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1章
第1話
しおりを挟む夏を先取りするかのような鋭い日差しがゴールデンウィークの終わりを告げ、世の学生たちは暦の習わしに従い各々が属する学び舎へ登校している。しかし休み明け、しかも大型連休の直後だというのだから、道行く学生たちの足取りは重く、倦怠感が見て取れる。
五月病という病の存在は、いかにゴールデンウィークが人をダメにするかを物語っている。厳密に言うと五月病は、ゴールデンウィークにはっちゃけたから学校に行きたくなくなる病気ではなく、新しい環境における生活疲労のピークと、連休が重なり、張り詰めていた糸が切れてしまうことが原因で起こる精神病の俗称ではあるので、「人をダメにする」という表現は誠に不適切だとは思うが、いずれにせよゴールデンウィークが終わった直後に気分を昂ぶらせている人は多くはいないはずなので、そういった意味で学校に行きたくないという気持ちを五月病と表現するのは間違いではないようにも思える。もっとも、病気の名にまでして5月に責任を負わせるのは酷だとは思うが。
斯く言う僕も、本来の意味の五月病からはかけ離れてはいるものの、あと365日ほど登校義務解除日が続いてくれないか、という妄想はしてみたりもする。ただし、これは学校に行きたくない訳でもなければ、勉強したくない訳でもない。学生ならば誰しも一度は考える通過儀礼的なものであり、僕はそれに則っているだけなので、友人には冗談交じりで愚痴を零しはしても、校長先生や教育委員会に本気で嘆願するつもりはこれっぽっちもない。
目の前を往来する人々を見ながら、そんな他愛もないことを考えていると、後方から僕の名を呼ぶ声が聞こえた。
「慶!」
聞き慣れた声のする方へ振り返ると、そこには龍司がいた。
お互いの姿を認識すると、僕は通行人の邪魔にならない場所で立ち止まり、龍司は駆け足でこちらまで寄ってくる。
黒髪ショートヘアはワックスで華やかに固められており、嫉妬する気すら起きない整った顔立ち。背丈は僕より少し大きい175cm、のはずなのだが、運動部特有のガッチリした身体と、ピンと伸びた背筋によって描かれるシルエットから180cmはあるのではないかと錯覚してしまう。
今まで見てきたどの人物よりも容姿端麗、眉目秀麗という言葉が似合う彼の名は杉本 龍司(すぎもと りゅうじ)。中学2年からの知り合いであり、中学高校と同じ学校に通う僕の友人である。
「おはよう。」
辺りを埋め尽くす喧騒によって僕の声がかき消されないと確信できる距離まで彼が近づいて来るのを待って、挨拶を交わす。
「おう、おはよう!」
こうして僕たちの一日が始まる。
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