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間違い探しをしているようなsideモアラート王国 第二十九話

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「クレイ様、国民達から嘆願書と、えーとこれはメイド達からの署名が届いております。」

婚約者のアクアの呪いが解けて2ヶ月が経った。これから二人で国を収めるため、勉強していこうとした矢先。
国民や王宮で働くメイド達から書状が届くようになった。初めは“何をわがままな”と思う程度であった。

例えば、

・王宮以外にも果物を納品したい
・焼きたてのパンの販売を許可してほしい
・息子を返してほしい

そんなものだった。
最近では、見目のいい若い男達を皆王宮に集めているため、王都で若い働き手が足りないとか、税の取り立てが厳しいとかそういった嘆願が届くようになった。

王が視察に出ているこの3ヶ月、自分は王の代理として立派にやっている。
王宮に使えるもの達のために果物や朝一番の焼きたてのパンは王宮に納品させた。
騎士団の募集も、モアラート王国に相応しい見目のいい若者を集めて訓練を行なっている。
アクアの助言を受けて、国のため、働く者のために尽力しているつもりだった。

2通目のメイドからの署名に目を通すと、あろうことか、『王太子妃候補様におきましては、メイドとして働いている貴族達の婚約者との接触を控えてほしい』と書いてあった。

はぁ、とため息が出る。

「アクアを呼んでくれ」

側近にそう命じると、夜会もないのに綺麗に着飾ったアクアが半刻ほどして現れた。

「クレイの為に急いで美しくしてきたのよ!どうかしら、新しいドレス似合うかしら」

「あぁ、美しいアクアにはどれも似合うな。」

一昨日も新作のドレスを着ていなかったか?
王太子妃用の予算には町の慈善事業の予算も入っているはずだが、最近そちらの管理のものからも予算がきついとやんわり相談が入っているが、まさか…

「とても高価そうだね。」

「予算をいかにうまくやりくりするか、考えながら買っていますので大丈夫ですわよ!これを買う事でドレスを作る労働者を育て、お金を回す、それも慈善事業ですわよ」

と言われると、そうか、アクアは賢いなと答えるしかない。

「アクアは、騎士達と仲がいいんだな。その…メイド達がよくヤキモチを妬いているぞ」

何といっていいのかわからず、すこし周りくどい言い方をしてしまう。

「この国を守ってくれる騎士達を労うのは国母として当たり前ですわ。何故か、みなさん私を慕ってくださるの。婚約者がいらっしゃる方もいるので、気をつけてるけどダメね。」

あからさまにしょんぼりとしながら、涙目でアクアは答える。

「美しく優しい女性と触れ合えば、胸がときめいてしまうのも仕方がないな。だが、あまり騎士団の慰問に訪れすぎるとその…そういった勘違いをされてしまうから控えてほしい」

「まぁ!クレイ!!騎士は一番の功労者!危険に飛び込むもの達を蔑ろにしろと?!」

「違うんだ、ただ、婚約者たちがその…」

「わかりましたわ。私が婚約者の皆様にも話をしてみます。私は国母としてしか接しておりませんので」

「あぁ、そうだな、君から説明してもらえれば彼女達も納得するだろう」

アクアは綺麗に微笑みカーテシーをして、退室して行った。





騎士の訓練所に到着したアクアはジロリと舐め回すような視線を巡らせる。

「お集まりになって」

一声発すると、訓練中の騎士達が怯えた表情を見せつつ、アクアの前にひざまづく。

「そこの、新人のあなた。それと一番後ろのあなた。あとは…そうね、団長と副団長。」

そう言うとくるっと踵を返してへ入っていく。

指名された新人は涙を流しながら、団長に手を引かれ、アクアの跡を追う。残りの騎士達はまた、訓練所に戻り訓練を続行する。どこか、ホッとしたような顔をしている。

小屋からは時々女の嬉声が漏れ聞こえてきた。


一刻が過ぎると、満足そうなアクアはそのまま、自室に戻って行った。


それから一週間、クレイは城の中の異変に気がつくことになる。

「テッド、メイドの姿がないようだが?」

あまりに異様な光景に、側近に問いただしてみると、意外な答えが返ってきた。

「クレイ様、メイドはちょうど契約期間が来たので皆、家に帰ったと聞きましたよ。私情に駆られる女では効率が悪いとの理由でフットマンやボーイを雇うことになったと、アクア様から引き継がれております」

そう、城の中で働くもの達の半数以上が男になったのだ、掃除や洗濯などはメイドがしているものの、今までメイド達がしていたような食事の配膳や王宮内の環境整備、着替えや身支度を整えることなど…身近な事は皆男達が行なっていた。

呪いが解けてからというもの、アクアはどんどん変わっていく。あの、呪いを押し付けて追放した少女は、『何もしていない』と痛いほどに叫んでいた。
更には、ずっとそばにいた隣国から招いていた魔導士も、頼りにいていた黒騎士も姿を消してしまった。

もしかして、自分がした事は間違っていたのではないかと、クレイの心は少しずつ痛みを増していく。
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