愛のない結婚を後悔しても遅い 離縁を望まれたスパダリ令嬢、溺愛の限りを尽くしたら孤独な公爵令息に懐かれすぎています

空橋彩

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王家の秘密

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「やはり狙いは王家だったか。」

黒い女を刺激しないよう武器を下ろし、シリルたちの元まで下がる。女も私が離れたのを確認すると首元に突きつけたナイフを下ろした。

「王家の色と同じ人物ばかり狙えば、必ず王家が動いてくると思ったのじゃ。思っていたよりも早かったのお」

「アーサーは私を狙っていると言ったが、私をおびきだす必要なんて無いからな。私を引っ張り出したければ単純に辺境に戦いを挑めばいい話だ」

「お姉様、アコカンテラの第一皇女のスズラン・トウセイ・アコカンテラですわ。今までこちらに手を出してきたことはないはずですが....」

スイが私に小さな声で教えてくれた。アーサーはスイの手を力強く握ったまま青い顔をしている。スズランの声かけに答えるでもなく、ただじっと足元を見ている。

「辺境でこんな争いを起こして、どうするつもりだ。第一皇女様」

アーサーが動かないので私が代わりにスズランに問うと、「うむ」と怪しげに笑ってこちらを指さした。

「その者たちが密入国しようとしたので、止めたのじゃ。何か問題でもあったかの?そして、シーラ・ブライトン、
お主が密入国を手助けしようとしたとして王家に苦情を入れても良いのだぞ?」

「屁理屈だな。三人が隠れていた馬車が帝国の物だということは調べればわかるし、御者の男が帝国に三人を連れていくと発言していたのを聞いていた者がいる。それにこの部屋はまだ、ブライトン領だ。三人は出国していない」

スズランの細く弧を描いていた目がわずかに開かれる。

「だが、その者たちがこちらに来たいと望んだのは事実じゃ。ここは、お互い何もなかったことにして不問といたそうではないか。のぉ、ヒュー」

問いかけられたアーサーは、ゆっくりと視線を上げてスズランを見た。

「....シーラ、俺がスズランと話してくる。スイを、頼む」

アーサーがゆっくりとスズランの方へ歩き出した。私はすれ違いざまにアーサーの肩を掴む。

「アーサー、わかってると思うがこの部屋から出てはダメだぞ」

そう告げると小さく頷き、再びスズランのほうへと歩いて行った。
そう、この部屋は上位貴族や皇族、王族が取引に使う
特別手形を持った者が通れる特別な部屋だ。
国境を跨いで作られた特別な部屋。

帝国側と王国側から取引業者が直接顔を合わせてやり取りをする事で、細かな検閲を免れることができる。
もちろん、この部屋に入る前に検閲をしているのだが、悪意を持って隠されると見逃してしまう事がある。

オトギリが入国して来た時も、何人かの女の子たちがあちらの国へ行った時も、おそらく一番特別な皇族手形が使われたのだろう。
父上は、その危険性を考えて特別手形の廃止を王家に対して訴えているところだった。

「わかってる。シーラ、三人を保護して、この部屋の外に連れて行ってくれ。いいよな?アコカンテラ」

「よいよい。その女子おなごらには用はないからの、妾はお主と話がしたかったのじゃ」

スズランが機嫌良さそうに笑う。そして、邪魔なものを追い払うかのように、しっしっと手を振った。

「銀軍の副司令官、シーラ・ブライトンの名において、何ものの出国も許可しない。たとえ、石ころの一つでもだ。もし何か一つでも持ち出せば、どんな手を使ってでも取り返すぞ。異論は認めない」

そう言ってスズランを睨みつけると、ほんの少し後ずさりしながら笑った。

「恐ろしい殺気じゃ、帝国に欲しいのぉ。ほほほ、安心せい、もう何もしない」

「アーサー、すぐ戻る」

私は、三人を急いでブライトン領側の扉まで連れていくブライトン兵に三人を託しまたアーサーの元に戻るとすでに話しは終わっているようで、スズラン達は馬車に乗り帰る準備をしていた。

「もう二度とこの国の者を連れ去らないと約束をした」

「今まであちらに行った者たちは?」

「....レイラと呼ばれている子に聞いたが。皆、こちらの国には戻りたくないそうだ。その家族たちは正式なルートで出国しているから連れ戻せない。父上に報告して対処する」

「スズランの目的は、なんだったんだ」

「俺に会いたかったと」

「会った事があるのか?」

悪いことをして叱られた子供のような寂しそうな顔をして、アーサーは片手でくしゃっと自分の前髪を掴んだ。

「ある。昔にな」

何故か目の前のアーサーが幼い頃のアーサーと重なって見えた。あの、盗賊から救い出した時のように、怯えて震えているような気がした。

「助けが必要か?」

「大丈夫だ。ありがとう」

「わかった。だが、助けが必要ならいつでも言うといい。私はお前を見捨てない、どんな時も助けになるから」

「ああ、大丈夫だ。シーラがいれば百人力だな」

そう言って笑うアーサーの顔が何故か私の脳裏に焼きついて消えない。
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