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呪いのろわれる 第七話
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「リリー、辛い思いをさせてすまなかった、これで最後だ」
「本当にありがとう。私、お姉様のこと大好きですわ!」
見慣れた部屋で3人手を重ね会い、見つめ合う。ギィと古い木の扉が音を立てて開くとシルビアが大きな水入りの桶を持って入ってきた。桶の上で手をかざすと、青く光り氷の音がガランと響いた。
そのまま、手を突っ込んで何度か混ぜると手を拭く事もせず、また、人差し指を切り付けた。
そんなシルビアをみて、クレイは手を離し、リリーの後ろへと移動する。
「僕の聖女、今日ほど君に感謝をする日は…無いだろう。ありがとう」
そうして、両手を広げてリリーを包み込む。
魔物から庇われた日以来の抱擁に儀式前だというのに心臓が跳ね上がる。
「お姉様、後でたくさん、お話ししましょうね」
そうして、最後の儀式が始まった。
薄く、みみず腫れのような後のあるアクアの腕に赤いひび割れた両手を重ね、シルビアの血を押し付ける。
「繋がりは終わり、呪いは始まる。」
いつもと違う呪文を、唇から発音するシルビアに驚きつい顔を見る。
「呪いの主人はかわり、今より冥界の色の虜となる。」
「シルビア…さま?」
【ラース】
呪詛が終わるとリリーの腕は青白く光、今までの痛みよりも強い痛みを感じる。痛みで意識を失いそうになったリリーの顔面をガシャンと、痛いほどの冷たさと氷の衝撃が襲う。
「汚い平民が、王族の前で眠るなんて信じられないわ。不敬罪で斬首される前に起こしてあげるわ」
もう一度冷え切った氷水を力一杯顔にかけられる。口の中は血の味でいっぱいになった。
痛みで頭が朦朧としているリリーには何が起こっているのか理解ができなかった。
「ああ、リリーありがとう。」
後ろに立っていたクレイが、いつもと変わらない様子で駆け寄る。あぁ何か、幻覚だったのか?と思い、ヨロヨロと立ちあがろうと机に手をかけると思い切り机を蹴飛ばされ、支えをなくしたリリーの赤くひび割れた手は空をきり、そのまま石畳の床に体を打ちつける。
「気が付かないでいてくれてありがとう。お前のおかげで愛するアクアを救う事ができた。」
「汚い!血もついてるし、泥もついたじゃないシル!洗ってこの女」
そうするともう一度水が頭からかけられ、そのまま髪を掴まれ顔を上げられる。
目の前には醜く歪んだ、美しかったはずの顔があった。
「僕の聖女、これで君の役割は終わりだよ。ありがとう」
「れ…い…さま?」
「なんだい、愚かな偽聖女さん」
「ねぇ、やっと触れられるんですもの、そんなもの触ってないで私を抱きしめて、クレイ」
アクアは隠していた短刀でクレイが鷲掴みにしていたリリーの髪を切る。重力に勝てずにべちゃりと床に落ちるリリーを誰も支えてはくれなかった。
目の前で、先程まで私を愛していると言っていたはずの美少年と、大好きだと言っていたはずの美少女がお互い熱く見つめ合い、口付けする。
「レイ…様?なんで、私…」
「僕の名前を呼ばないでくれないか?僕は一度も君を愛してると言ったことは無いよね?勝手に君が勘違いをしていただけさ。」
なぁ?とクレイは隣のアクアに愛しそうに話しかける。
「勘違いですって。さすがは、呪いを吸い取る偽聖女様。他人の気持ちまで勝手に吸い取っちゃうのねぇ」
やっと働き始めた頭で必死に2人の会話をさぐる。
「呪いを…吸い取る偽聖女?」
「そうよ。貴方は聖女なんかじゃないのよただのスポンジ。私の呪いをうつして染み込ませるためだけのね。」
耳元でアクアが囁く。顔を見ると心の底から嬉しそうに笑っていた。
記憶の中の優しく穏やかな2人はもういない。
目の前には悪魔のような顔をした、美しい狂気がたっていた。
「本当にありがとう。私、お姉様のこと大好きですわ!」
見慣れた部屋で3人手を重ね会い、見つめ合う。ギィと古い木の扉が音を立てて開くとシルビアが大きな水入りの桶を持って入ってきた。桶の上で手をかざすと、青く光り氷の音がガランと響いた。
そのまま、手を突っ込んで何度か混ぜると手を拭く事もせず、また、人差し指を切り付けた。
そんなシルビアをみて、クレイは手を離し、リリーの後ろへと移動する。
「僕の聖女、今日ほど君に感謝をする日は…無いだろう。ありがとう」
そうして、両手を広げてリリーを包み込む。
魔物から庇われた日以来の抱擁に儀式前だというのに心臓が跳ね上がる。
「お姉様、後でたくさん、お話ししましょうね」
そうして、最後の儀式が始まった。
薄く、みみず腫れのような後のあるアクアの腕に赤いひび割れた両手を重ね、シルビアの血を押し付ける。
「繋がりは終わり、呪いは始まる。」
いつもと違う呪文を、唇から発音するシルビアに驚きつい顔を見る。
「呪いの主人はかわり、今より冥界の色の虜となる。」
「シルビア…さま?」
【ラース】
呪詛が終わるとリリーの腕は青白く光、今までの痛みよりも強い痛みを感じる。痛みで意識を失いそうになったリリーの顔面をガシャンと、痛いほどの冷たさと氷の衝撃が襲う。
「汚い平民が、王族の前で眠るなんて信じられないわ。不敬罪で斬首される前に起こしてあげるわ」
もう一度冷え切った氷水を力一杯顔にかけられる。口の中は血の味でいっぱいになった。
痛みで頭が朦朧としているリリーには何が起こっているのか理解ができなかった。
「ああ、リリーありがとう。」
後ろに立っていたクレイが、いつもと変わらない様子で駆け寄る。あぁ何か、幻覚だったのか?と思い、ヨロヨロと立ちあがろうと机に手をかけると思い切り机を蹴飛ばされ、支えをなくしたリリーの赤くひび割れた手は空をきり、そのまま石畳の床に体を打ちつける。
「気が付かないでいてくれてありがとう。お前のおかげで愛するアクアを救う事ができた。」
「汚い!血もついてるし、泥もついたじゃないシル!洗ってこの女」
そうするともう一度水が頭からかけられ、そのまま髪を掴まれ顔を上げられる。
目の前には醜く歪んだ、美しかったはずの顔があった。
「僕の聖女、これで君の役割は終わりだよ。ありがとう」
「れ…い…さま?」
「なんだい、愚かな偽聖女さん」
「ねぇ、やっと触れられるんですもの、そんなもの触ってないで私を抱きしめて、クレイ」
アクアは隠していた短刀でクレイが鷲掴みにしていたリリーの髪を切る。重力に勝てずにべちゃりと床に落ちるリリーを誰も支えてはくれなかった。
目の前で、先程まで私を愛していると言っていたはずの美少年と、大好きだと言っていたはずの美少女がお互い熱く見つめ合い、口付けする。
「レイ…様?なんで、私…」
「僕の名前を呼ばないでくれないか?僕は一度も君を愛してると言ったことは無いよね?勝手に君が勘違いをしていただけさ。」
なぁ?とクレイは隣のアクアに愛しそうに話しかける。
「勘違いですって。さすがは、呪いを吸い取る偽聖女様。他人の気持ちまで勝手に吸い取っちゃうのねぇ」
やっと働き始めた頭で必死に2人の会話をさぐる。
「呪いを…吸い取る偽聖女?」
「そうよ。貴方は聖女なんかじゃないのよただのスポンジ。私の呪いをうつして染み込ませるためだけのね。」
耳元でアクアが囁く。顔を見ると心の底から嬉しそうに笑っていた。
記憶の中の優しく穏やかな2人はもういない。
目の前には悪魔のような顔をした、美しい狂気がたっていた。
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