勇者様の荷物持ち〜こんなモテ期、望んでない!〜

綺沙きさき(きさきさき)

文字の大きさ
119 / 266
第2章 異世界でももふもふは正義!?

49

しおりを挟む
「……昔、本当に昔なんですけど、百年前ぐらいに十二匹の黒い獣を従えてこの辺一帯を荒らしていた魔法使いがいたんです。魔法使いと言ってもやってることはほぼ盗賊と同じようなもので街の人達は本当に困っていたそうです。それで――」
「白の魔法使いがそいつをやっつけてくれたんだよ!」

 まるで自分の手柄のように得意げに鼻の穴を膨らませて少年が言葉を継いだ。
 反省の色を見せない少年にすかさず母親が頭をぺちりと叩いた。

「アンタは黙ってなさい。……この話は昔から語り継がれていて、それでこの街の人達は黒い獣をあまり好ましく思っていないんです」
「なるほど……」

 ようやくクロに対する嫌悪の視線の理由が分かった。分かっても腹立たしいことには変わりないが。
 俺は少年の方にくるりと向き直った。

「言っとくけど、クロはその黒の使いとは全く関係ないからな」
「……でも黒の使いはご主人様の仇をとるためにまたこの街にやってくるってお話でいってたもん」

 唇を尖らせてごにょごにょと子供だましみたいな言い訳を連ねる少年に、俺は溜め息を吐いた。

「それは昔話だろ。しかも百年も前も。そいつらもとっくに死んでるよ。とにかくクロは無関係だから。こいつはすげぇもふもふのいい子だから二度と石とか投げるなよ」
「もふもふ?」

 語感が柔らかなそのワードに少年が首を傾げた。

「そう、最高のもふもふの毛並みなんだぞ。このもふもふに包まれたら一瞬で眠れるくらいすごいぞ」
「へぇ……!」

 胸を張って自慢すると、少年がキラキラと目を輝かせてクロの毛並みを見詰める。

「触ってみるか?」
「い、いいの?」

 おずおずと、でも期待を込めて少年が訊き返してきた。

「いいよ。その代わり、ちゃんとクロにさっき石を投げたこと謝ってからな」
「う……」

 少年は口ごもって少し間を置いたが、すぐにクロの前に立って頭を下げた。

「さっきは石を投げてごめんなさいっ。もう投げません」
「クロ、どう? 許してやる?」
「わふっ」

 ゆったりと尻尾を振ってクロがひと吠えした。

「許してくれるってさ。それじゃあ仲直りってことで、撫でていいよ」
「わぁ……!」

 少年はわくわくした表情で、お座りしたクロのわき腹付近をそろそろと撫でた。

「すごい! 本当にふわふわだぁ!」

 顔まで寄せて毛皮に埋もれようとする少年はすっかりクロの虜のようだ。

「へへっ、だろう? クロのもふもふは最強なんだぜ」

 誇らしい気持ちで胸を張っていると、

「ぼ、ぼくもさわりたい!」
「わたしも!」

 クロを触る少年の姿を見て耐えられなくなったように次々と子ども達がやってきて俺の周りを囲んだ。
 予想外の事態に少し戸惑う。

「え、あ、えっと、いいけど、乱暴に触ったらだめだからな」
「わかったー!」

 俺の注意に子ども達は笑顔で頷き次々とクロの体に手を伸ばした。
 さっきまで疎まれていたはずのクロの周りにはあっという間に子ども達の輪ができ、その姿は人気者そのものだ。
 中には大人までやって来て触る者もいた。

「お、なんだこの人だかり」

 気付けば背後にアーロンが立っていて、クロの周りにできた人だかりを興味深そうに見ていた。
しおりを挟む
感想 119

あなたにおすすめの小説

【完結】異世界に転移しましたら、四人の夫に溺愛されることになりました(笑)

かのん
恋愛
 気が付けば、喧騒など全く聞こえない、鳥のさえずりが穏やかに聞こえる森にいました。  わぁ、こんな静かなところ初めて~なんて、のんびりしていたら、目の前に麗しの美形達が現れて・・・  これは、女性が少ない世界に転移した二十九歳独身女性が、あれよあれよという間に精霊の愛し子として囲われ、いつのまにか四人の男性と結婚し、あれよあれよという間に溺愛される物語。 あっさりめのお話です。それでもよろしければどうぞ! 本日だけ、二話更新。毎日朝10時に更新します。 完結しておりますので、安心してお読みください。

義兄に嫌われようとした行動が裏目に出て逆に執着されることになった話

よしゆき
恋愛
乙女ゲームのヒロインに意地悪をする攻略対象者のユリウスの義妹、マリナに転生した。ユリウスに一目で恋に落ちたマリナは彼の幸せを願い、ゲームとは全く違う行動をとることにした。するとマリナが思っていたのとは違う展開になってしまった。

一人の騎士に群がる飢えた(性的)エルフ達

ミクリ21
BL
エルフ達が一人の騎士に群がってえちえちする話。

クールな義兄の愛が重すぎる ~有能なおにいさまに次期当主の座を譲ったら、求婚されてしまいました~

槿 資紀
BL
イェント公爵令息のリエル・シャイデンは、生まれたときから虚弱体質を抱えていた。 公爵家の当主を継ぐ日まで生きていられるか分からないと、どの医師も口を揃えて言うほどだった。 そのため、リエルの代わりに当主を継ぐべく、分家筋から養子をとることになった。そうしてリエルの前に表れたのがアウレールだった。 アウレールはリエルに献身的に寄り添い、懸命の看病にあたった。 その甲斐あって、リエルは奇跡の回復を果たした。 そして、リエルは、誰よりも自分の生存を諦めなかった義兄の虜になった。 義兄は容姿も能力も完全無欠で、公爵家の次期当主として文句のつけようがない逸材だった。 そんな義兄に憧れ、その後を追って、難関の王立学院に合格を果たしたリエルだったが、入学直前のある日、現公爵の父に「跡継ぎをアウレールからお前に戻す」と告げられ――――。 完璧な義兄×虚弱受け すれ違いラブロマンス

ブラコンすぎて面倒な男を演じていた平凡兄、やめたら押し倒されました

あと
BL
「お兄ちゃん!一肌脱ぎます!」 完璧公爵跡取り息子許嫁攻め×ブラコン兄鈍感受け 可愛い弟と攻めの幸せのために、平凡なのに面倒な男を演じることにした受け。毎日の告白、束縛発言などを繰り広げ、上手くいきそうになったため、やめたら、なんと…? 攻め:ヴィクター・ローレンツ 受け:リアム・グレイソン 弟:リチャード・グレイソン  pixivにも投稿しています。 ひよったら消します。
誤字脱字はサイレント修正します。
また、内容もサイレント修正する時もあります。
定期的にタグも整理します。

批判・中傷コメントはお控えください。
見つけ次第削除いたします。

お荷物な俺、独り立ちしようとしたら押し倒されていた

やまくる実
BL
異世界ファンタジー、ゲーム内の様な世界観。 俺は幼なじみのロイの事が好きだった。だけど俺は能力が低く、アイツのお荷物にしかなっていない。 独り立ちしようとして執着激しい攻めにガッツリ押し倒されてしまう話。 好きな相手に冷たくしてしまう拗らせ執着攻め✖️自己肯定感の低い鈍感受け ムーンライトノベルズにも掲載しています。 挿絵をchat gptに作成してもらいました(*'▽'*)

ハッピーエンドのために妹に代わって惚れ薬を飲んだ悪役兄の101回目

カギカッコ「」
BL
ヤられて不幸になる妹のハッピーエンドのため、リバース転生し続けている兄は我が身を犠牲にする。妹が飲むはずだった惚れ薬を代わりに飲んで。

牛獣人の僕のお乳で育った子達が僕のお乳が忘れられないと迫ってきます!!

ほじにほじほじ
BL
牛獣人のモノアの一族は代々牛乳売りの仕事を生業としてきた。 牛乳には2種類ある、家畜の牛から出る牛乳と牛獣人から出る牛乳だ。 牛獣人の女性は一定の年齢になると自らの意思てお乳を出すことが出来る。 そして、僕たち家族普段は家畜の牛の牛乳を売っているが母と姉達の牛乳は濃厚で喉越しや舌触りが良いお貴族様に高値で売っていた。 ある日僕たち一家を呼んだお貴族様のご子息様がお乳を呑まないと相談を受けたのが全ての始まりー 母や姉達の牛乳を詰めた哺乳瓶を与えてみても、母や姉達のお乳を直接与えてみても飲んでくれない赤子。 そんな時ふと赤子と目が合うと僕を見て何かを訴えてくるー 「え?僕のお乳が飲みたいの?」 「僕はまだ子供でしかも男だからでないよ。」 「え?何言ってるの姉さん達!僕のお乳に牛乳を垂らして飲ませてみろだなんて!そんなの上手くいくわけ…え、飲んでるよ?え?」 そんなこんなで、お乳を呑まない赤子が飲んだ噂は広がり他のお貴族様達にもうちの子がお乳を飲んでくれないの!と言う相談を受けて、他のほとんどの子は母や姉達のお乳で飲んでくれる子だったけど何故か数人には僕のお乳がお気に召したようでー 昔お乳をあたえた子達が僕のお乳が忘れられないと迫ってきます!! 「僕はお乳を貸しただけで牛乳は母さんと姉さん達のなのに!どうしてこうなった!?」 * 総受けで、固定カプを決めるかはまだまだ不明です。 いいね♡やお気に入り登録☆をしてくださいますと励みになります(><) 誤字脱字、言葉使いが変な所がありましたら脳内変換して頂けますと幸いです。

処理中です...