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第3章 異世界で溺愛剣士の婚約者!?
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「皆の者、静粛に」
玉座の壇上近くに立つ初老の男の厳かな声が響き渡った。
男はこの場にいる人全てが自分の方へ視線を向けているのを確認してから再び口を開いた。
「これより、国王エゼルバルド様が謁見の間へ来られる。一同。敬礼」
男の言葉に、その場にいる全員が握った右の拳を胸元にあて、姿勢を正した。
恐らくこれがこの世界の敬礼なのだろう。俺も慌ててそのポーズを真似る。
全員が敬礼をしているのを確認してから、男は扉に立つ衛兵に目で合図を送った。
その合図を受け衛兵たちがゆっくりと厳かな雰囲気を醸し出しながら扉を開けると、扉の向こうからいかにも王様といった高貴な雰囲気を纏った四、五十代の男が現れた。両隣には、体格の良い騎士を連れ立っている。
うわぁ、すげぇ! 本物の王様だ!
王様なんてアニメや漫画の二次元でしか見たことがないので思わず興奮した。
これで俺の立ち位置が『異世界より召喚された最強の勇者』とかだったら最高だったのになぁ……。
しかし現実は、最強の勇者どころか、この世界の知識すらないので一般人にも劣る非力な存在だ。
現実は甘くないとはよくいうが、いくら何でもこれは甘くなさすぎじゃないか? 唐辛子の方がまだ甘く感じそうなくらいだ。
理想と現実の落差にちょっと泣きそうになる俺のセンチメンタルな心情などお構いなく、いつの間にか王様は赤い絨毯の上を進み玉座に腰を下ろしていた。
玉座の両隣には、どんな刺客が現れようと命をはってお守りするという強い気概が感じられる騎士が立って、壇上から俺たちを睨みつけていた。
「皆の者、よく集まってくれた。楽にせよ」
謁見の間をゆったりと見回しながら王様がそう言うと、みんな拳を胸元から下ろした。しかしピンと伸びた背筋にはまだ緊張が張り詰めている。
これは女装して白銀の翼に紛れていることがバレたら一巻の終りだ。神聖な王の御前で何事か! と処刑待ったなしの展開になるに違いない。
考えただけでゾッとする。俺は鳥肌が立つ背筋をピンと正した。
この場を取り仕切る初老の男が咳払いしてから、口を開いた。
「では、これより魔王討伐より戻ってきた勇者たちの帰還式を行う。勇者たち、入られよ」
男の言葉に扉がまた開かれ、そこからアーロン、ドゥーガルド、チェルノ、ジェラルドの四人が横に並んで入ってきた。
「あれが、魔王を倒した勇者たち……!」
畏敬と興奮が混じったざわめきが辺りに広がる。
実際は変人変態オンパレード集団なのだが、こうして見ると立派なパーティーに見えるのだから本当に不思議だ。
「はぁ~、ホワイトちぇるるん可愛い……」
隣で頬を染めてうっりと溜め息を吐くアーシャの言葉に、チェルノが白い正装に身を包んでいることに気づく。
いつもが黒ずくめのせいもあるけれど、チェルノの闇をたたえた瞳と不気味な笑みに、爽やかな白は驚くほど違和感しかなかった。視覚の不協和音ともいえるくらいだ。それを可愛いと感じるアーシャの感性が恐ろしい……。
もちろんチェルノ過激派のアーシャの前でそんな素直すぎる感想は口にできないので、言葉を飲み込んで正装姿のチェルノから視線を外した。
するとその拍子に、辺りを見回していたアーロンとばっちり目が合ってしまった。
玉座の壇上近くに立つ初老の男の厳かな声が響き渡った。
男はこの場にいる人全てが自分の方へ視線を向けているのを確認してから再び口を開いた。
「これより、国王エゼルバルド様が謁見の間へ来られる。一同。敬礼」
男の言葉に、その場にいる全員が握った右の拳を胸元にあて、姿勢を正した。
恐らくこれがこの世界の敬礼なのだろう。俺も慌ててそのポーズを真似る。
全員が敬礼をしているのを確認してから、男は扉に立つ衛兵に目で合図を送った。
その合図を受け衛兵たちがゆっくりと厳かな雰囲気を醸し出しながら扉を開けると、扉の向こうからいかにも王様といった高貴な雰囲気を纏った四、五十代の男が現れた。両隣には、体格の良い騎士を連れ立っている。
うわぁ、すげぇ! 本物の王様だ!
王様なんてアニメや漫画の二次元でしか見たことがないので思わず興奮した。
これで俺の立ち位置が『異世界より召喚された最強の勇者』とかだったら最高だったのになぁ……。
しかし現実は、最強の勇者どころか、この世界の知識すらないので一般人にも劣る非力な存在だ。
現実は甘くないとはよくいうが、いくら何でもこれは甘くなさすぎじゃないか? 唐辛子の方がまだ甘く感じそうなくらいだ。
理想と現実の落差にちょっと泣きそうになる俺のセンチメンタルな心情などお構いなく、いつの間にか王様は赤い絨毯の上を進み玉座に腰を下ろしていた。
玉座の両隣には、どんな刺客が現れようと命をはってお守りするという強い気概が感じられる騎士が立って、壇上から俺たちを睨みつけていた。
「皆の者、よく集まってくれた。楽にせよ」
謁見の間をゆったりと見回しながら王様がそう言うと、みんな拳を胸元から下ろした。しかしピンと伸びた背筋にはまだ緊張が張り詰めている。
これは女装して白銀の翼に紛れていることがバレたら一巻の終りだ。神聖な王の御前で何事か! と処刑待ったなしの展開になるに違いない。
考えただけでゾッとする。俺は鳥肌が立つ背筋をピンと正した。
この場を取り仕切る初老の男が咳払いしてから、口を開いた。
「では、これより魔王討伐より戻ってきた勇者たちの帰還式を行う。勇者たち、入られよ」
男の言葉に扉がまた開かれ、そこからアーロン、ドゥーガルド、チェルノ、ジェラルドの四人が横に並んで入ってきた。
「あれが、魔王を倒した勇者たち……!」
畏敬と興奮が混じったざわめきが辺りに広がる。
実際は変人変態オンパレード集団なのだが、こうして見ると立派なパーティーに見えるのだから本当に不思議だ。
「はぁ~、ホワイトちぇるるん可愛い……」
隣で頬を染めてうっりと溜め息を吐くアーシャの言葉に、チェルノが白い正装に身を包んでいることに気づく。
いつもが黒ずくめのせいもあるけれど、チェルノの闇をたたえた瞳と不気味な笑みに、爽やかな白は驚くほど違和感しかなかった。視覚の不協和音ともいえるくらいだ。それを可愛いと感じるアーシャの感性が恐ろしい……。
もちろんチェルノ過激派のアーシャの前でそんな素直すぎる感想は口にできないので、言葉を飲み込んで正装姿のチェルノから視線を外した。
するとその拍子に、辺りを見回していたアーロンとばっちり目が合ってしまった。
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