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ただならぬレリアンの様子に思わず立ち止まる。
戸惑いを隠しきれていないセドナーがレリアンに話しかけているが耳に入っていない様にディーダが警戒を強めた。
低い声だったのでルフィナとシエルナード王子には聞こえていなかったのだろう。
私たちの様子に先に気付き、レリアンの存在と様子に気付いた時には遅かった。
「ひどいわっ!ルフィナ、ひどい!」
掴みかかる勢いでルフィナに攻め寄る。
「あなたにはセドナーがいるじゃない!私がシェル様を慕っているのを知っていたのに!シェル様も私に優しくしてくれていたのを知っていたのに!財力を盾に婚約者になるなんて酷すぎるわ!」
名指しされたセドナーが思わずといった調子で「えぇ!?」と情けない声を上げる。
「なんで私の大切なモノをいつも奪うの!?ひどいわっ!!!」
今日は涙をポロポロと零しながらルフィナを攻め立てている。
いつも以上の剣幕にいつも死んだ目でやり過ごすルフィナも戸惑いを隠せない。
「何度も言うけど私とセドナーはただの従兄妹よ?それに私とシェルは互いの希望で婚約したの」
珍しくルフィナが公衆の面前で大きな声を出し反論するがレリアンは聞いちゃいない。
流石のセドナーも今日ばかりはレリアンに引かせようと宥めている。
その喚きに苛立った声を上げたのはシエルナード王子だった。
「レリアン嬢!私が妃に望むのはルフィナだ!メロウェイ家の財力も、血縁関係も関係ない!やっと婚約出来たのに水を差さないでくれ!」
シェルだった頃いつも温厚で優しく、声を荒げて怒ったところなど見たことがない。
それは抑えていたとかでなく、本当に穏やかな性格だからというのは親しかった私達には分かる。
そんな初めてみるはずの怒りの声にレリアンは庇護欲を誘う見た目を全力で活かして悲劇のヒロイン宜しくシエルナード王子によろけつつしなだれるよう抱きつきにいった。
空気を読めない…いや、読まないでの行動にしてもメンタルすごいな!
「可哀想なシェル様…そう言えと伯爵家になったメロウェイ家に圧力をかけられているのね…」
ウルウルとした垂れ目からホロホロと流れる涙は、レリアンだけを見れば儚くキレイで、可哀想な悲恋のヒロインそのものだ。
しかしシエルナード王子の表情は怒り一色。
肩にある手はどう解釈しようにも抱き止めるというより拒否で掴んでるようにしか見えない。
「そもそも私は君に優しくした覚えはない」
怒りを抑えているからか絞り出すようにシエルナード王子がレリアンを睨みながら言い渡した。
が、それを聞いてあろうことかレリアンはシエルナード王子に抱きついたのだ。
「そんな苦しそうな声で…あぁ…シェル…」
レリアンの返しにシエルナード王子の表情が引き攣ったその瞬間、横にいたディーダが動いた。
「婚約者が発表されたばかりの殿下に勝手に抱きつくなど充分に不敬罪が成立するな!」
レリアンをシエルナード王子から引き剥がし、腕を後ろ手に捻り跪かせるまであっという間だった。
「遅いよディーダ…」
「いやいや、肩掴んで待ったをかけるとか思わねーだろー」
やれやれといった表情になったシエルナード王子が「ふう」と息をつく。
「だってこれくらい明白じゃ無いと一応伯爵令嬢だから言い逃れされたら困るだろ?ちゃんと捕まえられるようにしないとさっ」
ニカッと笑うディーダの言葉遣いは4人で遊びに出掛けていた頃のままだ。
なんだか少しホッとした気持ちを甲高い声がかき消す。
「なんで!?どうしてなの?ルフィナの差し金ね!ひどいわ!ルフィナ、ひど過ぎる!」
そうルフィナに矛先を変えたレリアンの前に、静かにルフィナが進み出た。
戸惑いを隠しきれていないセドナーがレリアンに話しかけているが耳に入っていない様にディーダが警戒を強めた。
低い声だったのでルフィナとシエルナード王子には聞こえていなかったのだろう。
私たちの様子に先に気付き、レリアンの存在と様子に気付いた時には遅かった。
「ひどいわっ!ルフィナ、ひどい!」
掴みかかる勢いでルフィナに攻め寄る。
「あなたにはセドナーがいるじゃない!私がシェル様を慕っているのを知っていたのに!シェル様も私に優しくしてくれていたのを知っていたのに!財力を盾に婚約者になるなんて酷すぎるわ!」
名指しされたセドナーが思わずといった調子で「えぇ!?」と情けない声を上げる。
「なんで私の大切なモノをいつも奪うの!?ひどいわっ!!!」
今日は涙をポロポロと零しながらルフィナを攻め立てている。
いつも以上の剣幕にいつも死んだ目でやり過ごすルフィナも戸惑いを隠せない。
「何度も言うけど私とセドナーはただの従兄妹よ?それに私とシェルは互いの希望で婚約したの」
珍しくルフィナが公衆の面前で大きな声を出し反論するがレリアンは聞いちゃいない。
流石のセドナーも今日ばかりはレリアンに引かせようと宥めている。
その喚きに苛立った声を上げたのはシエルナード王子だった。
「レリアン嬢!私が妃に望むのはルフィナだ!メロウェイ家の財力も、血縁関係も関係ない!やっと婚約出来たのに水を差さないでくれ!」
シェルだった頃いつも温厚で優しく、声を荒げて怒ったところなど見たことがない。
それは抑えていたとかでなく、本当に穏やかな性格だからというのは親しかった私達には分かる。
そんな初めてみるはずの怒りの声にレリアンは庇護欲を誘う見た目を全力で活かして悲劇のヒロイン宜しくシエルナード王子によろけつつしなだれるよう抱きつきにいった。
空気を読めない…いや、読まないでの行動にしてもメンタルすごいな!
「可哀想なシェル様…そう言えと伯爵家になったメロウェイ家に圧力をかけられているのね…」
ウルウルとした垂れ目からホロホロと流れる涙は、レリアンだけを見れば儚くキレイで、可哀想な悲恋のヒロインそのものだ。
しかしシエルナード王子の表情は怒り一色。
肩にある手はどう解釈しようにも抱き止めるというより拒否で掴んでるようにしか見えない。
「そもそも私は君に優しくした覚えはない」
怒りを抑えているからか絞り出すようにシエルナード王子がレリアンを睨みながら言い渡した。
が、それを聞いてあろうことかレリアンはシエルナード王子に抱きついたのだ。
「そんな苦しそうな声で…あぁ…シェル…」
レリアンの返しにシエルナード王子の表情が引き攣ったその瞬間、横にいたディーダが動いた。
「婚約者が発表されたばかりの殿下に勝手に抱きつくなど充分に不敬罪が成立するな!」
レリアンをシエルナード王子から引き剥がし、腕を後ろ手に捻り跪かせるまであっという間だった。
「遅いよディーダ…」
「いやいや、肩掴んで待ったをかけるとか思わねーだろー」
やれやれといった表情になったシエルナード王子が「ふう」と息をつく。
「だってこれくらい明白じゃ無いと一応伯爵令嬢だから言い逃れされたら困るだろ?ちゃんと捕まえられるようにしないとさっ」
ニカッと笑うディーダの言葉遣いは4人で遊びに出掛けていた頃のままだ。
なんだか少しホッとした気持ちを甲高い声がかき消す。
「なんで!?どうしてなの?ルフィナの差し金ね!ひどいわ!ルフィナ、ひど過ぎる!」
そうルフィナに矛先を変えたレリアンの前に、静かにルフィナが進み出た。
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