

 伴侶…猫のだよね。多分。

 元人間で、未だに人間(前世)の意識を失っていない私には、ピンとこない。

『伴侶ねぇ…。
 はぁ……どっかに私に見合うような、いい雄猫(笑)でもいるの?
 私ですら、数百年ぶりのレアものなんでしょ?
 そもそもが、そういうお見合い形式での繁殖方法なわけ?
 神殿って、そんなブリーダーみたいなこともするのかしら?

 ………どっちにしても、今はここにいてゆったりしてる方がいいから……伴侶とか、番とか…興味ないなぁ』

 未だに人間の時の感覚が強く、イマイチ猫としての実感が乏しい私にとって、それは何気ない言葉だった。
 もちろん、ペットの繁殖の様に言われた事に傷つくほどヤワでもない

『ここでこのままずっといちゃだめ? あなたといるの、嫌いじゃないわ』

 “嫌いじゃない”と“好き”の間には、深くて広い溝があるんだけど…その違いを説明する必要はない。
 誤解するなら勝手にすればいいのである。

 内心腹黒い考えを頭に浮かべながら、にゃ~んとあざとく媚びるように見上げて鳴けば、私に骨抜きの猫オタクは真っ赤になってブンブンと首を横に振る。

 そうよね、そうよね。
 私がお嫁に行っちゃったら、寂しいわよね?
 むしろ婿取りしろって言うかもしれないけど、猫と結婚とか、マジないわ。
 時々すり寄ってくる犬ケダモノとかじゃ、種族違いすぎるし。
 それに………言ってみたものの、ホントはレアすぎてそういう同種族…滅多にいないんでしょ?
 知ってたけど。

 心でニヒヒと笑いながら、スリスリとその手に顔を擦り寄せると、優しく背中を撫でられて、そのままグッと四肢を伸ばして背中を反らす。
 ついでにその腕に尻尾でも絡めてやればイチコロだ。

「あああ、やっぱり例え同族の方であっても、貴女が誰かのものになるなんて…許せないっ!
 私が一生誠心込めてお仕えするので、ずっと一緒にいてください!
 私ごときがと思っていましたが……ミーア様にお許しいただけるのなら、私は………」

 力の籠もった手の心地よさにすっかりその話題を頭から消し去って、夢見心地でウトウトしていた私は、アスラン神官長が頬染め、耳まで真っ赤にしながら俯いてボソボソと呟いていた後半のセリフを聞いてはいなかった。
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