【R-18】初恋相手の義兄を忘れるために他の人と結婚しようとしたら、なぜか襲われてしまいました

桜百合

文字の大きさ
2 / 12

他の誰かが羨ましい

「……結婚……ええ、もちろんです。精一杯彼女のことを幸せにいたします。力を合わせて、アルメリア侯爵家をより一層盛り立てて行く所存です」

 それから二年の月日が経ち。
 私は偶然父の執務室の前を通りかかった際に、わずかに開いた扉の隙間からこんなやりとりを耳にした。

 ——アンソニーお義兄様が、結婚……。

 出会ったときは九つだった彼も、もう二十二である。
 貴族の跡取りとして、妻を迎えるべき年頃になったのだ。
 予想できていたはずの事実を受け止めることができず、私はふらつくような足取りで自室へと戻った。

 デビュタントを終えた私の元へもたくさんの縁談が持ち込まれていたが、私はその全てを断っていた。

 理由はたった一つ。
 私の中でアンソニーを超える男性がいなかったから。
 彼の想いは私に向いてはおらず叶わぬ恋だとわかっているはずなのに、いつまでたっても私の中からアンソニーが消えてくれないのだ。

 父はそんな私の想いを察してか無理を強いることはなかったが、このままではダメだということは私にもわかっていた。

 ——お義兄様と結婚する方が羨ましい。

 彼の唇を奪い、体を奪い、その心までも奪い去ることのできる相手は一体どこの誰なのだろうか。
 誰よりも長く彼に対して恋心を抱き続けてきたというのに、その想いが報われることは永遠にない。
 その事実がただただ辛くて、私は自室に引きこもるようになった。

「アリア? 最近部屋から出てこないようだけど、体調でも悪いのかい?」

 突然部屋から出てこなくなった私を、アンソニーは心配した。
 毎日のように私の部屋のドアを叩いては様子を確認する。
 だが私はその問いかけに応えるつもりはなかった。
 彼の声を聞いてドアを開けてしまったら、また自分が辛い思いをするだけなのだから。
 
 そして私は一つの決断を下したのである。
 もう彼のことを諦めて、他の誰かの元へ嫁ごうと。



「アリアがなかなか部屋から出てこないから、悪いが無理やりドアを開けさせてもらったよ」

 私はアンソニーの結婚がまとまる前に、この家を出て行く決心をした。
 その決意を伝えるとお父様は戸惑われていたけれど、たくさん来ていた縁組の中から私に合った方を早急に選ぶと約束してくれた。

 あとは可能な限りアンソニーと顔を合わせる機会を避けるだけ……。
 直接顔を見てその声を聞いてしまったら、せっかくの決意が揺らいでしまうから。
 そう思っていたというのに。

 今なぜか私の部屋にいるアンソニーを目にして言葉を失う。

「どうやって……部屋には鍵をかけていたはずです」
「義父上に合鍵をもらったんだ。今日からしばらく地方の視察に行くらしく、屋敷の留守を預かっている」
「ああ、そういうことですの……」

 侯爵である父の部屋には、この屋敷中の合鍵が保管されており、その鍵を厳重に管理しておくのも父の役目であった。

 その合鍵をアンソニーに手渡すということは、彼がもうすぐ次期侯爵として台頭していくという表れなのかもしれない。
 つまり結婚も近いのだろう。
感想 1

あなたにおすすめの小説

もう無理して私に笑いかけなくてもいいですよ?

冬馬亮
恋愛
公爵令嬢のエリーゼは、遅れて出席した夜会で、婚約者のオズワルドがエリーゼへの不満を口にするのを偶然耳にする。 オズワルドを愛していたエリーゼはひどくショックを受けるが、悩んだ末に婚約解消を決意する。 だが、喜んで受け入れると思っていたオズワルドが、なぜか婚約解消を拒否。関係の再構築を提案する。 その後、プレゼント攻撃や突撃訪問の日々が始まるが、オズワルドは別の令嬢をそばに置くようになり・・・ 「彼女は友人の妹で、なんとも思ってない。オレが好きなのはエリーゼだ」 「私みたいな女に無理して笑いかけるのも限界だって夜会で愚痴をこぼしてたじゃないですか。よかったですね、これでもう、無理して私に笑いかけなくてよくなりましたよ」

愛する殿下の為に身を引いたのに…なぜかヤンデレ化した殿下に囚われてしまいました

Karamimi
恋愛
公爵令嬢のレティシアは、愛する婚約者で王太子のリアムとの結婚を約1年後に控え、毎日幸せな生活を送っていた。 そんな幸せ絶頂の中、両親が馬車の事故で命を落としてしまう。大好きな両親を失い、悲しみに暮れるレティシアを心配したリアムによって、王宮で生活する事になる。 相変わらず自分を大切にしてくれるリアムによって、少しずつ元気を取り戻していくレティシア。そんな中、たまたま王宮で貴族たちが話をしているのを聞いてしまう。その内容と言うのが、そもそもリアムはレティシアの父からの結婚の申し出を断る事が出来ず、仕方なくレティシアと婚約したという事。 トンプソン公爵がいなくなった今、本来婚約する予定だったガルシア侯爵家の、ミランダとの婚約を考えていると言う事。でも心優しいリアムは、その事をレティシアに言い出せずに悩んでいると言う、レティシアにとって衝撃的な内容だった。 あまりのショックに、フラフラと歩くレティシアの目に飛び込んできたのは、楽しそうにお茶をする、リアムとミランダの姿だった。ミランダの髪を優しく撫でるリアムを見た瞬間、先ほど貴族が話していた事が本当だったと理解する。 ずっと自分を支えてくれたリアム。大好きなリアムの為、身を引く事を決意。それと同時に、国を出る準備を始めるレティシア。 そして1ヶ月後、大好きなリアムの為、自ら王宮を後にしたレティシアだったが… 追記:ヒーローが物凄く気持ち悪いです。 今更ですが、閲覧の際はご注意ください。

ヤンデレにデレてみた

果桃しろくろ
恋愛
母が、ヤンデレな義父と再婚した。 もれなく、ヤンデレな義弟がついてきた。

お腹の子と一緒に逃げたところ、結局お腹の子の父親に捕まりました。

下菊みこと
恋愛
逃げたけど逃げ切れなかったお話。 またはチャラ男だと思ってたらヤンデレだったお話。 あるいは今度こそ幸せ家族になるお話。 ご都合主義の多分ハッピーエンド? 小説家になろう様でも投稿しています。

隣人の幼馴染にご飯を作るのは今日で終わり

鳥花風星
恋愛
高校二年生のひよりは、隣の家に住む幼馴染の高校三年生の蒼に片思いをしていた。蒼の両親が海外出張でいないため、ひよりは蒼のために毎日ご飯を作りに来ている。 でも、蒼とひよりにはもう一人、みさ姉という大学生の幼馴染がいた。蒼が好きなのはみさ姉だと思い、身を引くためにひよりはもうご飯を作りにこないと伝えるが……。

今夜は帰さない~憧れの騎士団長と濃厚な一夜を

澤谷弥(さわたに わたる)
恋愛
ラウニは騎士団で働く事務官である。 そんな彼女が仕事で第五騎士団団長であるオリベルの執務室を訪ねると、彼の姿はなかった。 だが隣の部屋からは、彼が苦しそうに呻いている声が聞こえてきた。 そんな彼を助けようと隣室へと続く扉を開けたラウニが目にしたのは――。

【完結】妻の日記を読んでしまった結果

たちばな立花
恋愛
政略結婚で美しい妻を貰って一年。二人の距離は縮まらない。 そんなとき、アレクトは妻の日記を読んでしまう。

冗談のつもりでいたら本気だったらしい

下菊みこと
恋愛
やばいタイプのヤンデレに捕まってしまったお話。 めちゃくちゃご都合主義のSS。 小説家になろう様でも投稿しています。