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第2章 異世界でももふもふは正義!?
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その声に、グーロたちの様子が変わった。
これまで闘争心を剥き出しにして唸っていたグーロが、明らかに怯えた表情で震え始めた。尻尾なんか下がりすぎて股の間に隠れきっている。
グーロはクロを見据えたままゆっくりと慎重に後ずさり、そのまま急いで背を向けて森の方へと逃げて行った。
思いも寄らないグーロの行動に俺達はしばらく呆然と立ち尽くした。
あれだけ臨戦態勢をとっていたグーロが突然大人しく撤退したのだ、無理もない。
「わふっ!」
呆然としている俺に向かって、クロが振り返って吠えた。
ぱたぱたと尻尾を振るその姿は人懐っこい犬のようで、とてもグーロをひと吠えで撤退させた張本人とは思えない。
その可愛いらしいクロの様子に俺はようやく体から緊張が抜け、その場にへなへなとしゃがみ込んだ。
「よ、よかった……!」
「クロちゃん、すごいね~。あんな能力もあったんだ~。アーロン~! グーロは本当にもういない~?」
チェルノが大きな声で下にいるアーロンに確認する。
「ああ、俺が見える範囲ではいない」
森の方に目を凝らしながらアーロンが答えた。
「じゃあとりあえず城壁の外に出てみよう~。門番さん案内お願いね~」
「は、はいっ。こちらです」
驚きのあまり茫然となっていた門番だったが、チェルノの言葉にようやく自分の職務を思い出したように門の外まで案内してくれた。
「クロ!」
城壁を出てから俺はいても立ってもいられず、すぐさまクロの元に駆け寄った。
そしてその大きな体を思いっきり抱き締めた。
「……ッ、びっくりしただろ! あんな危ないことしたらだめだからなっ」
「わふっ」
叱っているのに安堵と涙が滲んだ声のせいでいまいち怒られている実感がないのか、クロは尻尾を振りながら俺の頭にすりすりと甘えるように頬ずりしてきた。
「……あと、グーロを追い払ってくれてありがとう。でも絶対次からはこんな無理をしちゃだめだからな」
もちろん誰も被害なく追い払ってくれたクロに感謝はしている。
でもいつも必ずしも上手くいくとは限らない。だから顔を上げてしっかりと目を見ながら釘を刺す。
クロは「わふっ」と吠えたが、尻尾は相変わらず嬉しそうに揺れているので反省はしていないのかもしれない。
そんなクロに呆れつつも、その可愛さに自然と笑みが零れた。
「もー、本当に分かってんのかよ」
「わふっ」
そんな風に戯れていると、
「おい、ソウシ! もっとその犬ちゃんと躾けとけ! 危ないだろうが」
俺達の傍まで来たアーロンがガミガミと注意し始めた。
普段ならうるさいと顔を顰めてスルーするところだが、今回は違った。
これまで闘争心を剥き出しにして唸っていたグーロが、明らかに怯えた表情で震え始めた。尻尾なんか下がりすぎて股の間に隠れきっている。
グーロはクロを見据えたままゆっくりと慎重に後ずさり、そのまま急いで背を向けて森の方へと逃げて行った。
思いも寄らないグーロの行動に俺達はしばらく呆然と立ち尽くした。
あれだけ臨戦態勢をとっていたグーロが突然大人しく撤退したのだ、無理もない。
「わふっ!」
呆然としている俺に向かって、クロが振り返って吠えた。
ぱたぱたと尻尾を振るその姿は人懐っこい犬のようで、とてもグーロをひと吠えで撤退させた張本人とは思えない。
その可愛いらしいクロの様子に俺はようやく体から緊張が抜け、その場にへなへなとしゃがみ込んだ。
「よ、よかった……!」
「クロちゃん、すごいね~。あんな能力もあったんだ~。アーロン~! グーロは本当にもういない~?」
チェルノが大きな声で下にいるアーロンに確認する。
「ああ、俺が見える範囲ではいない」
森の方に目を凝らしながらアーロンが答えた。
「じゃあとりあえず城壁の外に出てみよう~。門番さん案内お願いね~」
「は、はいっ。こちらです」
驚きのあまり茫然となっていた門番だったが、チェルノの言葉にようやく自分の職務を思い出したように門の外まで案内してくれた。
「クロ!」
城壁を出てから俺はいても立ってもいられず、すぐさまクロの元に駆け寄った。
そしてその大きな体を思いっきり抱き締めた。
「……ッ、びっくりしただろ! あんな危ないことしたらだめだからなっ」
「わふっ」
叱っているのに安堵と涙が滲んだ声のせいでいまいち怒られている実感がないのか、クロは尻尾を振りながら俺の頭にすりすりと甘えるように頬ずりしてきた。
「……あと、グーロを追い払ってくれてありがとう。でも絶対次からはこんな無理をしちゃだめだからな」
もちろん誰も被害なく追い払ってくれたクロに感謝はしている。
でもいつも必ずしも上手くいくとは限らない。だから顔を上げてしっかりと目を見ながら釘を刺す。
クロは「わふっ」と吠えたが、尻尾は相変わらず嬉しそうに揺れているので反省はしていないのかもしれない。
そんなクロに呆れつつも、その可愛さに自然と笑みが零れた。
「もー、本当に分かってんのかよ」
「わふっ」
そんな風に戯れていると、
「おい、ソウシ! もっとその犬ちゃんと躾けとけ! 危ないだろうが」
俺達の傍まで来たアーロンがガミガミと注意し始めた。
普段ならうるさいと顔を顰めてスルーするところだが、今回は違った。
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