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第1章 異世界でも俺はこき使われる
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「これは早く逃げないとね。チェルノ、おんぶしようか?」
「お前は逃げるなここで死ね」
「……ソウシは俺が抱いて逃げる」
「お前ケガしてるだろうが!」
やいのやいの騒いでいるうちに壁にも大きなヒビが入り始めた。
これは一刻も早く逃げなければならない。
けれど……。
「ちょ、ちょっと待った!」
俺はチェルノの腕を掴んで呼び止めた。
「え~、なになに~、どうしたの~?」
「大事なことを思い出した! チェルノ、頼む! 空間の歪みを探して俺を元の世界に帰してくれ!」
俺としたことがうっかりしていた。
そもそもこんなメチャクチャなメンバーについてまでこの旅を続けたのは、魔獄島に元の世界へ帰れる空間の歪みがあるからだった。
この島がなくなる前に早く帰らないと!
「えっと、みなさん、今までありがとうございました! 本当にお世話になりました! 別れを惜しむ時間が惜しいのでさっさと歪みを探してパッと帰ろう! お元気で! さようなら! はい! 解散!」
早口で一応の今までのお礼と別れの言葉を告げた。
なのにみんなポカンとしている。
ああっ、もう時間がないのに!
すると、突然ドゥーガルドが俺を抱き抱えた。
「え? え? えぇぇぇぇ!? な、なにしてんだよ! ドゥーガルド! おろせ! 帰れないだろうが!」
「……いやだ。絶対に帰さない」
そう言うとドゥーガルドはズンズンと出口に向かって歩き始めた。
しかし、途中で突然ガクン、と膝をついた。
「……っ」
どうやら魔王との戦いでの傷が痛むようだ。
ドゥーガルドには悪いが、俺にとってはチャンスだった。
俺がドゥーガルドの腕から逃れようとしていると、
「ケガしてるんだから無理すんなよ、剣士様」
アーロンがしゃがみ込んで、鼻で笑いながらドゥーガルドの顔をのぞき込んだ。
「……っ、黙れ」
ドゥーガルドは苛立たしげにアーロンを睨んだ。
「だから無理すんなよ。……こいつを帰したくないのはお前一人じゃないんだから」
そう言うと、アーロンはようやくドゥーガルドの腕から抜け出た俺を、ひょい、といとも簡単に、肩に担いだ。
「ア、アーロン!?」
「静かにしろ、うるせぇな。おい、さっさと引き上げるぞ」
「……すまない、アーロン。恩に着る。謝礼金は帰ったら渡す」
「いらねぇよ。もらったらこいつがお前のみたいでなんか……癪だ」
「……それならば是が非でも送りつけよう」
犬猿の仲だった二人が嘘のように笑い合っている。
友情がここに生まれたようで実に微笑ましい光景ではあるけれど……、
「俺を降ろせー!」
アーロンの背中をドンドンと叩く。
しかしビクともしない。
それどころか尻をむにむにと揉まれて力が抜けてしまった。
「うひゃぅ!」
「やっぱりいいケツだな。今夜はたっぷり可愛がってやるからな」
「うああああああ! 絶対帰る! 家に帰るぅぅぅぅ! チェルノ! 今だ! 今こそ後ろを狙え! 暗殺技術を披露するんだ! それで俺をさっさと元の世界に帰してくれぇぇ!」
チェルノに助けを求めるが、アーロンの後ろをトタトタとついてくるチェルノは首を傾げた。
「え~、別に暗殺技術を披露するのはいいけど、でも今は一緒に逃げた方が得策だと思うよ~」
「なんで!? 今の状況のどこを見てそう思えるの!?」
さっきの戦いでもしかしてチェルノは目をやられたのか!?
「だって普通に考えて、空間の歪みを探し出して魔法陣描いてってやってたらこの島沈んじゃうよ~?」
「うっ……」
確かに、チェルノの言う通りだ。
島の崩壊は恐ろしいほど早く進んでいる。
悠長に空間の歪みを探している時間がないのは明らかだ。
でも……、
「いやだぁぁぁぁ! 帰るぅぅぅぅ!」
俺の悲しい咆哮は崩れていく城に虚しく響くだけだった。
「お前は逃げるなここで死ね」
「……ソウシは俺が抱いて逃げる」
「お前ケガしてるだろうが!」
やいのやいの騒いでいるうちに壁にも大きなヒビが入り始めた。
これは一刻も早く逃げなければならない。
けれど……。
「ちょ、ちょっと待った!」
俺はチェルノの腕を掴んで呼び止めた。
「え~、なになに~、どうしたの~?」
「大事なことを思い出した! チェルノ、頼む! 空間の歪みを探して俺を元の世界に帰してくれ!」
俺としたことがうっかりしていた。
そもそもこんなメチャクチャなメンバーについてまでこの旅を続けたのは、魔獄島に元の世界へ帰れる空間の歪みがあるからだった。
この島がなくなる前に早く帰らないと!
「えっと、みなさん、今までありがとうございました! 本当にお世話になりました! 別れを惜しむ時間が惜しいのでさっさと歪みを探してパッと帰ろう! お元気で! さようなら! はい! 解散!」
早口で一応の今までのお礼と別れの言葉を告げた。
なのにみんなポカンとしている。
ああっ、もう時間がないのに!
すると、突然ドゥーガルドが俺を抱き抱えた。
「え? え? えぇぇぇぇ!? な、なにしてんだよ! ドゥーガルド! おろせ! 帰れないだろうが!」
「……いやだ。絶対に帰さない」
そう言うとドゥーガルドはズンズンと出口に向かって歩き始めた。
しかし、途中で突然ガクン、と膝をついた。
「……っ」
どうやら魔王との戦いでの傷が痛むようだ。
ドゥーガルドには悪いが、俺にとってはチャンスだった。
俺がドゥーガルドの腕から逃れようとしていると、
「ケガしてるんだから無理すんなよ、剣士様」
アーロンがしゃがみ込んで、鼻で笑いながらドゥーガルドの顔をのぞき込んだ。
「……っ、黙れ」
ドゥーガルドは苛立たしげにアーロンを睨んだ。
「だから無理すんなよ。……こいつを帰したくないのはお前一人じゃないんだから」
そう言うと、アーロンはようやくドゥーガルドの腕から抜け出た俺を、ひょい、といとも簡単に、肩に担いだ。
「ア、アーロン!?」
「静かにしろ、うるせぇな。おい、さっさと引き上げるぞ」
「……すまない、アーロン。恩に着る。謝礼金は帰ったら渡す」
「いらねぇよ。もらったらこいつがお前のみたいでなんか……癪だ」
「……それならば是が非でも送りつけよう」
犬猿の仲だった二人が嘘のように笑い合っている。
友情がここに生まれたようで実に微笑ましい光景ではあるけれど……、
「俺を降ろせー!」
アーロンの背中をドンドンと叩く。
しかしビクともしない。
それどころか尻をむにむにと揉まれて力が抜けてしまった。
「うひゃぅ!」
「やっぱりいいケツだな。今夜はたっぷり可愛がってやるからな」
「うああああああ! 絶対帰る! 家に帰るぅぅぅぅ! チェルノ! 今だ! 今こそ後ろを狙え! 暗殺技術を披露するんだ! それで俺をさっさと元の世界に帰してくれぇぇ!」
チェルノに助けを求めるが、アーロンの後ろをトタトタとついてくるチェルノは首を傾げた。
「え~、別に暗殺技術を披露するのはいいけど、でも今は一緒に逃げた方が得策だと思うよ~」
「なんで!? 今の状況のどこを見てそう思えるの!?」
さっきの戦いでもしかしてチェルノは目をやられたのか!?
「だって普通に考えて、空間の歪みを探し出して魔法陣描いてってやってたらこの島沈んじゃうよ~?」
「うっ……」
確かに、チェルノの言う通りだ。
島の崩壊は恐ろしいほど早く進んでいる。
悠長に空間の歪みを探している時間がないのは明らかだ。
でも……、
「いやだぁぁぁぁ! 帰るぅぅぅぅ!」
俺の悲しい咆哮は崩れていく城に虚しく響くだけだった。
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