勇者様の荷物持ち〜こんなモテ期、望んでない!〜

綺沙きさき(きさきさき)

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第3章 異世界で溺愛剣士の婚約者!?

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「あははっ、ソウちゃんったら面白いこと言うんだね~。あんな雑魚が白銀の翼のメンバーのはずないじゃない~」
「雑魚……!」

 あの恐ろしいジェラルドが雑魚呼ばわりされている事実に驚いて目を剥く。

「え、で、でも、なんかフォスター家ってなんかすごい家なんだろ?」
「確かにフォスター家は魔力が強くて有名だけど、ジェラルドは魔力が弱くてあの家じゃ落ちこぼれなの。……いや、落ちこぼれだった、って言ったほうが正しいかもね」

 アーシャは意味深に唇の端で微笑んだ。
 どういう意味かと問おうとした時、部屋にノックの音が響いいた。
 アーシャが返事をすると、ドアから城の使用人が入ってきた。 

「アーシャ様。白銀の翼の幹部方より伝令です。これより勇者様御一行の帰還式が始まります。謁見の間へ、のことです」
「了解、ありがとう。すぐ行くわ」

 アーシャが答えると使用人は一礼してすぐ部屋から出て行った。

「あ~! 久しぶりにちぇるるんの正装姿が見れる~!」

 感極まった様子でアーシャが言った。

「正装って、チェルノもその白い服を着るのか?」
「そりゃあそうよ、白銀の翼のメンバーだもの」

 当然のように言うが、いつもの黒ずくめの姿が見慣れているため、どうしても真っ白な制服に身を包んでいるところが想像できない。
 というか、あの性格と虚な瞳に爽やかな白が似合うとは到底思えない。相反する存在と言っても過言ではないだろう。
 もちろんチェルノ過激派のアーシャを目の前にしてそんなことは口が裂けても言えないが……。

「はぁ~、ホワイトちぇるるん楽しみ~……あ!」

 うっとりと嘆息を吐いていたアーシャが何か重大なことでも思い出したかのように突然大きな声を上げて、俺の方を見た。

「あー、忘れてた! 私、ちぇるるんからソウちゃんのお守り頼まれてたんだった!」
「お守りって……」

 俺をいくつだと思ってるんだ。

「どうしよう~! ホワイトちぇるるんは見たいけど、ちぇるるんとの約束破るわけにいかないし……」

 まるで究極の二択を選ぶかのような難しい顔で腕を組み、うーんと考え込むアーシャ。
 チェルノの正装が見たいという欲望と、チェルノとの約束を守り通そうとする使命感がせめぎ合っているのが目に見て取れる。

「えっと、それなら俺ここに居残るけど……」

 俺のせいでいらぬ葛藤をさせているのが申し訳ないというのもあったが、このことが原因でアーシャの恨みを買いたくないというのが一番だった。
 善意二割、保身八割で提案した俺の言葉に、アーシャは首を横に振った。

「それじゃあ私がソウちゃんを放ったらかして帰還式に出たと思われちゃう。そうなったらちぇるるんからの信頼を失っちゃうわ。夫婦間で一番大事なものは愛と信頼だから、それは絶対あってはならないの」

 毅然と、そしてどこか誇らしげな表情で仲良し夫婦の秘訣のようなものを口にするアーシャとチェルノにも婚姻関係はないはずだが、もちろんそこはスルーだ。

 それにしてもドゥーガルドやクロもそうだが、この世界では相手の同意なく脳内で結婚することが流行っているのだろうか?
 脳内で妄想することを決して否定するわけじゃないが、それを頭の外に垂れ流し、さも当然の事実、この世の真実かのように語るのはやめてほしい。
 チェルノが俺に対して比較的優しい理由が少し分かった気がする。同族嫌悪ならぬ同族憐憫だ。

「ソウシのことなら案ずることはない。番たる私が傍にいるのだからな」
「おい、口の周りミルクだらけだぞ」

 ふん、と得意げに鼻を鳴らすクロを抱き上げて、服の裾で口の周りを拭いてやる。

「あー! もうどうしよう~! 帰還式始まっちゃうよ~」

 ついには頭を抱え始めたアーシャに、行きたいなら行けばいいのに……と心の中で溜め息を吐く。

「じゃあ俺も帰還式に一緒に行くっていうのはだめなのか?」
「関係者以外はたぶん入れな……あ!」

 何か閃いたのか、今までの難しい表情を散らしてアーシャが声を上げた。
 そして俺の方を見てにっこりと笑った。

「いいこと思いついちゃった」

 最高にいい案を思いついたとばかりの自信に満ち溢れた声に、嫌な予感が背中にぞわりと鳥肌を立たせた。
 アーシャがチェルノに関することで常識的な発案をするとは到底思えないからだ。
 そして嫌な予感は的中した。
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