勇者様の荷物持ち〜こんなモテ期、望んでない!〜

綺沙きさき(きさきさき)

文字の大きさ
135 / 266
第2章 異世界でももふもふは正義!?

65

しおりを挟む
 その声に、グーロたちの様子が変わった。
 これまで闘争心を剥き出しにして唸っていたグーロが、明らかに怯えた表情で震え始めた。尻尾なんか下がりすぎて股の間に隠れきっている。
 グーロはクロを見据えたままゆっくりと慎重に後ずさり、そのまま急いで背を向けて森の方へと逃げて行った。
 思いも寄らないグーロの行動に俺達はしばらく呆然と立ち尽くした。
 あれだけ臨戦態勢をとっていたグーロが突然大人しく撤退したのだ、無理もない。

「わふっ!」

 呆然としている俺に向かって、クロが振り返って吠えた。
 ぱたぱたと尻尾を振るその姿は人懐っこい犬のようで、とてもグーロをひと吠えで撤退させた張本人とは思えない。
 その可愛いらしいクロの様子に俺はようやく体から緊張が抜け、その場にへなへなとしゃがみ込んだ。

「よ、よかった……!」
「クロちゃん、すごいね~。あんな能力もあったんだ~。アーロン~! グーロは本当にもういない~?」

 チェルノが大きな声で下にいるアーロンに確認する。

「ああ、俺が見える範囲ではいない」

 森の方に目を凝らしながらアーロンが答えた。

「じゃあとりあえず城壁の外に出てみよう~。門番さん案内お願いね~」
「は、はいっ。こちらです」

 驚きのあまり茫然となっていた門番だったが、チェルノの言葉にようやく自分の職務を思い出したように門の外まで案内してくれた。

「クロ!」

 城壁を出てから俺はいても立ってもいられず、すぐさまクロの元に駆け寄った。
 そしてその大きな体を思いっきり抱き締めた。

「……ッ、びっくりしただろ! あんな危ないことしたらだめだからなっ」
「わふっ」

 叱っているのに安堵と涙が滲んだ声のせいでいまいち怒られている実感がないのか、クロは尻尾を振りながら俺の頭にすりすりと甘えるように頬ずりしてきた。

「……あと、グーロを追い払ってくれてありがとう。でも絶対次からはこんな無理をしちゃだめだからな」

 もちろん誰も被害なく追い払ってくれたクロに感謝はしている。
 でもいつも必ずしも上手くいくとは限らない。だから顔を上げてしっかりと目を見ながら釘を刺す。
 クロは「わふっ」と吠えたが、尻尾は相変わらず嬉しそうに揺れているので反省はしていないのかもしれない。
 そんなクロに呆れつつも、その可愛さに自然と笑みが零れた。

「もー、本当に分かってんのかよ」
「わふっ」

 そんな風に戯れていると、

「おい、ソウシ! もっとその犬ちゃんと躾けとけ! 危ないだろうが」

 俺達の傍まで来たアーロンがガミガミと注意し始めた。
 普段ならうるさいと顔を顰めてスルーするところだが、今回は違った。
しおりを挟む
感想 119

あなたにおすすめの小説

義兄に嫌われようとした行動が裏目に出て逆に執着されることになった話

よしゆき
恋愛
乙女ゲームのヒロインに意地悪をする攻略対象者のユリウスの義妹、マリナに転生した。ユリウスに一目で恋に落ちたマリナは彼の幸せを願い、ゲームとは全く違う行動をとることにした。するとマリナが思っていたのとは違う展開になってしまった。

お荷物な俺、独り立ちしようとしたら押し倒されていた

やまくる実
BL
異世界ファンタジー、ゲーム内の様な世界観。 俺は幼なじみのロイの事が好きだった。だけど俺は能力が低く、アイツのお荷物にしかなっていない。 独り立ちしようとして執着激しい攻めにガッツリ押し倒されてしまう話。 好きな相手に冷たくしてしまう拗らせ執着攻め✖️自己肯定感の低い鈍感受け ムーンライトノベルズにも掲載しています。 挿絵をchat gptに作成してもらいました(*'▽'*)

一人の騎士に群がる飢えた(性的)エルフ達

ミクリ21
BL
エルフ達が一人の騎士に群がってえちえちする話。

【完結】異世界に転移しましたら、四人の夫に溺愛されることになりました(笑)

かのん
恋愛
 気が付けば、喧騒など全く聞こえない、鳥のさえずりが穏やかに聞こえる森にいました。  わぁ、こんな静かなところ初めて~なんて、のんびりしていたら、目の前に麗しの美形達が現れて・・・  これは、女性が少ない世界に転移した二十九歳独身女性が、あれよあれよという間に精霊の愛し子として囲われ、いつのまにか四人の男性と結婚し、あれよあれよという間に溺愛される物語。 あっさりめのお話です。それでもよろしければどうぞ! 本日だけ、二話更新。毎日朝10時に更新します。 完結しておりますので、安心してお読みください。

お前らの目は節穴か?BLゲーム主人公の従者になりました!

MEIKO
BL
 本編完結しています。お直し中。第12回BL大賞奨励賞いただきました。  僕、エリオット・アノーは伯爵家嫡男の身分を隠して公爵家令息のジュリアス・エドモアの従者をしている。事の発端は十歳の時…家族から虐げられていた僕は、我慢の限界で田舎の領地から家を出て来た。もう二度と戻る事はないと己の身分を捨て、心機一転王都へやって来たものの、現実は厳しく死にかける僕。薄汚い格好でフラフラと彷徨っている所を救ってくれたのが完璧貴公子ジュリアスだ。だけど初めて会った時、不思議な感覚を覚える。えっ、このジュリアスって人…会ったことなかったっけ?その瞬間突然閃く!  「ここって…もしかして、BLゲームの世界じゃない?おまけに僕の最愛の推し〜ジュリアス様!」  知らぬ間にBLゲームの中の名も無き登場人物に転生してしまっていた僕は、命の恩人である坊ちゃまを幸せにしようと奔走する。そして大好きなゲームのイベントも近くで楽しんじゃうもんね〜ワックワク!  だけど何で…全然シナリオ通りじゃないんですけど。坊ちゃまってば、僕のこと大好き過ぎない?  ※貴族的表現を使っていますが、別の世界です。ですのでそれにのっとっていない事がありますがご了承下さい。

有能すぎる親友の隣が辛いので、平凡男爵令息の僕は消えたいと思います

緑虫
BL
第三王子の十歳の生誕パーティーで、王子に気に入られないようお城の花園に避難した、貧乏男爵令息のルカ・グリューベル。 知り合った宮廷庭師から、『ネムリバナ』という水に浮かべるとよく寝られる香りを放つ花びらをもらう。 花園からの帰り道、噴水で泣いている少年に遭遇。目の下に酷いクマのある少年を慰めたルカは、もらったばかりの花びらを男の子に渡して立ち去った。 十二歳になり、ルカは寄宿学校に入学する。 寮の同室になった子は、まさかのその時の男の子、アルフレート(アリ)・ユーネル侯爵令息だった。 見目麗しく文武両道のアリ。だが二年前と変わらず睡眠障害を抱えていて、目の下のクマは健在。 宮廷庭師と親交を続けていたルカには、『ネムリバナ』を第三王子の為に学校の温室で育てる役割を与えられていた。アリは花びらを王子の元まで運ぶ役目を負っている。育てる見返りに少量の花びらを入手できるようになったルカは、早速アリに使ってみることに。 やがて問題なく眠れるようになったアリはめきめきと頭角を表し、しがない男爵令息にすぎない平凡なルカには手の届かない存在になっていく。 次第にアリに対する恋心に気づくルカ。だが、男の自分はアリとは不釣り合いだと、卒業を機に離れることを決意する。 アリを見ない為に地方に移ったルカ。実はここは、アリの叔父が経営する領地。そこでたった半年の間に朗らかで輝いていたアリの変わり果てた姿を見てしまい――。 ハイスペ不眠攻めxお人好し平凡受けのファンタジーBLです。ハピエン。

【完結】異世界から来た鬼っ子を育てたら、ガッチリ男前に育って食べられた(性的に)

てんつぶ
BL
ある日、僕の住んでいるユノスの森に子供が一人で泣いていた。 言葉の通じないこのちいさな子と始まった共同生活。力の弱い僕を助けてくれる優しい子供はどんどん大きく育ち――― 大柄な鬼っ子(男前)×育ての親(平凡) 20201216 ランキング1位&応援ありがとうごございました!

推しカプのために当て馬ヤンデレキャラを演じていたら、展開がおかしくなってきた

七瀬おむ
BL
■BL小説の世界に転生した腐男子が、推しカプのために「当て馬ヤンデレキャラ」を演じていたら、なぜか攻めに執着される話。 ■だんだん執着してくる美形生徒会長×当て馬ヤンデレキャラを演じる腐男子 美形×平凡/執着攻め/ハッピーエンド/勘違い・すれ違い 《あらすじ》  伯爵家の令息であるアルト・リドリーは、幼い頃から療養のため家に籠っていた。成長と共に体調が安定し、憧れていた魔法学園への途中入学が決まったアルトは、学園への入学当日、前世を思い出す。  この世界は前世で読んでいた「学園モノのBL小説」であり、アルトは推しカプの「攻め」であるグレン・アディソンに好意を寄せる、当て馬ヤンデレキャラだったのだ。アルトは「美形クール攻め×平民の美少年」という推しカプを成立させるため、ヤンデレ当て馬キャラを演じることを決意する。  アルトはそれからグレンに迫り、本人としては完璧に「ヤンデレ」を演じていた。しかし、そもそも病んでいないアルトは、だんだん演技にボロがではじめてしまう。そんな中、最初は全くアルトに興味がなかったグレンも、アルトのことが気になってきて…?

処理中です...