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第三話 愉快でハイカラな神様
愉快でハイカラな神様 弐
しおりを挟むガラリ。
本殿から扉が開いた音がした。
「お帰り、八雲君。おや、誰か居るのかい」
音のした方を見ると、浮世離れした好事家の顔がひょっこりと出てきた。
香果さんだ。
彼はこの雨月神社の神主さんである。
また、妖怪だらけのこの町で生活をしていて、私も彼には大変お世話になっている。命の恩人の様な人だ。
そして、町の妖怪たちには異常なまでに慕われている。
しかし、彼と接していると理由が何となくだが解ってきた。
全てのものに優しくて、繊細で、雅で、おまけに光源氏も嫉妬するであろうと思われるほどの美人。それが香果さんだ。
町の人に慕われない訳が無い。
その彼が出てきた処がこの神社の本殿である。
本殿は拝殿よりは小さいものの、神様が居る場所で、神社の中でも最も神聖な場所。
普通は拝殿の奥にあって、なかに御神体が祭られている。
この神社も同じで、拝殿の奥に本殿がある。
また、驚くべきことに、この神社が建てられた平安時代の文献やら道具やらも多く残っているらしい。
私は、それを聞いた時には、この神社が平安時代からあることに驚きを隠せなかった。
勿論、その時代の彫刻や装飾が残っているのにも、感動したのだが。
本殿に祭られている御神体と云うのはは、あまり人の目に触れて良いものではないらしい。
多くの神社では御神体は決して見えないように、と本殿の前の扉が閉まっているそうだ。
雨月神社も例外では無く、本殿の中が見えてしまわない様にと、堅く、重い、頑丈なな扉で閉まっている。
その為、香果さんは本殿の横に、簡易的な入り口から出入りをしている。
香果さんが出入りをするときに、偶然でもなかが見えてしまわない様に、と言う配慮らしい。
またこの神社にも拝殿と本殿を繋ぐ幣殿もある。
その為、現世の神社と見た目はあまり変わらない。
違うのは神主さんの本殿へのお勤めが少し多いくらいだろうか。
とは言え私が知っているのは、香果さんから聞いたことだけである。実際に自分で行って、見たり触れたりしたわけではない。
なぜなら本殿は拝殿の奥にあり「あまり良い場所ではない」と私が行くのを勧められていないからだ。
神聖な場所だから、生きた人間には霊力が強すぎるのかもしれない。
また、現世の神社と同じ様に、神に仕える者だけが入るのを許されていると云う事もあるだろう。
そんなことを思っていると、本殿の横の簡単な扉から神主が出てきた。
香果さんは、腕の中で眠っている黒猫を優しく撫でながら、聖母の様な笑みを私達に向けた。
それを見たハイカラ男性は、花が一斉に咲いた様にパッと表情を明るくした。
「おお、久しぶりだな。カオリ、フジカ」
男性は先程よりも高く、嬉しそうな声色を張り上げる。
そして神主である香果さんと、化け猫である藤華さんの名前を叫んだ。
いきなり声を掛けられたことに少し驚いた素振りを見せつつも、香果さんは男性の方を向く。
彼は男性が視界に入ると、目を少し広げ、直ぐに喜びに満ちた目をした。
香果さんは本殿から急いで、私達の居る拝殿に駆け寄った。
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