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第3章 異世界で溺愛剣士の婚約者!?
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もし、突き当たりまで進んでも真っ赤な花の絵がなければ一度道を戻ろう。
そう決めて再び歩き出す。
それにしても、邪神、もとい慶介があそこまで危険で厄介な存在とは思いもしていなかった。
これは一刻も早く元の世界に戻る方法をチェルノに見つけてもらってこの世界から逃げ出さなければ……!
もうこれ以上の厄介事は勘弁だ。
というか普通、異世界ものってラッキーハッピー美少女ハーレムな現実逃避が売りなはずなのに、欠片もその要素が見当たらない。
一体どういう事だ。責任者に説明と謝罪を求めたいところだが、いつだって自分の人生の責任者は自分で、人は自分自身を強く責めることはできない生き物だ。
ということで責任者を責めるわけにもいかず、理不尽な運命を恨むしかないのだが、実在すら怪しいものを恨むというのは何とも手応えがなく余計にストレスがたまるものだ。
結局、自分の不運と悲運を嘆くことしかできない。それもまたストレスだ。
このストレスに比べれば、元の世界での悩み──女子にモテないとか、友達がいないとか、勉強が嫌だとか、そろそろ受験先考えないとなぁとか、そんなことは可愛いものだ。
そんなことで悩んでいた自分がいっそ羨ましいくらいだ。この世界でのストレスに比べれば。
あー、早く帰りたい。女子にもモテず友達もいないスクールカースト最底辺の日々も、男共にケツを狙われる異世界ライフに比べれば、輝いて見えるから本当に不思議だ。
元の世界に帰った後の慶介の動向が気にならないわけではないが、まぁ、あの守銭奴は金を貰えばどんなことでも有言実行する男だ、きっと邪神も倒すことができるだろう。
信頼というものからかけ離れた男だが、金が絡んだ約束事に関しては信用できる男だ。
だが、まずは元の世界よりも今はとりあえず応接間に戻らなければならない。
そしてこの忌々しいスカートを脱がないと……!
気持ち速足で進んで、並ぶ絵画を睨むように見ていく。
するとようやく、真っ赤な花の絵を見つけることができた。
「やっと、見つかった……!」
俺はホッと肩で息を吐いた。
「……それにしてもこの絵、下手だな」
じっと絵を見て俺は思わず呟いた。
金の額縁に入れられ高価な芸術品のように飾られているが、俺が素人なせいもあるが、どう見ても子供の落書きにしか見えなかった。
だが絵の左端に『エグバード』とサインらしきものが書かれている──召喚の際にこの世界の言語力が与えられたのか不思議と文字は読める──ので、ちゃんと画家が描いた作品のようだ。
それにしても芸術というものはわからない。
かろうじて花の形は保っているが激しい絵のタッチと毒々しい赤色は、なんだか少し禍々しく不吉な予兆を感じさせるものがある。
「……って。いやいや! これ以上不吉なことがあってたまるか!」
俺は不吉な予感を振り払うように頭をブルブルと横に振って、絵の向かいにある角を右に曲がった。
「えっと、確か左側の三番目の部屋、だったよな……」
自信のない記憶を辿りながら等間隔に並ぶドアを一、二、三、と心の中で数えていると、不意に背後から腕が伸びてきて口を塞がれた。
「……っ!」
驚いて声を上げようとしたが、あっという間に近くの部屋に連れ込まれてしまった。
その部屋は、クロが待っている応接間と同じ造りの部屋だったが、もちろんそこにクロはいない。
な、ななな、なんなんだこいつ……!?
ドクドクと鼓動が強く胸を打つ。
もしかして俺を女と間違えて襲ってきた変態か? もしくは王に対して不満を持つ革命軍的な人間とか?
いや、まさか王のいる城内でそんな不埒なことをする不届き者はいないだろうし、革命軍的な人間なら魔法においてエリートと言われている白銀の翼の制服を着た人間にわざわざ自分から近づきはしないだろう。
そうなると背後の男の正体や行動の意味がますます分からない。
まさかこのまま絞め殺されたりしないよな……。
不穏なイメージにゾッと鳥肌が立った。
だが、俺の最悪な予想に反して、口を覆っていた手はすんなりと離れた。俺は反射的にバッと後ろを振り返った。
するとそこにはよく見知った――だがだからこそ安心できない人物がいた。
そう決めて再び歩き出す。
それにしても、邪神、もとい慶介があそこまで危険で厄介な存在とは思いもしていなかった。
これは一刻も早く元の世界に戻る方法をチェルノに見つけてもらってこの世界から逃げ出さなければ……!
もうこれ以上の厄介事は勘弁だ。
というか普通、異世界ものってラッキーハッピー美少女ハーレムな現実逃避が売りなはずなのに、欠片もその要素が見当たらない。
一体どういう事だ。責任者に説明と謝罪を求めたいところだが、いつだって自分の人生の責任者は自分で、人は自分自身を強く責めることはできない生き物だ。
ということで責任者を責めるわけにもいかず、理不尽な運命を恨むしかないのだが、実在すら怪しいものを恨むというのは何とも手応えがなく余計にストレスがたまるものだ。
結局、自分の不運と悲運を嘆くことしかできない。それもまたストレスだ。
このストレスに比べれば、元の世界での悩み──女子にモテないとか、友達がいないとか、勉強が嫌だとか、そろそろ受験先考えないとなぁとか、そんなことは可愛いものだ。
そんなことで悩んでいた自分がいっそ羨ましいくらいだ。この世界でのストレスに比べれば。
あー、早く帰りたい。女子にもモテず友達もいないスクールカースト最底辺の日々も、男共にケツを狙われる異世界ライフに比べれば、輝いて見えるから本当に不思議だ。
元の世界に帰った後の慶介の動向が気にならないわけではないが、まぁ、あの守銭奴は金を貰えばどんなことでも有言実行する男だ、きっと邪神も倒すことができるだろう。
信頼というものからかけ離れた男だが、金が絡んだ約束事に関しては信用できる男だ。
だが、まずは元の世界よりも今はとりあえず応接間に戻らなければならない。
そしてこの忌々しいスカートを脱がないと……!
気持ち速足で進んで、並ぶ絵画を睨むように見ていく。
するとようやく、真っ赤な花の絵を見つけることができた。
「やっと、見つかった……!」
俺はホッと肩で息を吐いた。
「……それにしてもこの絵、下手だな」
じっと絵を見て俺は思わず呟いた。
金の額縁に入れられ高価な芸術品のように飾られているが、俺が素人なせいもあるが、どう見ても子供の落書きにしか見えなかった。
だが絵の左端に『エグバード』とサインらしきものが書かれている──召喚の際にこの世界の言語力が与えられたのか不思議と文字は読める──ので、ちゃんと画家が描いた作品のようだ。
それにしても芸術というものはわからない。
かろうじて花の形は保っているが激しい絵のタッチと毒々しい赤色は、なんだか少し禍々しく不吉な予兆を感じさせるものがある。
「……って。いやいや! これ以上不吉なことがあってたまるか!」
俺は不吉な予感を振り払うように頭をブルブルと横に振って、絵の向かいにある角を右に曲がった。
「えっと、確か左側の三番目の部屋、だったよな……」
自信のない記憶を辿りながら等間隔に並ぶドアを一、二、三、と心の中で数えていると、不意に背後から腕が伸びてきて口を塞がれた。
「……っ!」
驚いて声を上げようとしたが、あっという間に近くの部屋に連れ込まれてしまった。
その部屋は、クロが待っている応接間と同じ造りの部屋だったが、もちろんそこにクロはいない。
な、ななな、なんなんだこいつ……!?
ドクドクと鼓動が強く胸を打つ。
もしかして俺を女と間違えて襲ってきた変態か? もしくは王に対して不満を持つ革命軍的な人間とか?
いや、まさか王のいる城内でそんな不埒なことをする不届き者はいないだろうし、革命軍的な人間なら魔法においてエリートと言われている白銀の翼の制服を着た人間にわざわざ自分から近づきはしないだろう。
そうなると背後の男の正体や行動の意味がますます分からない。
まさかこのまま絞め殺されたりしないよな……。
不穏なイメージにゾッと鳥肌が立った。
だが、俺の最悪な予想に反して、口を覆っていた手はすんなりと離れた。俺は反射的にバッと後ろを振り返った。
するとそこにはよく見知った――だがだからこそ安心できない人物がいた。
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