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しおりを挟む「これは……」
「桔梗の花だ。宮代の庭で見つけたんだ。これを見つけてそなたに会いたいと思ったところで、丁度知らせが来たのだ」
義村は桔梗の手にそっと紫の花を乗せた。
桔梗はまじまじとその花を眺める。
「会国に桔梗の花は咲かないからな。久しぶりに目にしただろう? 」
「はい。ありがとうございます。この花を見ると、あなた様と初めて会ったあの日のことを今も思い出すのです」
「あの日、俺が言った事を覚えているか? 」
「……え? 」
「桔梗の花言葉は、変わらぬ愛だと。桔梗、俺のそなたへの気持ちはずっと変わっていない。愛している。生涯ずっとだ」
桔梗は泣き崩れた。
途中咳き込みそうになるところを、義村が背中をさすり宥める。
「俺の気持ちはわかってくれたか? わかったならもう命を粗末にするような真似はするな。これは俺の命令だ」
「義村様……申し訳ありません」
「わかれば良いのだ。今日からそなたの横で共に寝ることにしよう」
義村は桔梗にそっと口付けた。
「愛しています、義村様……」
泣き疲れたのか、そのまま気絶するように眠ってしまった桔梗を抱き締めたまま、義村は朝まで過ごした。
それからと言うもの、桔梗の具合は日に日に良くなっていった。
もちろんかなり衰弱してしまっていたため、すぐに元のようにとはならなかったが、それでも日中起きていられる時間は格段に増えた。
そして食事も規則正しく三食摂れるようになったのだ。
義村は付きっきりで桔梗の看病にあたり、庭を散歩するにもどこに行くにも一緒だ。
「私にばかり良くしていただいて、お仕事は大丈夫なのですか? 」
「案ずるな。今はそなたに寄り添うべきだと、家臣達も言ってくれている」
中川家の家臣達は、桔梗の体調が回復傾向にある事を何よりも喜んだ。
しばらく義村が桔梗とゆっくり過ごすことのできるよう、領内での政務は家臣達が代わりに行ってくれている。
宮代塚元は桔梗の噂を耳にし少なからず罪悪感を覚えたらしく、しばらく義村に休暇を与える事にしたらしい。
会国で桔梗姫と呼ばれるほど領民からの支持を得ている彼女を追い込んだとなれば、宮代の評判も悪くなると言うことがよくわかっているのだろう。
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