勇者様の荷物持ち〜こんなモテ期、望んでない!〜

綺沙きさき(きさきさき)

文字の大きさ
52 / 266
第1章 異世界でも俺はこき使われる

51

しおりを挟む

****

危機一髪、といった感じで俺たちは島から脱出することができた。
けれど、俺の心境としては何にからも脱出できていないような気持ちだ。

「うっ、うっ、帰りたいよぉ……」

俺は半ば自暴自棄になって船の端で膝を抱えていた。
すると、音もなくドゥーガルドが寄り添ってきて俺の肩を抱き寄せた。

「……大丈夫だ。何も心配することはない。確かに家族と離れて心細いかもしれないが、それなら新しい家族をこっちで作ればいい。……俺と一緒に家族を作ろう。確か禁忌の魔法で男もはらませる方法もあったはずだ」
「そういうのがいやだから帰りたいんだよ!」

まるでプロポーズでもするような甘い笑みを浮かべているが、内容は結構えぐい。

「ははっ! 子供だとか家族だとかよくそんな面倒なもの作りたがるな。俺はいらねぇ。あ、でも魔法でできた穴に突っ込むのもおもしろそうだな。一回くらい経験するならアリかな」
「もうクソだとか突っ込むのも疲れたよ!」

突っ込みの必要ない平凡な日常に戻りたい……!

俺は縋る気持ちでチェルノの方に向き直った。

「チェルノ、空間の歪みって魔獄島以外にもあるよな? な?」

どうかあってくれと祈るように訊くと、チェルノは「あるのはあるけど……」となぜか言い淀んだ。

「あるけど!? なに!?」
「いやさぁ、ソウシはここに残った方が安全なんじゃないかなと思って~」
「どこが!? こんなケツを狙われる世界のどこが安全!?」

アーロンに弱みでも握られてるのか!?
ドゥーガルドにでも金でも積まれたの!?

「まぁ、貞操に関しては危険かもしれないけどさ~、でも邪神さんのソウシへの執着っぷりを見るとこのまま引くようには思えないんだよね~」

チェルノの言葉に慶介の怒りに満ちた表情を思い出して、全身に鳥肌が立った。
確かに別れ際の言葉からしても、ただではすまないことは明白だ。

「でも、だからこそ、奴がいない元の世界に戻りたいんだよ!」
「気持ちは分かるけどさぁ、正直難しいと思うよ~。だって邪神さん、最初にこの世界を征服してからソウシをこっちに連れてくるつもりだった、みたいなこと言ってたじゃん~?」

そういえば、そんなことを言っていたような……。

「ってことはだよぉ、つまり邪神さんは元の世界と行き来できるってことじゃない~? だとしたら元の世界に迎えに来られたらアウトじゃん~。それとも向こうで誰か守ってくれそうな人いるの~?」
「うっ……」

俺は言葉に詰まった。
確かに、邪神の力を持った奴が元の世界にきて俺を連れ戻そうとしたら、誰が守ってくれるというだろう……。
親は慶介を信頼しているだろうから丸め込まれそうだし、悲しいことに友達のいない俺には他に頼れる人間はいない。

「それを考えるとさぁ、こっちの方がアーロンやドゥーガルドもいるから安心だとは思うよ~」

チェルノの言葉はもっともだ。
けれど……。
ちらりとドゥーガルドとアーロンを見る。

「……ソウシ、俺は何があっても守り抜く。それが夫としての役目だ」
「仕方ねぇから、俺は一日三セックスで守ってやるよ」
「……うわぁぁぁ! やっぱり嫌だぁぁぁ! 元の世界に帰りたいよぉぉぉ!」

俺の切なる叫びは広い海原に響くだけだった。
しおりを挟む
感想 119

あなたにおすすめの小説

【完結】異世界に転移しましたら、四人の夫に溺愛されることになりました(笑)

かのん
恋愛
 気が付けば、喧騒など全く聞こえない、鳥のさえずりが穏やかに聞こえる森にいました。  わぁ、こんな静かなところ初めて~なんて、のんびりしていたら、目の前に麗しの美形達が現れて・・・  これは、女性が少ない世界に転移した二十九歳独身女性が、あれよあれよという間に精霊の愛し子として囲われ、いつのまにか四人の男性と結婚し、あれよあれよという間に溺愛される物語。 あっさりめのお話です。それでもよろしければどうぞ! 本日だけ、二話更新。毎日朝10時に更新します。 完結しておりますので、安心してお読みください。

一人の騎士に群がる飢えた(性的)エルフ達

ミクリ21
BL
エルフ達が一人の騎士に群がってえちえちする話。

義兄に嫌われようとした行動が裏目に出て逆に執着されることになった話

よしゆき
恋愛
乙女ゲームのヒロインに意地悪をする攻略対象者のユリウスの義妹、マリナに転生した。ユリウスに一目で恋に落ちたマリナは彼の幸せを願い、ゲームとは全く違う行動をとることにした。するとマリナが思っていたのとは違う展開になってしまった。

ハッピーエンドのために妹に代わって惚れ薬を飲んだ悪役兄の101回目

カギカッコ「」
BL
ヤられて不幸になる妹のハッピーエンドのため、リバース転生し続けている兄は我が身を犠牲にする。妹が飲むはずだった惚れ薬を代わりに飲んで。

お荷物な俺、独り立ちしようとしたら押し倒されていた

やまくる実
BL
異世界ファンタジー、ゲーム内の様な世界観。 俺は幼なじみのロイの事が好きだった。だけど俺は能力が低く、アイツのお荷物にしかなっていない。 独り立ちしようとして執着激しい攻めにガッツリ押し倒されてしまう話。 好きな相手に冷たくしてしまう拗らせ執着攻め✖️自己肯定感の低い鈍感受け ムーンライトノベルズにも掲載しています。 挿絵をchat gptに作成してもらいました(*'▽'*)

牛獣人の僕のお乳で育った子達が僕のお乳が忘れられないと迫ってきます!!

ほじにほじほじ
BL
牛獣人のモノアの一族は代々牛乳売りの仕事を生業としてきた。 牛乳には2種類ある、家畜の牛から出る牛乳と牛獣人から出る牛乳だ。 牛獣人の女性は一定の年齢になると自らの意思てお乳を出すことが出来る。 そして、僕たち家族普段は家畜の牛の牛乳を売っているが母と姉達の牛乳は濃厚で喉越しや舌触りが良いお貴族様に高値で売っていた。 ある日僕たち一家を呼んだお貴族様のご子息様がお乳を呑まないと相談を受けたのが全ての始まりー 母や姉達の牛乳を詰めた哺乳瓶を与えてみても、母や姉達のお乳を直接与えてみても飲んでくれない赤子。 そんな時ふと赤子と目が合うと僕を見て何かを訴えてくるー 「え?僕のお乳が飲みたいの?」 「僕はまだ子供でしかも男だからでないよ。」 「え?何言ってるの姉さん達!僕のお乳に牛乳を垂らして飲ませてみろだなんて!そんなの上手くいくわけ…え、飲んでるよ?え?」 そんなこんなで、お乳を呑まない赤子が飲んだ噂は広がり他のお貴族様達にもうちの子がお乳を飲んでくれないの!と言う相談を受けて、他のほとんどの子は母や姉達のお乳で飲んでくれる子だったけど何故か数人には僕のお乳がお気に召したようでー 昔お乳をあたえた子達が僕のお乳が忘れられないと迫ってきます!! 「僕はお乳を貸しただけで牛乳は母さんと姉さん達のなのに!どうしてこうなった!?」 * 総受けで、固定カプを決めるかはまだまだ不明です。 いいね♡やお気に入り登録☆をしてくださいますと励みになります(><) 誤字脱字、言葉使いが変な所がありましたら脳内変換して頂けますと幸いです。

ブラコンすぎて面倒な男を演じていた平凡兄、やめたら押し倒されました

あと
BL
「お兄ちゃん!一肌脱ぎます!」 完璧公爵跡取り息子許嫁攻め×ブラコン兄鈍感受け 可愛い弟と攻めの幸せのために、平凡なのに面倒な男を演じることにした受け。毎日の告白、束縛発言などを繰り広げ、上手くいきそうになったため、やめたら、なんと…? 攻め:ヴィクター・ローレンツ 受け:リアム・グレイソン 弟:リチャード・グレイソン  pixivにも投稿しています。 ひよったら消します。
誤字脱字はサイレント修正します。
また、内容もサイレント修正する時もあります。
定期的にタグも整理します。

批判・中傷コメントはお控えください。
見つけ次第削除いたします。

美貌の騎士候補生は、愛する人を快楽漬けにして飼い慣らす〜僕から逃げないで愛させて〜

飛鷹
BL
騎士養成学校に在席しているパスティには秘密がある。 でも、それを誰かに言うつもりはなく、目的を達成したら静かに自国に戻るつもりだった。 しかし美貌の騎士候補生に捕まり、快楽漬けにされ、甘く喘がされてしまう。 秘密を抱えたまま、パスティは幸せになれるのか。 美貌の騎士候補生のカーディアスは何を考えてパスティに付きまとうのか……。 秘密を抱えた二人が幸せになるまでのお話。

処理中です...