勇者様の荷物持ち〜こんなモテ期、望んでない!〜

綺沙きさき(きさきさき)

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第2章 異世界でももふもふは正義!?

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「え? あれ? アーロンは!?」
「あ、あそこにいるね~」

 チェルノが指差す先を見ると、門番を押し退けて箱の上に立つアーロンがいた。
 アーロンは一度大きく息を吸って、口を開いた。

「お前ら、今日中に門を出たいか!」

 明らかにこの門の出入りを司る者とは無関係そうな男に、そう問われて人々は戸惑いつつも頷いた。

「あ、当たり前だ!」
「今日中に出ないと商談に間に合わねぇ!」

 グーロが門の外にいるという事で一度不満を飲み込んだ人々の口からまた文句が溢れ始めた。
 その様子にアーロンはニヤリと口の端を上げた。

「なら俺達勇者一行がグーロ討伐を請け負ってやる」

 アーロンの言葉に「おお……っ!」と感嘆のどよめきが広がる。

「あ、有り難い!」
「さすが勇者様!」
「ぜひお願いします!」
「ありがとうよ!」

 救世主を見るかのように人々の目は敬意と感謝に満ちていて、ちらほらと拍手すら聞こえてきた。
 だが、もちろんアーロンがタダで人助けをするはずなどない。

「じゃあ討伐代として、一人三千ピーロいただく」

 まさか救世主から金銭の要求があるなど思ってもいなかったのだろう、みんな「……は?」と口をポカンと開けてしばらく呆けていた。

 あのバカ……ッ!

 俺はアーロンの提案に頭を抱えた。

「……ッ、ふざけるな! なんで俺達がお金を払わないといけないんだっ」

 一人が声を上げるとそれを皮切りに文句の声がいたる所から湧き上がった。

「勇者が金を取るなんか聞いたことがねぇぞ!」
「人助けが勇者の仕事だろ!」
「お前らだってそこを通れないと困るんだろ! なのになんで俺達が金を払わないといけないんだ!」

 まぁ、当然の反応だよな……。

 人々はこの門を開けられないと宣言された時以上に苛立っていた。
 しかしアーロンは自分に向けられたブーイングの嵐を前にしても平然としていて、彼らの言い分を鼻で笑った。

「勘違いするなよ。勇者は慈善事業じゃねぇ。魔王討伐も国王に雇われて相応の報酬をもらえるから請け負ってるんだ。報酬がなければ人は動かねぇ。それはアンタらの方がよく分かってるだろ?」

 アーロンの言葉に、人々は口を噤んだり歯噛みしたりと反応は様々だが、みんな言い返せないのは同じようだ。
 フッと嫌みっぽく笑った。

「俺は別に急いでるわけじゃねぇから門が開かなくても困らない。一日でも五日でも十日でも待つつもりだ」

 そう言うと、ゆっくりと箱の上に腰を下ろした。

「でもアンタらは違うだろ? 時間が経てば経つほど商品の品は悪くなるし、商談も不利になる」
「……っ!」

 言葉を詰まらせる人々に勝機を感じたのか目尻をしならせ、さらに畳み掛ける。

「はっきり言って、魔王を倒した俺達からすればグーロの討伐なんて楽勝だ。……さぁ、どうする? 門番がグーロをどうにかしてくれるのをじっと待ち続けるか、俺達に三千ピーロ出してすぐに討伐してもらうか。商売人なら時間の大事さは分かってるよな?」

 ニヤリと何とも腹立たしい笑みで、煽るように問い掛ける。
 人々はアーロンへの苛立ちを露わにしつつも、その表情はすでに答えを決めていた。

「……ッ、仕方ない、頼む! 早くグーロを倒してくれ!」
「お願いします、勇者様!」

 非難の姿勢から一転してアーロンに懇願する人々に、アーロンは満足そうに頷き立ち上がった。

「よしっ! 任せろ! 俺達がサッと解決してやるよ!」

 ドン、と力強く胸を叩くアーロンに拍手が湧き上がる。

 あの商魂たくましい手八丁口八丁、勇者より商人や詐欺師の方がよっぽど向いている気がする……。

「あ、金は門を出る時にキッチリもらうからな!」

 そう言って箱の上から降りると、門番の方へ振り向いた。

「さて、詳しい話を聞かせてもらうぜ」
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